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【ボカコレ2023春】はじめてのボカコレ

はじめに

皆様はじめましての方ははじめまして。
お久しぶりの方はお久しぶりでございます。
日々呼吸してご飯を食べて、罪悪感と一つまみの希望と共に曲を作っております、
Kusakacci(クサカっち)でございます。

4月1日はエイプリルフールだったわけですが、皆さまにおかれましては、何かしら面白いかつ人を傷つけない嘘はつかれましたでしょうか。
かく言う僕は嘘みたいな身体の激痛に襲われて寝たきりの状態を過ごしておりました

文字通り「古傷が痛む」状態だったわけですが、これって本当にあるんだなぁと痛みにリソースを割かれた脳で考えてたりしてました。いい経験だわ(なるはやで治療します)

記事を書くのはKusakacci流Hands Upの作り方講座-三種の神器篇-以来でしょうか。こっちはこっちで僕のガチ分野であるHands Up(ハンズアップ)と呼ばれるジャンルの作り方について書いてありますので、興味がある方は何卒。

あと色々と話題になってたMisskeyを始めてました。
https://misskey.io/@Kusakacci
(と言ってもこのリンク貼る為に久方ぶりにログインしたぐらいの程度ですが)
こっちは多分気が向いたら運用する程度の頻度にはなるかもしれないし、
告知とは別に制作時の思い出的な何かをポロッと言ったりするかもしれないので、まあふと思い出した時にでもチェックしてみてください。

閑話休題、私Kusakacci、今回『ボカコレ2023春 ルーキー』で楽曲を投稿致しました。変拍子ロックでございます。

S.T.F./可不 meets Kusakacci

ステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックの略ではないです。アスクヒム!

※ボカコレとは
・正式名称は『The VOCALOID Collection』。
その名の通り、ボーカロイド文化から生まれたクリエイター、ユーザー、果ては企業までもが参加する『ボカロ文化の祭典』のこと。期間中は楽曲の発表だけでなく、クリエイターの対談やDJなど様々なコンテンツが繰り広げられる。
楽曲に使用していい合成音声ソフトウェアは全て(CeVIO, Synthsizer V等もOK)

※※ルーキーとは
ボカコレには『TOP100』と『ルーキー』に分けられており、
ボカロPとしてデビュー2年以内ならルーキー、
それ以上経過しているならTOP100とクラス分けがされている。
(勿論2年以内のデビューでもTOP100として投稿は可能。)

本記事ではこの曲を作るに至った経緯とか、この曲にこめたテーマとか諸々伝えていければよいかなと思っております。
長い文章になるかとは思いますが、最後まで読んでいただけますと幸いです。

参加の経緯

ある日、高校来の友人であり合成音声ソフトを用いて作品を公開していた弓絃(ゆづる)くんから、
「制作途中の楽曲を聴いてくれ」とデモが送られてきました。
(以前ポワンドルグのその先ででストリングスアレンジをしてくれた方です)


楽曲を聴いてみると王道なロック系バンドサウンドな楽曲になっていて、
それまで知っていた、そして僕が想像していた彼の出す音とは良い意味で乖離していて、衝撃を受けました。
(送られてきた楽曲は『フェイカー』というタイトルで同じくボカコレで公開されております。興味のある方は是非ニコニコ動画内で検索をかけてみていただけますと幸いです)


その時制作の締め切りも特になく、割とオフな時期だったのに加え、
元々ロック系の楽曲を作ってみたかった、
というか作りたくなった時に作れるように一応プラグインだけ導入していた(その後ずっと楽曲では使っていなかった)為、
折角だし僕もそういうの作ってみようかなぁ」と思って、そのまま勢いで筆を執った次第でございます。
要はノリと勢いです。これマジ。

アレンジコンセプトは「違和感のない変拍子」

モチベそのままに勢いで筆を執ったは良いものの、
『そもそも僕Hands Upとかそっち寄りの制作しかしてないし、一般的なバンド編成(ギター・ベース・ドラム)でのロックは元々好きだけどどうしようかしら……』
と悩んでいた時に、
『取り敢えず歌のメロディを考えて、そこからアレンジを肉付けしていこう』と、思いついた歌用メロディ(トップライン)を記していきました。

その結果、
{(6+4+4)+(4+4+6)}/4拍子
とかいう字面だけで見ると中々奇怪な拍子のメロディが出来上がりました。

(厳密にはこんな表記ないんですけど、僕の頭の中でのメロディの割り方をそのまま記しています。)
楽曲の『トリミングして都合よく曲解~』の部分(サビ)です。

このメロディが出来た時に、
自分に「違和感のない変拍子」という概念を植え付けてくれたとあるバンドの事を思い出しました。
確か大学の先輩が教えてくれたそのバンドは、今はもう解散してしまったのですが、初めて音源を聴いた時の衝撃は忘れられません。

