見出し画像

円背なら必須!背張り調整 Vol.1

想像してください

これまで私はたくさんの円背の方の車椅子を担当させていただいてきました。円背の方の車椅子について、ケアマネジャーや理学療法士から頂く相談は多岐にわたっていました。つまり円背の方はそれだけ多くの困難を抱えている、ということです。しかし、それは「円背だから・・・」なのでしょうか? ちょっとご自身が円背になったつもりで読んでください。

円背の方が、通常の椅子や一枚布のバックサポートでできている車椅子に座るのは非常につらいです。バックサポートに当るのが常に背中の一点になってしまうからです。皆さんも、ちょっと試してみてください。今お座りの椅子の背もたれと背中の間に、ゴルフボールか消しゴムを挟んで寄りかかってください。長時間、そのまま過ごしたいと思うでしょうか? ちょうどゴルフボールや消しゴムのところだけ強く当たっていると思います。背中の一部だけがバックサポートに当っている円背の方の座り心地は、このイメージに近いものになります。

円背の方が抱えている困難は、背中にとどまりません。車椅子や椅子のアームサポートをぎゅっと握りしめている方はいませんか? これはアンバランスになった体幹を支えているからです。前方に倒れたり、さらに丸まったりしないようにしているのです。好きで握りしめているわけではありません。できることなら両手を車椅子から放して、自分で食事をしたり、アクティビティをもっと楽しみたいと思っているかもしれません。

円背の方の中には、下からのぞき込まないと視線が合わない方もいらっしゃいます。その方がいつも見ている景色を想像したことがありますでしょうか? デイサービスに行っても、自分の脚、地面や床、テーブルそんな景色を一日見て過ごすことになります。まわりの人と視線が合わないと自分に話しかけられているかわからないので、一緒にお話したり、笑ったりが難しくなります。そうすると本来、社交的で明るい方も、誰ともお話しすることなく1日ただ座って過ごすようになってしまいます。

そして、食事がしにくいことも円背の方の困難の一つです。首と口まわりの筋肉が、頭を支えるために常に筋肉は緊張状態にあります。食事をするときには、すでに緊張している筋肉が、さらにもう1つ仕事を抱えることになります。そのために口を開けたり咀嚼がうまくできず、一口が小さくなったり時間がかかります。喉に対してあごがあがった状態になるため、飲み込みも悪くなり誤嚥リスクが高まります。

解決策に車椅子の選択肢を!

書いていてつらくなってきたので、このあたりで終わりにします。このほかにも背中の褥瘡、仙骨の褥瘡も、円背の方が抱えている困難の一つです。

これらの困難について「円背だから、仕方ない」と、体に原因を求めて解決をあきらめていませんか? もちろん、円背でなければ起こらなかったかもしれません。しかし、車椅子に座って背中が当たるのは円背のせいではありません。車椅子のせいです。車椅子が体に合っていない、と考えます。アームサポートを握りしめなければならないのも、食事も褥瘡も、目を合わせようとしても合わないのも。車椅子が体に合っていないからだ、と。どうぞ、あなたも考え方をシフトしてください。

車椅子は家具ではなく福祉用具です。運ぶだけの台車でもありません。様々な障害を持っている方が使えるように、座位を保ちにくい方が安定して座るための機能や付属品が用意されているのです。もちろん、車椅子ですべてを解決できるわけではありません。体に合った車椅子を使っていても、栄養状態や座り方などが原因で褥瘡ができることもあります。それでも、車椅子でできることもたくさんあります。「齢だから・・」「円背だから仕方ない」とあきらめる前に、問題解決の選択肢に車椅子を考えてください。

シーティングのご相談はシーティングエンジニアの資格を持っている福祉用具専門相談員か、理学療法士・作業療法士にご相談ください。

次回は、いよいよ円背の方の背張り調整についてご紹介します。

よろしければサポートをお願いいたします。 車椅子ユーザーと家族、支援者が幸福な介護現場を実現するために、「車椅子事故ゼロ」を目指して啓もう活動をしています。 いただきましたサポートは、今後の活動費に使わせていただきます。あなたのサポートを頂けますと嬉しいです。