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de&iマガジン〜ダイバーシティ関連記事〜

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ダイバーシティ・コンテンツ・リサーチャー草冠結太のマガジンです。ダイバーシティ&インクルージョンを感じられるイベントやコンテンツに関する記事をまとめます。あとヒップホップも。
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#lGBTQ

「グラデーションキャンパスin関東」は、いいイベントだった。ずっと会ってないアイツを思い出すほどに。

※本稿はLGBTQ+総合ポータル「ナナイロ」に掲載されたコラムの再掲です。 オシャレな人が、怖い。 向き合うと、見下されている気がしてくる。 というか、されてきた。 これまで鼻で笑われてきた肺活量を集めたら、気球の一つも浮かべられる。 気球はそういう仕組みじゃない。うん。わかってる。たとえばの話。 だから同じ理由で、横浜も苦手だ。 オシャレな街並み、オシャレな人。行くたびに突きつけられる。自分はこの街のドレスコードを満たしてないし、その素質さえないことを。ケッ。 それで

キッズも楽しい!LGBTQ+イベント「グラデーションキャンパスin関東」に娘と行ってきた

小一の娘が、スキャンダルを報じてきた。 「この前ね、Tくんがね、学校でね、男の子にいきなり口にちゅーされたんだって」 ほほう。そりゃまた随分とトキメいちゃう公立小があったもんだ。笑いながら聞いている私に、彼女はこう続けた。 「男の子にだよ?」 おかしいでしょ?と、同意を求めてくるような表情だった。あ、そっちでしたか。 公教育の現場でちゅー。同意なしでちゅー。段階を踏まず本丸にぶちゅー。 ケシカランことのあるところに、ドラマあり。ラブストーリーはたいてい、いつも突然だ。

手記の朗読と歌で、HIVの今を知る。「Living Togetherのど自慢」に行った

(本稿はプライバシーに配慮し、会場の様子は撮影せず、個人に関する記載は公式サイトの情報に留めています) 入口のドアを開けるなり、私は左手をポケットに隠すのをやめた。 そこが安心していられる空間だと、すぐにわかったからだった。 薬指に指輪をはめた自分は、その場にふさわしくないのでは。そう怯えていたのだが、ホッとした。 私が訪れていたのは東京・新宿2丁目のスナック九州男。新宿に長く通っていれば、一度は耳にする老舗だ。 そこで「Living Togetherのど自慢」というイベ

43歳、初めてハイヒールを履いて知ったこと。その半年後。

聴くと心がもう一度、ファイティングポーズをとれる。 きっと誰にも、そんな歌がある。 私にとって、RHYMESTERというラップグループのMy Runway feat. Reiはその一つだ。 この曲を聴いて思い出すのは、今年1月のこと。その日、私は生まれて初めてハイヒールを履いた。 きっかけは「DRAG QUEEN x パフォーマンス朗毒劇 QUEEN's HOUSE」という、ドラァグクイーンの舞台。”毒”は誤字ではない。 その劇場で「wiDth last」というシューズブ

紙ヒコーキおじさんのいる公園に

朝っぱらから、妻が暗い映画を観ていた。 子どもと夫をともに失った女。女の生活を支える、秘密を抱えた男。 テレビ画面が、二人の幸せな日常を静謐に、そして儚く映していた。 「こんだけ男前やと、軽トラ乗っても男前やな」 妻が暴言で俳優を褒める。車種と運転手の顔だちに関係を見出す人に、初めて出会った。彼女との鑑賞はいつも新鮮だ。 そうは言ってもこの映画は、起きぬけには重すぎる。 私は迫真の演技にいたたまれなくなり、近所の公園へ散歩にでかけることにした。 春には桜の名所として賑わう公

映画「エゴイスト」を観て、かつての家族を思い出した

ある日、私の母親がボーイフレンドを連れて帰ってきました。 そのボーイフレンドは、トランスジェンダー男性でした。R君と言いました。 その日から、私たちは家族になりした。 彼とは、私が大学生になってから就職して、一人暮らしをするまで、一つ屋根の下で暮らしました。草冠家の祖父母ともども。 私、弟、母親、FtMのR君、じいさん、ばあさん。 多様性とやらに屋根をのせたような家。 ま、うまくいかないですわな。 なので、映画「エゴイスト」の終盤は、観ていて気が気じゃなかった。 「浩輔