トップラインとアンサンブルが違和感なく4/4を逸脱しては回帰する。
呼吸をするかの如くそれが繰り返されて、
楽曲毎の、そしてバンド全体の世界観として成立している。

当時のKusakacci少年は『変拍子は1曲通してその拍子だし、そうじゃない曲で使う時は曲中のアクセントや違和感を覚えさせて場面転換に使うもの』という認識だったので、
このバンドとの出会いが、僕の人生の中で、変拍子に対する、言わば偏見のようなものが取っ払われた"一番はじめの出来事"だと思います。
余談ですが、奇跡的に1回だけ、ライブでの演奏を観れた事があって、それは今でも僕の中で大事な思い出となっております。

アレンジやトップラインについては、そのバンド(あるいは、その時そのバンドが所属していたレーベルの先輩バンド)を脳内でイメージしながら制作し、殆ど迷うことなく進めることが出来ました。
ギターを左、中央、右の3本にしたのは、どちらかと言えば先輩バンドの方の影響が強いです。
※ただし、ギター独特のコードや奏法等の打ちこみ方や音作りはのぞく。めっちゃ大変だった。

この楽曲のアレンジ部分を作るフローとしては、
①まずトップラインを4拍子に囚われずに自由に作る
②トップラインに違和感が生じないように(どこかでつっかかり等を感じないように、あるいは敢えてつっかかりを感じるように)アレンジを作る
③イントロは雰囲気を壊しすぎない程度に

といった順番で制作しました。

(8+7+6+5)/4拍子のベースソロから始まる間奏については、
左・中央・右ギター、ベース、ドラムそれぞれ違うリズムから始まり、
最後はギター+ベースのユニゾンと全パートのキメで終わります。

これは後述する歌詞の部分にも関わってくるのですが、
投げかけられた言葉がどこか心の中で引っかかって、つられて精神状態が混濁する様から、考えに考え抜いた末に『ある1つの結論』が導き出された様子を表現しております。

歌詞のテーマは「リスナー」「切り抜き」「杞憂マロ」

トップラインとアレンジの方向性が見えてきたところで、次は歌詞を作ろうとまた別の頭をひねっていたわけですが、
何か良いアイディアはないかな~とか口では言いながらも思考をせずにTwitterやYouTubeを流し見していたところ、
とある配信者の炎上記事が目に飛び込んできました。

詳細は伏せますが、事案が事案だったが為に、散見したリスナー(と思われる方々)の意見としては否定的なものが多かったのを覚えております。


僕は配信者の配信や切り抜き(配信から特に面白い部分をダイジェスト風に観れるもの)をよく見たりするのですが、
僕自身がその配信者の人となりや発言の意図を知った気になっていることが多いとふと思った訳です。

だからといって配信を全部観たり発信しているSNSやリリース・参加しているコンテンツ等を全部チェックしていたとして、それでその配信者の事を完全に理解できたかというと、
切り抜きではおさめてなかった、発言の本当の意図・前後の文脈の様な『起こった事象に対する理解』は出来るとは思いますが、結局他者であることには変わりはないので、
どう頑張ったとしても"その人を知った気"を抜け出すことは不可能なのです。

そしてこのような知った気を抜け出すことは不可能とのたまった僕自身も、とどのつまり『ウラもオモテも全部知りたがるリスナー』の1人であるということに気づいてしまったのです。


また(語弊があるかもしれませんが)配信者特有の文化(?)として杞憂マロと呼ばれるものがあったりします。

※杞憂マロとは
当人からしたら押しつけがましいようないちリスナーの心配事を、
匿名でメッセージを送れるサービス等を使って
直接目の届くところに送る行為、あるいはそのメッセージ自体を指す言葉
として認識しています。(要出典)

表舞台に立つ配信者と、それを客席から観る一般の方々の距離感が近くなりすぎたが故に生まれたものだなぁと個人的には思っています。

僕は昔、演者としてお客様のご意見をもらった経験があります。
公演単発でご意見を貰った場合は、そのご意見を次の公演に活かす為にPDCAのサイクルを一生懸命ぶん回したりしますが、
押しつけがましいような杞憂・凶器のような言葉が一定量/不定期に来る
(場合によってはそれが検閲を通さず直接届く)といった時の、
心の持ちようの難しさといったら、それこそ一般人には計り知れないものがあります。

してること自体は、昔現場で見たアイドルの握手会でその道のプロでもないのに要らんアドバイスする批評家気取りオタクと大して変わってないとも思いますが、
杞憂マロの場合それがインターネット上で可視化され、否が応でも目に入ったりする場合もあります。(自衛の手段を徹底しても)

その人を知った気になったリスナーが、本当に知った気になったまま、それが直接本人の目に届く事のリスクを考えることなく、"杞憂"を直接投げてしまう。
たとえそれが"意見"のつもりでも、そしてそれが意見か杞憂かは受け取った側の解釈次第である事も考慮せずに。


