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Kusakacci流Hands Upの作り方講座-三種の神器篇-

まえがき


皆さまこんにちはこんばんは。そしてお久しぶりです。
Kusakacci(クサカっち)です。

本日11月29日は私の誕生日でございます。
こうやってインターネット上に生を残していられるのもひとえに周りの友人やリスペクトしてる方々、そしてこの記事を読んでくれているあなたのおかげです。改めてではございますが、感謝いたします。

この記事を書く少し前に、CHUNITHM(チュウニズム)の公募に曲を投稿致しました。宍戸美鈴部門です。
ポワンドルグのそのさきで/式部めぐり meets Kusakacci & 弓絃

ありがたいことに記事執筆時点で4,800再生と、想定よりも遥か斜め上の再生数であり、驚きつつも感謝の気持ちでいっぱいです。
曲の感想とかいただけるとものすごく励みになりますので、会った時とかSNS上でもいいので是非ポロっと言ってください……!

さて本題。実は私、曲作りマンとしては「ポワンドルグ~」のような楽曲ではなく、Hands Up(ハンズアップ)と呼ばれるダンスミュージックを主に作っております。

Kusakacci - Love Spiral

(2年前にはHands Up Legacyっていう海外のレーベル? から曲も出してたりしてます。)

今回は折角キーボードを新調したのもあってめっちゃ文字打ちたくなったので、その身につけたノウハウ的なものからオススメのサンプルパック/プリセット等を紹介出来ればと思います。
「初めてDTMをする」って方から「他ジャンルは行けるけどHands Upを作ってみたい」って方まで是非是非その参考になればこれ幸いです。

Hands Upとは?

Ishkur's Guide によると、2000年代生まれのジャンルで、Euro Dance/Euro Tranceの血族。キャッチーなメロディーラインとドデカいかつシンプルなDrumsとBassが特徴のDance Musicでございます。
bpm(=テンポの単位)が138-150の辺りの曲が多いです。
あとめっちゃ表記ゆれが多いです。(Handz Up/Handzup!/Handz Up! など)
(ここでの解釈等は私個人のものですので、一概にこれが正しいといったものはございません)

要は"デケぇDrumsに派手な音、わかりやすいメロのDance Music"と覚えていただければ大体大丈夫です。
Hands Upを聴いたら"あ、これがHands Upか~"ってなるくらい「わかりやすい」です。
(音ゲーだとVibes 2k20/passionate fate/Trashとかが分かりやすいでしょうか)

参考までに自分が好きなHands Upを2曲。
Beat Bangerz - Doop Re-Washed (Crazy & Corza Remix Edit 2014)

NIVIRO - The Phantom

僕は鳴ってる音のシンプルさ、メロディーのキャッチーさ、そしてシンプルが故の奥深さに惹かれてHands Upの制作を始めた経緯があります。
(Doop Re-Washedを初めてクラブで聴いて、あまりにもメロが良すぎてその場で泣いたことがあります。)
多分曲の展開もクラブミュージックの中では明確な分類だと思うので、「クラブミュージック初めて聴くよ~」って方にはまずHands Upを紹介してます。

Drums篇

さてここからは肝心の楽曲上での制作について。
Drums/Bass/Leadsの三種の神器にそれぞれスポットを当てて解説致します。
※一部略称や専門的な用語が登場しますが、ここでは説明を割愛致します!

①Drumsのサンプル選びのコツ

Drumsの音選び(というかたいていの音選び)については、
"まず自分がその音を素の状態で聴いて好きかどうか"
これに尽きると思います。

Hands Upでよく使われるKickの音と言えば、
Trance系のKickサウンドに比べてよりアタックが強くて~
の様な定石(いわゆるジャンルにおける"ベタな音")みたいなのがありますが、
そもそもその音が好きじゃなければ制作のモチベーションにもならないですよね。だって制作中何回も聴くわけですし。

またこの選び方には確実な利点があって、
はじめから完成形をイメージできるようなサンプルを使うことによって、
音作りの為に過剰なエフェクトをかけたりといった、
進捗以外の労力を省くことが出来ます。

