(短編物語)赤い毛をしたきつねの話
(深く考えすぎず、加筆修正ありきで気楽に書いていきたいと思います。)
どんどん、と、扉をたたく音がした。
べルイは、腰を沈めていた古い花柄ソファから身を起こし、扉まで歩いていくと、前脚でノブを回して扉を開けた。
扉の前に立っていたのは、一人の男だった。人間だ。手には、金属でできた緑色の工具箱を持っている。
「ほんとうだ」
第一声に、男はいった。べルイは、男を見上げた。小さくて、ぶどうの粒みたいな丸い目は、べルイの胸のあたりか、それとも、脚の先あたりか、とにかく、べルイの顔よりも下の方をぐるぐると眺め回していた。
「ほんとうだ、というと?」
べルイは聞き返した。ほんとうは、男が何をいわんとしているのか、べルイには分かっていた。
「ほんとうに赤いんだな」
「うん、赤いとも。きつねはみんな赤い」
男のいった、赤い、というのがもちろんべルイを指しているのだということは、火を見るよりも明らかだった。この丸太小屋の中にある赤といえば、今までべルイが座っていた花柄のソファと、床に転がしてある食べかけのリンゴ、それから、べルイくらいなものだった。そして、何より、ベルイが格別に赤かった。ソファの赤は黒っぽくくすんでいたし、リンゴはあんまり色が濃くない。リンゴの方は、食べかけで黄色い中身の方が目立っているから、赤いといえるかどうかさえ怪しかった。もっとも、ソファやリンゴをみて、ほんとうに赤いんだな、と驚いたのだとしたら、この人間の目のつけどころは、相当変わっている。
「きつねはみんな赤い、たしかに、そうともいえるな。だけど、あんたみたいに赤いのは、ちょっと他に知らないや。あんたはまるで……まるで……」
「夕日みたいな赤」
べルイが引き継いだ。
「そう、それ! 夕日みたいな……いや、夕日といっても、いろんな色の夕日があるからな。正確にいうと、うん、あれだ、あれ、炎色反応の、ストロンチウム。あんたは、ストロンチウムの赤だ」
「はじめまして、おれは、ベルイ」
べルイは、男が、自分のことをあんた、あんた、というのが気になってきたので、一度、仕切り直すことにした。
「紅のきつね、べルイくん。はじめまして」
男はにこにこと目を細め、少しかがんで、べルイに手を差し出した。べルイは、その手の中に前脚を置きながら、目を合わせようと思って、じっと男の顔を見つめた。男の目は、最後まで、べルイの鼻の先に注がれたままだった。
「あなたのお名前は?」
男が名乗りそうもないので、べルイは聞いた。
「わたし? わたしは、ロットだよ。ロット・ブラウニー」
ロットは、太った腹を突き出し、体をのけぞらせた。ベルイには、名前を聞くなんて、なんて失礼な奴なんだ、といっているように見えた。何かまずったかな、と、ベルイは思った。
しかし、それも杞憂だったようで、ロットはきょろきょろと丸い目を動かして、丸太小屋の中を見回した。
「それで? ベルイくん。ベンチを作ってほしい、ということだったね。そういう依頼だったと思うんだが」
「ああ。庭先に作ってほしいんだ。材料も外に置いてある。案内するよ」
べルイは、ロットの脇をするりと抜けて表へ出ると、先に立って小屋の裏へ回りこんだ。ロットは、歩いていくべルイの尻尾を一呼吸おいて眺めてから、ゆっくりと体を揺らして後に続いた。
「材料はこれだ」
ベルイは、大小さまざまの木の枝を積んだ山を、前脚でとんとんとたたいた。
「どれでも、使えそうなのを使って作ってくれ。座り心地がよくて、何時間でも座っていられて、あと、緑色に塗ってもらえるとうれしい」
「お安い御用。安心なさい。わたしの腕は確かだからね。一日もあれば十分。夕方までには仕上がるね」
「それじゃあ、よろしく」