1つ1つの杞憂自体は微々たるものかもしれませんが、それが積み重なっていった場合、
最悪その活動者は二度と表舞台に姿を現さなくなる可能性だってあります。
薬と思って投与した杞憂が裏返って毒になり、あろうことか救いたかった存在を死に至らしめることもあるのです。


そしてこれが救う為の善意によるもの、元来は意見として送るものであったとするなれば、それを送ったリスナーにもある程度非は無いとは思いますが(100%非が無いと言っている訳ではないです)、
一部にはシンプルに悪意で杞憂を装った暴言だったりを吐く人もいるわけです。
あくまで僕個人の主観によるものですが、
これは決して憶測で語っているわけではなく、前述の散見したリスナー(と思われる方々)のコメントにもそれらは見られました。
これは杞憂・暴言にとどまった話ではなく、普段の応援するつもりで放ったコメント等ですらも、その配信者を苦しめる凶器足りうる可能性を秘めています。
敢えて強めの言葉を使うとするならば、現代で最も身近なプロバビリティの殺人と言い換えることも出来るかもしれません。



歌詞の話に戻りますが、こうした思考をした経緯もあって、
リスナー(僕自身を含む)』
切り抜き
杞憂マロ
の3つを軸に作詞に取りかかりました。

作詞をする際に杞憂マロを配信のネタとして昇華している方の配信を見てみたりしたのですが、
その杞憂の濃度にあてられて体調不良に似た症状を引き起こして視聴を取りやめた事があります。

全く関係のないはずの第三者である僕がこうなったのですから、
これが送られた当人は一体どのような心情だったのでしょうか。
まあ僕はその当人ではないので、推測は出来ても確定は出来ませんし、表立って言うこともありませんけれども。


僕は作詞をする時に必ず、登場人物の設定やイメージをあらかた決めて、
全体のストーリーの流れを決めて、そこから歌詞の細やかな描写に移ります。
間奏の部分の説明の時に少しだけ触れてはいますが、
勿論今作も例に漏れずストーリーは存在します。

ルビとか言い回しに癖はあれども、出来るだけ歌詞だけをみてストーリー自体に察せられるようにしたつもりではございますが、
歌詞の最後を明確に表記していないことに加え、
歌詞の最後の部分が一意に定まってしまう、あるいは解釈の固定化がされてしまう可能性を含んでいるため、
今作『S.T.F.』については、これ以上の詳細なストーリーの明記を致しません。

あの人の本当の言葉は皆様方それぞれの解釈にゆだねます。

初めて映像を作ってみました

そしてボカコレに挑戦するにあたって、サウンド面だけじゃなく新しいことにも挑戦してみようということで、映像ソフトを使った映像制作にも挑戦してみました。

普段の映像はタイトル・作者名・オーディオスペクトラム(曲に合わせて動くグラフみたいなやつ)だけだったりするのですが、
今回は歌モノってこともあって歌詞を表示したり、映像素材の加工編集だったり、歌詞じゃない言葉を一瞬だけ表示したりと、
どことなく『それっぽい』ものを目指して、今ある知識とアイディアと技術をフル稼働して制作いたしました。

1つこだわったポイントを挙げるとするならば、間奏に表示される色々な言葉の数々です。
前述の通りテーマの1つに杞憂マロというものがあるので、
僕が想像で書いてみたイマジナリー杞憂マロが出てきます。
表示される時間としては5フレーム程度だった記憶があるので、気になった方は是非再生速度をゆっくりにして見てみてください。
正直イマジナリー杞憂マロを考える時間が一番苦痛でした。

勿論その中にはシンプルに応援するようなメッセージも表示されていたりするのですが、
一度ネガティブなものを見てしまうとそればっかりに注意が行きがちになったりするので、イマジナリー杞憂マロより表示時間を短くしてあります。

映像制作自体は初めてというのもあってとても楽しかったのと同時に、
脳内で思い描いたモノを映像としてアウトプット出来る映像クリエイターには本当にリスペクトを感じざるを得ませんでした。

あとがき

初参加のボカコレ、とても作業のカロリーが高く道中ヒーヒー言いながら楽曲の制作だったり映像の制作だったりをしておりましたが、今になれば初めての事ばっかりでとても楽しかったです。

この記事自体は制作当時残していたメモ書きを数多のアプリやらなにやらから掘り起こして作りました。
僕は思いついたことがあったら媒体(PC内の色々なアプリだったり、それこそ紙だったり)関係なくメモする癖があるうえ、あらかた言葉足らずなことが多いです。
そのせいでめちゃくちゃまとめるのが大変でした。

こっそり色々な作品を聴いていたりしたのですが、TOP100にもルーキーにも音楽・映像・イラストのクオリティがめちゃくちゃ高い作品があったりで色々と刺激を受けました。

次もし参加する機会があるとしたら、
その時表現したいものが変わらない限りはHands Upで出たいと思います。

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