虎は何故強いと思う?元々強いからよ! ってことです。

アーティスト自身の個性という点において、自分しか出せないシグネチャーなサウンドは重要ですが、それに囚われて曲が完成しない(進捗が進まない)なんてことは多々あります。
それで悩んだり時間を取られたりするよりは、最初は自分が好きな音で作ってみて制作初動のテンションを上げる/ジャンルに対して自身の解像度を上げるのが一番精神的にも進捗的にもいいと思います。

ただし、本当に制作中に良い音色が出来上がった時(アイディアが浮かんできた時)はすぐにそちらの制作に移ってください
その浮かんできた音、もう一生出てこないかもしれないので……!
秒でお使いのSynthだったりDAWに保存してください!!!

②Loopの組み合わせ方

チキチキ鳴っとるやつ(Hat Loop)/ポコポコ鳴っとるやつ(perccussion loop)
この2つを組み合わせればいい感じになります。

Open Hihat(OH)がデカめがいい(個人差アリ)ので基本薄味でOKです。
Perc. Loopに関してはドッチー(Kick+OH)の間を埋める感じだとノリが出て良いです。(意外にうっすら鳴ってる音が楽曲に色を付けてくれたりするので)
慣れてる人だったらLoopをサンプラーに突っ込んで、自分でLoopを組んでみるのもアリかもしれません。

Hat LoopにはOHも含まれるものもあったりしますが、
Loop内OHのPitchだけ気を付けてください。微妙にズレてると気持ち悪いし、合いすぎてると聴覚上想定してた音量よりやたらデカくなる可能性があります。
(メーター的には出てないけど聴こえ方としてはめっちゃデカいとか)
自身の耳で調整するか、サンプラーに突っ込んでOHの部分だけ取り除きましょう。Drumsにも音程があります

また、こういったLoopにはイーブン系とハネ系があります。
判別するにはある程度トレーニングが必要(グリッドに対して音が出るタイミングを見る/聞き分ける)ですが、
これを怠るとノリの根幹を揺るがす(=シンプルにノレない,リズムがわかんねぇよ!)ことになっちゃうので意外に大事です。
メロディーとかがイーブン系かハネ系かで使い分けるようにしましょう。

③オススメサンプルパック

オススメSample PackはVengeance Essential Clubsound Vol.5

恐らく監修をDJ THT(めちゃくちゃ有名なHands Upのプロデューサー)が行ってる(Pack内にDJ THTがよく使ってる"あの音"が入っている)ので、
Hands Up作るならまずこれ持ってて得しかないです。
(デモソングの3:01~ぐらいがモロTHTっぽさが出てますね)

DJ THTの好きなHands Upです。「夢見るシャンソン人形」のHands Upカバー。
DJ THT feat. Angel Lyne - Poupée de Cire Poupée de Son


持ってたら是非使ってみてほしいのはVengeance Dance Explosionシリーズ
なんか有名アーティストを彷彿させる名前のフォルダに、
デモ曲の全てのパーツが置いてあります。
気に入ったDrumやLoopの音色を使ってみるもよし、パーツを全部並べてリファレンスにするもよし、使い勝手が良くて便利です。
(今絶版で入手不可……なはず。)

あとこれは勧められたパックなのですが、
Popmusic HIT KIT V3とかもオススメです。
メインどころとなるKickから一瞬聴こえるScratch Fillinまで、トラディショナルなHands Upを作るならマストなサウンドがいっぱい入ってます。

Bass篇

①良く使う音色と組み合わせ方

基本的なBassの構成としては、2つのBass音をレイヤーして作ったりします。
Ⅰ.Main(音程として聴こえるベース)
Ⅱ.Sub Bass(低域を補強するベース)
Mainの音色に関しては、意外にもシンプルなSaw(もしくはSquare)でOKです。(ここではPitchbassの作り方については省略します)