さっそく、背中を向けて作業を始めたロットを後に残して、べルイは丸太小屋の中へ戻った。それから、花柄のソファに座り、本を読んだ。しばらくして、ベルイは、ロットのようすが気になり、ソファから立ち上がって窓の外をのぞいてみた。扉の反対側の壁についた、ちょうど、ロットが作業をしているはずの場所が見える窓だった。そこでは、たしかにロットが作業をしていた。こちらに背中を向け、黙々とベンチ作りに勤しんでいる。ベンチの原型は、まだ見えなかったが、迷いのない手つきから、ロットの腕が確かだというのは、ほんとうのようだ、とべルイは思った。季節外れなジングルベルの鼻歌が聞こえてくるのは気になったが、べルイは安心して、またソファへ戻り、本を読んだ。途中でまた立ち上がり、窓の外をのぞいた。
「ブラウニーさん、コーヒーはいるかい?」
べルイは、作業をするロットの背中に向かっていった。
「いや、結構。水筒に水を入れて持っているから、仕事の間はこれを飲むよ。コーヒーは、そのあとで」
ロットは、ふりかえらずに答えた。
べルイは、自分のコーヒーを入れ、ソファに座り、夢中で本に読みふけった。それからは、どんどん、と扉をたたく音がするまで、窓の外をのぞいてみなかった。やっと、どんどん、と聞こえてから、扉を開けてみると、ロットが、できあがったベンチを手に立っていた。
「さあ、座ってみて」
ロットは、べルイの前にベンチを置いた。べルイが、そのできばえを眺めるすきもなく、脇の下へさっとロットの手が伸びてきたかと思うと、次の瞬間には、ぬいぐるみのようにベンチの上に座らせられていた。
「うん、ぴったりだ」
ロットは、腰に手をあて、満足気に、それが一つの作品だとでもいうように、べルイとベンチを眺めた。
「うん、たしかに、ぴったりだよ」
べルイは、眉間にしわを寄せ、おしりをもぞもぞと動かして、座り心地をたしかめた。ロットの、自分に対するあつかいは気に入らなかったが、完成したベンチのできばえがすばらしいものであることは、認めないわけにいかなかった。
「だけど、緑じゃないな」
べルイは、最初にベンチをみて思ったことを、打ち明けた。
「色を塗ったら、乾かさないとならないからね。まずは、あんたにぴったりにできているかどうかたしかめて、色塗りはそれからだ」
「よかった」
べルイは、胸をなでおろした。
「塗料は、臭くなくて、木にも、森にも、あと、おれの体にもやさしいのを使ってくれ」
「そうだな。そこが、一番大事なとこだ」
ロットはうなずいた。べルイはほっとして、ベンチを手に、小屋の裏へ戻っていくロットを見送った。
「あいつ、そんな商品は取りあつかっておりません、っていわなかったな」
べルイの頭上から、声がふりかかってきた。声の主は、庭先に立つ一本のサクラの木だった。べルイは、サクラのどこに口があるのか知らなかったが、声はいつも、豊かに広げられた枝々のどこかから、全体から響いてくるときもあれば、枝の先っちょっから、ベルイの耳にささやいてくることもあった。
「べルイはきつねだから、そう気にすることもないのだろうけど、お客って、ときとして、かなり気を使ったりするものなんだぜ? 面倒くさい客だって、思われないようにさ」
「どうしてキルシュがそんなことを知ってるんだ?」
べルイは、眉を上げて、キルシュという名のサクラを見上げた。
「うん、なんでかな」
「お客のニーズに応える。だけど、それがやりたくて、仕事をしているんじゃないのか? ああいう人間たちは」
「金さ」
キルシュは、得意気にいった。
「金があれば、飯が食える。あいつらは、そのために仕事をしているのさ。だから、なるべく楽をしたい。注文の多いお客さんは、その点、あんまり理想的とはいえないだろうな。つまり、面倒くさい客ってことだ。べルイ。ちょっと危なかったな。もし、あのロットってやつが、臭くなくて、木にも、森にも、そう、おれにも、べルイにもやさしい塗料を持ち合わせていなかったらだよ、確実に、面倒な客だと思われていたよ」
