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僕のヒーロー泡男

「永遠のマイフェイバリットヒーロー!バブルマン!」

これは俺が最高のヒーローを見つけるまでの物語

遊戯王というカードゲームはご存知ですか?
モンスターや魔法を使って相手のライフを奪えば勝ちというシンプルで簡単なルールだ。
噓だ。遊戯王のルールは一生かかっても俺は覚えられない。

遊戯王に出会ったのはアニメから。
初代遊戯王のアニメを見ていた。
ルールもよくわからないし、カードを使って戦うのはトランプしか知らなかった。
そんな少年でもハマってしまう魅力が遊戯王にはあった。
アニメを見て興奮したクサバ少年は鼻息を荒くして
「遊戯王欲しい!!」と母親に伝えた。
遊戯王欲しい…なんとも曖昧な表現をする。
しかし母親ってのは凄いものである。
子供の曖昧な表現から遊戯王を理解したのだ。
翌日
俺はエクゾディアがデカデカと描かれた遊戯王の筆箱を貰った。

貰った筆箱がくたびれて来るころ、遊戯王は新しいアニメが始まった。
遊戯王GX
この頃になると遊戯王のルールも多少理解していた。
周りの子も遊戯王のカードを買い始めていた。
俺はまだ遊戯王にハマっていた。

遊戯王GXの主人公が使うカードはアメコミヒーローのようなモンスターだった。
当時、仮面ライダーにもお熱だったクサバ少年はこのヒーローをすぐに好きになる。
フェザーマンはクールだし
バーストレディはちょっとエッチだし
スパークマンはビジュアル最高だし
クレイマンは固そう

そして出会う
以降10年以上デッキのエースとして活躍する最高のヒーロー
E・HERO バブルマン

詳細な効果は省くが
このバブルマンは、ピンチの時に能力を発動する事ができる。
自分がピンチの時にバブルマンを出すことが出来れば
デッキからカードを2枚引けるのだ!
この効果がめちゃくちゃカッコイイと思うのよ。
まさに、危機的状況に現れるヒーローの如く
ピンチをチャンスに変える男
それがバブルマンなのだ。

バブルマンの良い所は
【バブルマンの効果でゲームに勝てる】ではなく
【バブルマンの効果でゲームの勝ちを諦めないで良い】になる所。

先にも述べたが
バブルマンはピンチの時にしか効果を発動しない。
ピンチ=ゲームに負けそうな時
大概の場合は、ゲームに負けそうな時は勝つことを諦めるだろう。
だが、バブルマンはこの思考すらかき消してしまう。
ピンチが訪れる度に俺は楽しくなっていた。
「バブルマンの力を魅せられる!」
そう思えるからだ。

時には残酷な結果になる事もある。
いくらバブルマンの2枚ドローがあったとて
引いたカードが逆転に繋がらない物であれば
そのまま敗北になるだろう。
しかし、一瞬でも夢を見せてくれたバブルマンは
ゲームに敗北した俺を笑顔にさせてくれた。
勝っても負けても楽しいゲームにしてくれる
それが、バブルマン

いつしか俺はバブルニストになっていた。
バブルニストとはバブルマンの効果を使い
逆転勝ちを狙う決闘者の事だ。

相手がどんなに強いモンスターを出して来ても
相手の使っているデッキが自分と相性が悪くても
自分のやりたい事を何もさせて貰えない時も
このデッキにバブルマンが居る限り諦める事はなくなった

バブルマンは俺の考え方を変えた。
それまでは、ゲームやカードは当然勝つことだけが
楽しいと感じていた。
しかし、バブルマンと出会った後は
「負ける時でも何か逆転の手はあるんじゃないか?」
「どうせ負けるならハッタリかましてみるか?」
「今の負けたけど、ドラマチックに負けたから面白い」
等々
負ける=つまらない以外の何かしらを感じていた。

そして人生で一番バブルマンを好きになった決闘の話を聞いてほしい



ある日
俺は友人と決闘していた

ゲームが進み、俺の盤面は完璧に近い出来栄えだった。
強いモンスターが沢山並んでいた。
ライフは少し心もとないが、そうそう崩される事は無いだろう。
それに比べて
相手の盤面はカードが一枚も無い。
手札も無い。
次のドローだけで俺のモンスター達を倒して
俺のライフを奪う事は出来ない!
勝った!!

勝ちを確信した俺は笑顔で相手にターンを渡す。
相手の右手がデッキに伸びる。
祈りを込めるようにカードを引く。
俺は待ち遠しかった。
勝利を味わうその瞬間が。
相手の絶望に満ちた目を通して映る
己の醜い笑顔を見たかった。
だが
相手の瞳には希望の光が差し込んでいた。

死者蘇生

自分、または相手の墓地からモンスターを蘇生できるカード。
なるほどね。
土壇場で引いたにしては良いカードだ。
ソレを使って延命するのも悪くない。
相手の墓地には強いモンスターが沢山いた。
俺の盤面も、そのモンスターが復活すれば
何体かはやられてしまうだろう。
だが!その程度では俺の勝ちは変わらない!
安心して相手が蘇生するモンスターを選ぶのを見守る。
その手はゆっくりと俺の墓地に伸びてきた。
頭の中がハテナで埋め尽くされようとした時
そのカードは復活を遂げる


E・HERO バブルマン

俺のヒーローが相手の場に復活した。
バブルマンの効果は平等に発動する。
たとえ俺のカードでも、相手の場に出されたなら
バブル事ができる。
俺のヒーローが敵になるなんて思いもしなかった。
相手はバブルマンの効果で2枚引き
さらに、墓地のカードを5枚戻して2枚デッキから引けるカードを発動する。
合計手札が3枚になる。
遊戯王は手札3枚もあれば強いモンスターを呼び出す事は難しい事では無い。

そして俺は負けた

そうか
バブルマンは
みんなのヒーローだったのか



この決闘以降、同じシチュエーションは訪れなかった。
人生でたった1度きりの体験だったが
忘れることの出来ない衝撃だ。
俺のヒーローは俺以外も救うんだ。
それって本当にヒーローじゃん。
バブルニストにとって最高の瞬間を味わえた

あぁ

やはり君は

永遠のマイフェイバリットヒーロー!バブルマン!


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