ベタ打ちよりかはMIDIノーツの後ろをちょっと短くするとノリが軽くなってHands Up特有のノリノリ感が出ます。是非試してみましょう。

あんま軽やかアッパー系じゃない時は意図的にベタ打ちにすることもありますので、曲の雰囲気次第で変わる場合もあることを念頭に置いておきましょう。

またMainのBassを普通に鳴らすと、
音色やプリセットによってはSubの音域まで出てるものもあります。
その状態でSubも含めて鳴らすと文字通り低音がとんでもないことになるので、一回耳で聴いてとんでもないことを確認した後にアナライザーやお手持ちのEQでMainやSubの棲み分け調整をしましょう。

②オススメプリセット

Handsup Lives!(Avenger)
Vengeance Soundがリリースしているスーパー総合音源、Avengerには、
Hands Up特化のエキスパンションがあります。

デモソングの3:07-ぐらいに使用されているプリセット、
BA Manian meets THT 
これがシンプルに使い勝手の良い音+前述の"ベタな音"してるのでオススメです。
(因みにManianとは恐らくDJ Manian, Everytime We Touch等で知られるCascadaのメンバーです)

僕もBassの音色に迷ったらとりあえずこれにしてます。
めちゃくちゃ万能選手です。

Sub bassではSerumのOSCにあるAnalog BD Sineってやつがオススメです。
シンプルなので色々な音色に合わせやすい+低域の補強という本来の目的
においては間違いなく使い勝手取り回しやすさ共にNo.1だと思います。

Lead篇

①基本的な組み合わせ方

Leadは基本役割毎に3つ分けてます。以下の通り。
Ⅰ.Top(メインのキャラクター)
Ⅱ.Layer(足りない部分を補う)
Ⅲ.Chord(2つに補えない"和音み")

基本的にTopとLayerは異なる音色を選択することが多いです。
(TopがSupersawならLayerにはAttack成分を足す為にPluckみたいな音にする、とかね)
曲によってはChord用が全くなく、別のリードが入ってるタイミングだけChordに回るといったこともあります。(Ⅰ+Ⅱが2セットある感じですね)

楽曲を聴く人が一番最初に耳に入る部分なので、楽曲やメロディーの雰囲気と自分の好きな音色のいい塩梅のハイブリッドさで作っていきましょう。
オススメはSupersawです。これぞド定番といったところですね。
(アーティストによってはTopとLayerだけでシンセ12本使う人もいるみたいです……)

逆にChordについては主張しすぎずかといって引っ込みすぎずのバランス感覚で鳴らしてみましょう。オススメはSupersawです。
いやこれネタとかではなくガチでオススメです(Leadより前に出ない感じの方がいいよね)。

②ADSR/フィルターADSRの値について

TopやLayerにPluck系の音色を使わない場合は、
各Synth毎で絶対にADSRはそろえてください。
これめっちゃ大事です。


例えばLayerした1つの音だけ無駄に長く伸びてる、とかになってくると、
後々ReverbやDelay(空間系)を挿した時とかに違和感がめっちゃ出てくるし、望んだフレーズとは異なる聴こえ方をする(そして原因が挿した空間系なのかMIDIノートなのか等の特定の作業が必要になる)ので、Leadを組む際に予め行っていた方が効率的です。

フィルターADSRについては、大事なのは聴感上揃っているように聴こえているかであり、絶対的な値を揃える必要はないということです。
音色によっては絶対的な値を揃えても、聴感上の違和感が発生する可能性もあるからです。

僕は楽曲の展開を作るときにLeadのFilterを閉じた時、Pluckみたいな音を使う時が多々あります(好きなHands Upで出したCrazy&Corza のCorzaの方がよくやってる手法です)が、
フィルターADSRが聴感上揃ってないとバラバラな音がいっぱい鳴ってるように聴こえてまとまりが悪い(=違和感が発生する)ので、この辺りは特に気を付けて作業してます。
誇張抜きに各Synth毎に1%単位でFilterを変化させて違和感がないか、
またFilter開閉時の幅、間隔までチェックしてます。
制作時にはここが一番時間がかかってるかもしれません。