恋愛という鍵でしか、幸せの扉は開かない。わけがない。〜映画「そばかす」感想記〜

初夢は見ましたか? 私は「恋の夢」でした。しかも一晩で豪華二本立て。 学生時代にフラれた人への恋。 そして、社会人になってから浮気された人との恋。 どちらも、明けましてフラれました。 悪夢のような出来事を、わざわざ悪夢で再現するという、笑ってないと泣けてくる型の初笑いで目覚めたのですが。 これほどまでに恋愛を意識した(というかウナされた)夢を観てしまったのは、年末に観たとある作品がとんでもなく面白かった影響です。間違いない。 そのとんでもなく面白かった作品とは 「そばか

LGBTQセンター「プライドハウス東京レガシー」探訪記〜情報の量と質、ホスピタリティがスゴかった!〜

「見つけた!」 とある施設のSNSを見た瞬間、思わず声をあげました。ウォーリーを探せたテンション。 その施設とは『プライドハウス東京レガシー』。LGBTQ+にまつわる情報発信をはじめ、多岐にわたる活動を展開しているところです。 LGBTQ+について、ちゃんとしたことを知りたい時。理解を深めたい時。ネットや書籍ではなく、誰かに質問したくなることがあります。 そんな私にとって(会社の人事部とかにもそういう方いるかも)、プライドハウス東京レガシーはまさに虹色に輝いて見えました。

90歳の館長と9人のドラァグクイーンのドキュメント映画「十人十色の物語」が、寝不足してでも観る価値ある名作だった。

駅前の女子高生たちが、バッと一斉に私を見ました。 さながら、チーターを察知したガゼルの群れ。 「キャー!ミミズク、めちゃかわー!」 と、私が叫んでしまったから。 そりゃ見ますよね。 だって、ヒゲのオッサンが野太い声を、甲高く響かせてるんですから。 「きゃーみみずくめちゃかわー。だって」 「キャハハハハッ!」 誰かがマネをして、ドッと笑いが起きていました。 たまたま、ペット用の小さなフクロウを肩にのせて散歩してる人がいて。 私が思わずハシャいでしまったのがいけなかった。

約1,000人の大行進!東京トランスマーチ2022が「想像以上」の連続だった

2022年11月12日(土)。東京都新宿区で「東京トランスマーチ2022」が開催されました。 11月20日の「トランスジェンダー追悼の日」に先駆け、トランスジェンダー認知週間に開催されたこのイベント。 一部報道によれば、当事者を含めた約1,000人がマーチに参加したとのこと。 会場に、路上に、まさに多様な人々が大集合して、メッセージを発信しました。その様子をレポートします。 賑わうブース、熱いスピーチ。多様性を体現した会場はグッドバイブス会場となったのは、東京都新宿区の新宿

家族にトランス当事者がいた私が悶絶した映画「片袖の魚」〜マイクロアグレッションは本当に”マイクロ”か問題〜【ネタバレ注意】

『居心地が悪くなる映画』というものがあります。 もちろん、いい意味で。 自分が今いる場所を疑うきっかけになってくれる。そんな映画。 シアターフォーオールで配信されている「片袖の魚」という映画が、まさにそれでした。 悪意なき人々が意図せずに、だからこそ日常的にとってしまう差別的言動。 そんな、"マイノリティへの小さな攻撃”がテーマの一つです。 監督いわく 「日本で初めて、トランスジェンダー当事者を一般公募でオーディションして作られた映画」。 とのこと。 読後感は、ソワソワ

レインボープライドに行って、肩車できるうちはしたほうがいいって思った話。

「やっぱりレインボーパレードっつーくらいだから、雨はつきものなんじゃないの?」 「あんな。雨のあとに晴れんと出ないんで、レインボーはよ。それと、パレードやなくて、レインボー”プライド”やで」 「ほんとに俺が楽しみにしてると、確実に雨が降るよね」 「あんたの雨男っぷりは、ほんと迷惑やで。パレードの人ら風邪ひいたらアンタのせいやで」 2022年4月24日。東京・渋谷?代々木?で行われた東京レインボープライドに行ってみたんです。家族で。娘と、出不精の妻も珍しく一緒に。 日曜日に。雨

元・結婚情報誌編集者も思わず泣いた。二人の新郎を寿ぐ披露宴ムービー〜たった5分で多幸感100%の物語〜

映画祭で、披露宴ムービーを、流すの? 何かの間違いだと思いました。もし本当だったら世も末だと。 しかし、映画祭のフライヤーには、確かに書いてありました。 「結婚式披露宴ムービー(5分)」と。 その映画祭とは、札幌LGBTQ映画祭2022。2022年9月に開催していました。 私はかつて結婚情報誌の編集者兼ライターをやっていました。 なのでこのテの結婚式やら披露宴やらの動画は、ひと様よりいくぶん多く観ている自負があります。 ちょっとやそっとじゃ、心が動くこともありません。 寂