「そうかな。少なくとも、ロットは自分の腕に誇りをもっているみたいだった。それに、もし、面倒な客だと思われることがあっても、おれは気にしないよ。おれは、座り心地がよくて、臭くない、木にも、森にも、キルシュにも、おれにもやさしい塗料で塗った、緑色のベンチがほしいんだ。それ以外はいらない」
「やるね。それは、べルイがきつねだからなのか、それとも、べルイだからなのか。だけど、おれは知ってるぜ。べルイも、妥協って言葉を知ってるってことはな。ベルイ、あんたは知っている。諦めってやつを」
キルシュも、ときどきベルイのことを「あんた」といったが、それは、ロットのいう「あんた」とは、どこかちがっていた。そこには愛情がこもっていることを知っていたし、親しい仲のよしみで、ベルイはそれを許していた。
「やめてくれ」
べルイは、横目にキルシュをちらりとみた。
「おれは、希望と可能性に満ち満ちたきつねなんだ。そんな、疲れてしなびているみたいないいかたをするなよ。おれはただ、一辺倒じゃないだけだ」
「そう、そしてしなやか」
キルシュが、ゆさゆさと揺れた。ひやりとした冷たい風が、べルイの頬の毛を逆なでた。
「おれは中に戻る」
ベルイは、小屋の扉を閉めると、ひとつあくびをして、蛇口からポットへ水を注ぎ、二人分のコーヒーの用意に取りかかった。さっきまで飲んでいたコーヒーは、もう空になっていた。
コーヒーが、香ばしく、うっとりするような香りと、白い湯気を立てて入ったとき、ちょうど、またどんどんと扉をたたく音がした。ベンチの色塗りが終わったのだ。べルイは、コーヒーを残して、ベンチのできばえをたしかめに、表へ出ていった。
ベンチのできばえは、少し色が薄すぎる、と思ったくらいで、あとは、満足のいくものだった。
「木の目がよく見えて、美しいでしょ」
ロットはいった。
「まあ、あんまりどぎつい色にはならない方がいいと思ったものでね」
その言葉に、べルイも納得せざるをえなかった。みていると、色が薄いのも悪くはない、という気がしてきた。
べルイは、ロットを招き入れ、コーヒーと、しっとりした口どけのくるみ入りクッキーをごちそうした。
ソファに向き合って座ったロットを、ベルイは、コーヒーのカップごしに観察した。ロット・ブラウニー。べルイは、親友であるきこりのルースを通じて、この人物を知り、ベンチ作りを依頼したのだ。ベンチが欲しいなら、ロットに作ってもらったらどうかな。わたしがかけあってみるよ。きっと喜んでオーケーしてくれると思う。物を作るのが、とにかく大好きなんだ。ルースはそういっていた。ロットは太っていて、体を動かすのは少し大義そうに見えたが、腕は、ほとんど筋肉のかたまりのようで、実際よく動くようだった。(べルイは、マシュマロから、ウインナーが二本突き出ているさまを想像し、胸の内で舌なめずりした。)
この人は、何のために仕事をしているのだろう。ベルイは、コーヒーをすすりながら考えた。さっきはキルシュとあんな話をしたが、人が仕事をする理由は、一つとは限らないし、その答えだって人それぞれだ。お客のニーズに応えるのも、金を稼ぐのも、答えの一つにしかすぎないことは、べルイもほんとうは、とっくに分かっていた。
しかし、ベルイは、ロットにインタビューしてみることができなかった。ただ一言、あなたはどうしてこの仕事をしているんだい? と尋ねればすむ話だったのだが、ロットは独りで、ぺちゃくちゃとはいわないまでも、しゃべっていて、タイミングがなかったのだ。
「いやあ、ほんとうなんだね。うわさどおりなんだね。ところで、え、砂糖をもらえないかな。ありがとう」
ロットは、しきりと、同じことを繰り返していた。
