無免許の俺がひき逃げ犯になった話

｢家でネットサーフィンしてたらひき逃げ犯になったわ｣

俺は車の免許を持っていない。
もちろん無免許運転もしたことは無い。

そんな俺がひき逃げ犯になった

貴重な休日をダラダラとネットサーフィンで過ごしていた。
まとめサイトでくだらない記事を見てはあくびをする。
そんな中で目を引く記事のタイトル
【アニメオタクひき逃げする】
確かそんなタイトルだった。
どれどれ何のアニメかな？
軽い気持ちでその記事を開く。
内容はこんな感じ

とあるアニメの痛車が高齢の男性をひき逃げし
その光景を目撃した第三者が警察に通報した。
事件当日中にひき逃げ犯は警察に出頭した。
被害者男性は命の別状は無く、軽い打撲だった。
犯人の車は特徴的な塗装がしており
その地域では有名な人物だった。

内容は多少ぼかしているがだいたいあっている。
そのまとめサイトに寄せられたコメントはこんな感じ

｢やっぱこのアニメのオタクは怖いなぁ｣
｢痛車の意味がわからん｣
｢こいつ結構有名な奴やんwwww｣
｢これこいつのTwitterらしいぜ｣
｢Twitterでも車の写真ペタペタやんけ｣
｢本名でTwitterやっとるやん｣
｢おい、こいつ自撮りあげてるぞ｣
｢これがひき逃げ犯の顔だ｣画像ﾍﾟﾀ

その画像には俺が写っていた

俺はそのひき逃げ犯とは知り合いだった。
同じアニメが好きで繋がった仲だ。
仲良くなるのに時間はそれ程かからなかった。
アニメの感想を語り合う為に深夜のファミレスに
行った回数は数え切れない。
そのファミレスでの食事風景を写真に収めたのが今回の写真だ。

特徴的な痛車
実名でのTwitter
普段は車の写真ばかりだが稀な人物写真

俺だ
この流れで俺がTwitterの人物になるのも納得だ
この画像を見たまとめサイトのコメントはこんな感じ

｢やっぱりな｣
｢これはいつか犯罪する顔だわ｣
｢平均的犯罪者顔｣
｢アニオタ、痛車、犯罪、役満っス｣

心臓が止まるかと思った。
背筋から凍りつく様な震えが始まる。
やがて震えは全身に広がり
スマホを持つ手からは汗が止まらない。
生活音の一切が耳から聞こえなくなり
呼吸するのも忘れていた。

どうするべきか？
わからない。
誰かに相談するか？
誰にも言えないだろ。
打つ手なし

俺は考えるのを辞めて布団に向かった。
頭の先から足のつま先まで冷たい感覚。
温まりたい、その一心で布団に包まる。
全ては時間が解決してくれる

あれから数年の時が流れた。
今ではこの件を笑い話として披露している。
その後の本人とは1度だけ会う機会があり
Twitterに勝手に俺の写真をあげた事を注意した。

自宅に居ながら無免許の男が
ひき逃げ犯になり
ネットに自分の顔が勝手に載せられて
犯罪者だと不特定多数に言われる
これ程怖い話もない

この話は誰かに共有することで供養しよう。
今度の休みに友人を呼んで話してみようかな。
写真を撮られた、あのファミレスで。

家でネットサーフィンしてたらひき逃げ犯になったわ