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【連載小説】リスト

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山村精一は、妻の死後に届いた手紙から、生前妻が杉本隆という男を捜していたことを知った。精一は妻の望みを叶えてあげたいと思った。手掛かりは妻の手帳に記された四名のリストだけだった。…
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記事一覧

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (13)

13. <昭和四十三年七月十九日>  同じクラスの安藤夏美は、お父さんの仕事の都合で引っ…

来戸 廉
5か月前
12

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (12)

12.  亜由美は、今だと確信した。三人が話している間に、中座して部屋から『杉本隆』宛て…

来戸 廉
5か月前
9

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (11)

11. <平成二十六年十一月二十九日>  事態が急速に動き出した。発端は坂下亜由美に掛か…

来戸 廉
5か月前
17

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (10-2)

「そう。私、看護師なのに、気づいた時は、もう手の施しようがないほど進行していて。可笑しい…

来戸 廉
5か月前
10

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (10-1)

10. <平成二十六年十一月中頃>  金曜日の夕方。都築次郎が山村精一を飲みに誘った。 …

来戸 廉
5か月前
13

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (9)

9. <平成二十六年十一月十一日>  亜希子は夜遅くになって帰宅した。 「お帰り。ご苦労…

来戸 廉
5か月前
21

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (8)

8. <平成二十六年十一月十一日>  電車が鶴岡駅に近づくに連れて、精一の緊張は高まってきた。ホームに滑り込んだ時には、心臓の高鳴りは痛みに近いものになっていた。 「心臓によくないな」 「ん、何か言った?」 「いや何でもない。お前、何だか嬉しそうだな」 「だって久々の遠出ですもの」 「遊びじゃないぞ」 「いいじゃない、少しぐらいうきうきしても」 「子どもみたいなやつだな」  亜希子は意に介する様子もない。  私の手柄よと亜由美は言い張っていたが、今回は平日でかつ遠いと

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (7)

7. <平成二十六年十月上旬>  このところの木下家について一頻り。 「どう? 調査は進…

来戸 廉
5か月前
11

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (6)

6. <平成二十六年四月末>  美枝子は六十歳になったのを機に婦長の職を辞した。まだ看護…

来戸 廉
5か月前
23

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (5)

5. 「これから直ぐ行くって、どういうこと?」  亜希子が詰め寄る。 「お父さん、今日は石…

来戸 廉
5か月前
17

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (4)

4. <平成二十六年八月>  山下浩三が帰宅して郵便受けを覗くと、チラシやDMに挟まれて…

来戸 廉
5か月前
17

【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (3)

3. <平成二十六年七月十一日>  山村美枝子の初七日の法要を無事終えた。  坂下亜希子…

来戸 廉
5か月前
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【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (2)

2.  <平成二十六年八月下旬>  木村妙子は手紙を受け取った。以前勤務していた佐野病院…

来戸 廉
5か月前
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【創作大賞2024応募作恋愛小説部門】リスト (1)

1.  <平成二十六年八月初旬>  山村精一は散歩の支度をして玄関を出た時、郵便受けに封書があるのに気づいた。昨夜取り忘れたようだ。この頃郵便の配達の時間帯が夕方に変わったらしく、早めに戸締まりをすると、こういうことはままあることだった。精一は、それを一旦は取り出してはみたものの、逡巡した後、郵便受けに戻した。  精一の一日は散歩から始まる。  散歩は、退職した二年前から始めた。ほとんど外に出ることがなかった精一を見かねて、妻の美枝子が勧めた。夜勤以外の日は私も付き合う