「うわさどおり。赤い毛をしたきつねがいるんだって、あんたのことは、うわさに聞いていたんだよ。まあ、感心だね、感心だ。ご利益がありそうだよ」
「いや、おれには、そんな特別な力はないよ」
べルイは、気恥ずかしくなった。赤い毛のことを口にされるのには慣れっこになっていたが、この色とは、生まれたときからずっとつきあってきた。自分にとっては、何も特別なところのないこの色のことを、改めて驚かれたりなんだりすると、いつも少しだけ奇妙な心地がする。
ロットは、すっかりコーヒーを飲み終わってしまうと、それじゃ、これでおいとまするよ、と立ちあがった。べルイは、急いで、用意してあった白い布袋を、ソファの下から引っ張り出した。中には、金貨が二枚、入っていた。
「ああ、それはしまっておきな」
ロットは、布袋を断固として押し返した。
「あんなのは、わたしの仕事のうちにも入らないんだから。友だちの荷物を、半分もってやったくらいなものさ。これがビジネスなら、たしかに、わたしもそれを受け取るべきなのかもしれないがね。わたしはこれくらいのことじゃ、誰からもお金をもらわないんだよ。それに、報酬なら、もうたっぷりもらった。ベンチを作る楽しみと、この、コーヒーをね。あんたはベンチを手に入れた。わたしの作る、最高のベンチを。お互いに、貸し借りはなしだ。いい取引をしたとは思わないかね?」
「まあ、ブラウニーさん、あなたがそういうのなら。おれは、無理にもらってもらおうとは思わない」
べルイは、袋を引っこめた。面倒なかけ引きはしたくなかった。ロットがいらないというのなら、ほんとうにいらないんだと受け取っておこう。
「ただ、もし、あなたがおれに、何か頼みごとをしたくなることがあったとして、そのときは、今日のことを持ち出さないでくれよ。あのとき、ベンチを作ってやったろ、なんていわれたあかつきには、おれは、今日のことを後悔することになる。おれは、そういう、人と人の、いや、人ときつねの、べたべたしたつき合いは嫌いなんだ。頼みごとをするときは、うん、おれは、頼みごとをするなっていいたいわけじゃない。そのときは、わざわざ、そんな面倒なものは持ち出さないで、単刀直入にいってくれ。そしておれは、まっさらなところから、頼みをきくか、きかないか、判断させてもらう」
「うん、分かった分かった」
ロットは、大きな手で、べルイの手を包みこんでいった。そのやんわりとなだめるような口調で、ベルイは、相手が自分の話に興味がないことを悟った。まあ、相手も、貸し借りはなしだ、といっていたのだし、心配するのはやめにしよう。べルイは、諦めて、肩をちょっとすくめた。
「では、また作ってほしいものができたら、友だちづてでも何でも、声をかけておくれ。ベンチはまだ乾いていないから、明日になるまでは座らないでおくように。あんたにとっても、ベンチにとっても、そうした方がいいだろう。ま、あんたのおしりの跡がついたベンチも、かわいいかもしれないがね」
ロットは、去っていった。
「信じられない! 信じられないぜ」
また、頭上から声がした。
「何が?」
べルイは、キルシュに尋ねた。
「あいつ、くるみのクッキーを一口も食べなかった。べルイのとっておきだったのに」
「別に、とっておきってわけじゃなかったよ。クッキーは好きじゃなかったかもしれないし、今は食べる気分じゃなかったのかもしれない。あるいは、ダイエット中で、我慢していたのかもな」
「それも、そうか。だが、べルイは、あいつがクッキーを食べて、おいしさに感動して涙するところが見たかったわけだろ。そう思うと、おれは切なくてならない」
「いや、自分で食べる分が増えて、おれはラッキーだったよ」
べルイは、わざとまじめに答えた。
「それにしても、気づいたか?」
キルシュが続けた。