Crazy & Corza - Wildfire

Giorno - Happiness (Justin Corza Remix)

Justin Corzaの"癖(へき)"が出てる2曲。
前述のLeadのFilterを閉じた時にPluckっぽく聴こえる手法を使ってます。

③よく使うプリセットとか

ここではLeadに使える個人的にいいなぁと思ったプリセットを各役割(Top/Layer/Chord)毎に紹介いたします。

Topにオススメ:
THT Lead(Handsup Lives!/Avenger)

またAvengerかお前!またHandsup Lives!かお前!って声が聴こえてくるようですが、それほどまでにHandsup Lives!が優秀なのです。
ガッツリHands Up作るにもよし、他ジャンルの曲に要素を入れる為に使うもよし、音作りの研究に使うもよし、真面目にこのエキスパンション全部がオススメです。

Layerにオススメ:
Exhale(Factory Presets/Spire)

ここにきて王道的なSupersawの登場です。
この音色は主にTranceとかで使われることが多いのですが、
Topの癖が強い時とかにLayerとして入れてあげると、
聴きなじみあるけど聴いたことない、だけどなんかいい音」になったりします。
全体的にSpireについては、Factory Presetピンでも即戦力な音が多いので、持ってる方は是非全音色試してみるのもアリです。

Chordにオススメ:
Anthem Chord 2(Beatlab Audio Stonebank UK Hardcore/Serum)

「どうしていきなりStonebankのプリセットが?」
「UK Hardcoreって書いてあるじゃん!」
とまあ色々な声がまた聴こえてきそうですが、
実はTop/Layer/Chord,それぞれEDM系/Hardcore系プリセットが相性良かったりするのです。
Topにおいてキャラ付けするもよし、Layerで派手さや足りない音域を足すもよし、Chordでより煌びやかさを足すもよし、
まさにワンポイント、挿し色的なものとしては申し分ないと思います。

プリセットとかってジャンル毎に販売されていたりとかもするのですが、
偶にはその垣根を取っ払って別のジャンルで使ってみるのも全然アリだと思います。
それが前述しているシグネチャーなサウンドにつながったり、新たなメロディーのアイディアになったり、予想もしなかった化学反応を生みだす可能性を秘めてたりするのです。
(プリセット的にはBass枠だけどLeadとして使ってみるとかね)

合わなかったら合わなかったで、「合わなかったということが分かった」だけでも経験としては大きいと思います。
なので自分だけの最強の組み合わせを見つけて作ってみてください。

さいごに

ここまで読んで頂き誠にありがとうございました。

マジで思考をそのまま言語化しているだけなので、言い回しや用語が難しかったり誤ってる場合がある可能性がありますが、意識している事とかをなるだけ平易に書き記したつもりではあります。

またこれはあくまでKusakacci流ですので、
これをそのまま参考にするもよし。反面教師にして真逆に行くもよし。
この記事の使い方は人それぞれです。
ただし誹謗中傷の道具にするのはやめてね。怒るよ。

この記事を制作した一番の理由としては、
Hands Upを作ったことない人がこの記事きっかけにHands Upを知って聴いて作って楽しんでもらって、
曲が出来たらそれを私Kusakacciに送るなりYouTube/Soundcloudにアップするなりして頂いて、
最後には僕がそれを聴いて「ようやった!すごい!!最高!!!」って言いたいといった欲望が一番の理由だったりします。

気軽に「ようやった!すごい!!最高!!!」って言いたいので、
是非気分転換的なノリでも構いませんので、Hands Upを作ってみてください。めっちゃ奥深いのでハマると思います。

次Hands Up/DTM系の記事書く時は何をテーマにしようかめちゃくちゃ悩んでる状態なので、何か質問とかこれ訊きたい!みたいなのあればお気軽に送ってみてくださいな。答えられる範囲でお答えしたいと思います。

それでは、この記事を最後まで読んでくれたあなたの新曲がHands Upであることを祈って〆とさせていただきます。
以上、Kusakacci(クサカっち)でした。
Hands up is NOT dead.

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