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胸の寒空に灯る唄【詩集】

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#恋愛

あなたの吐息が凍りつき 描いた白い霜模様 わたしを見つめて光り出す コロンが点滅する時計 今日も一枚窓を割る 弾ける透明のシャワーが 止まって見える刹那 あなたのように思えるの 吹き付ける風を味わって ひとりの朝を迎え撃つ 手の甲を抉るガラスの破片 痛みも寒さに消えていく 窓の外では陽が昇る 点々と落ちた名残の水滴 呼吸がなくてもいいくらい 一生懸命キスをして 最後の一枚残ったガラス 指でなぞれば声がする わたしの名前を呼んでいる 甘い時間はぜんぶ嘘

あめ玉メモリー

莓に林檎、蜜柑に黒糖 好き放題に荒らして溶けた 君が飲み込むあめ玉も 少しは役に立つのかな 迫り来る分解を押し退ける成分 無理矢理にでも形を変えて ばらばらにして繋ぎ直せば なんとか吸収できるはず 桃に蜂蜜、抹茶に葡萄 好き放題に乱れて踊った 君が噛み砕くあめ玉も 少しは綺麗に響くかな 壊れる鼓動をすり抜ける欠片 無理矢理にでも楽しいフリで わくわく奥歯を合わせれば なんとか消化できるはず 梅に炭酸、薄荷に檸檬 好き放題に殴って泣いた 君が舐めてみるあめ玉も 少しは美

あなたの名前を待ち望み 開けば関係ないメール 数多の甘えも降り注ぎ すがれば安寧さえ見える 嘘つく文字が棘のように 毎日暴れて増えていく 素のぬくもりが消えないように 大事に抱えて触れていく 雲が湧き出すケータイと 震える画面に恥を知る 蜘蛛が吐き出す消えた糸 崩れる斜面に舞い降りる ひとこと証が欲しいだけ 昨日の灯りが惜しいだけ

冬のダイヤモンド

何も言わずに右手をとって 仏頂面で黙り込むあなた 人工的なネオンの針が うなじの隙間にちくちく刺さる 青のリゲルに橙のポルックス 黄白色のプロキオン はじめて話した冬の日に 指差し教えてくれた名前 他には何もいらないと 思い込ませて飛び立った さみしい心を見下ろせば 瞬く冬のダイヤモンド ビルを彩るLEDの礫が まぶたの裏にころころ詰まる 送っていくよとわざわざ言って くちびるの端で笑ったあなた 白のシリウスに黄色のカペラ オレンジ色のアルデバラン おわりを告げた冬の