「あいつ、ベルイのことは、何にも見ていなかったぜ。赤い毛の他はな。あいつ、気づいたのかな。ベルイの目に。水晶のように透きとおった、魔力でもありそうな不思議な目にさ」
「おれの目には、魔力なんてないけど? だけど、どうかな。あの人とはたしかに、一度も目が合ったような気がしないんだけど、それはあの人の目のせいだったのかもしれない。こう、どこを見ているんだか、ちょっと分かりずらい感じだった。なんというか、ぶどうの粒みたいで。それに、おれは、あの人は、案外よく見ていたんじゃないかって気もするよ。そうでなければ、あんなに、おれにぴったりなベンチを作れるはずないだろ?」
「べルイの形さえ分かれば、ベンチくらい作れるさ」
キルシュは、諦めなかった。
「あいつは、ベルイの何一つ知らないまま帰っていったぜ。たとえば、ベルイは、料理はできないこともないけど、ほんとうは、作るよりも食べることの方が好きだってこととか、舌は肥えているけど、うまくないものでも平気で食べてしまうってこととか、あと、生クリームを食べすぎると気持ち悪くなるってこととか、あいつ、知らないまま帰っていったぜ」
「うん。あの人とは、食事の話にはならなかったからな。初対面だったし」
「あいつは、ベルイの毛しか見ていなかった」
キルシュは、またいった。
「毛の話しかしていなかった。ベルイのこと、赤い毛をした、きつねのぬいぐるみくらいにしか思っていなかったろうよ。みんなそうだ。ベルイを見るやつは、みんな、あんたの赤い毛しか見ない」
「まあ、おれも、最後まで、あのロット・ブラウニーって人のことは、ほとんど知らずじまいだった。もう少し話をしてみたかったって、心残りがないわけじゃない。だけど、おれは、一ミリだって何かをこの毛のせいだとは思いたくないんだ。この毛がなければ、おれはおれじゃない。この毛のおかげで、おれはいろんな人に興味を持ってもらえるし、自分の知らないところで有名になっていたり、それが嫌だったこともあるけど、今は大して気にしていない。それに、いったろ。あの人とは、初対面だった。毛が赤かろうが、赤くなかろうが、あんなものだよ」
「ああ、おれは、ベルイの毛が悪いっていいたかったんじゃないぜ。悪いのはベルイでも、ベルイの毛でもない。悪いのは……」
「誰も悪くはないよ」
ベルイは、キルシュが続きをしゃべる前に、すかさず口をはさんだ。
「おれは、実際何も気にしていないしな。ここに、おれのことを知ってくれているやつがいるから、それで十分だと思ってる」
「それって、おれのことかい?」
「他に誰がいる?」
ベルイは笑って、続けた。
「前は、自分のことを、誰かれ構わず知ってもらいたくてたまらなかった。それこそ、おれが誰にも知ってもらえないのは、この大切な毛のせいだと思うこともあった。キルシュに出会ってからもだよ。しばらくの間はな。だけど、気づいたら落ち着いていた。何かきっかけがあったのかもしれないし、なかったのかもしれない。ただ、キルシュの存在に気づけたおれは、幸せ者だよ。おれは、キルシュと話す時間が好きだ。くだらない話も、魂の会話もできる」
「もしかして、もしかすると、だぜ。べルイは、もうソファをもってる。自分用のと、お客用のと、つまり、座る場所には困ってなかったわけだ。それなのに、わざわざベンチを作ってもらったのは……」
「うん、家の中にいたら、キルシュと会話がしずらいだろ?」
「おお、ベルイ。あんたのとっておきクッキーを、ふるまってもらいたい気分だぜ」
キルシュが、枝葉と一緒に、声をふるわせていった。
「さて、と、おれは夕飯のしたくでもするかな」
ベルイは、歯をみせてにやりと笑うと、丸太小屋の中へ引っこんで、ぱたりと扉を閉めた。
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