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失業したのでハローワークに行ってきた話



僕は29歳の春、仕事を飛んで無職になったのでハローワークに行った。

失業手当をもらいに行くためだ。

最寄りのハローワークは渋谷にあった。楽しそうに友達と歩く若い人が無限に行き交う街をゾンビのようにとぼとぼ歩きながらくぐり抜けてたどり着いた。

向かう途中見かけたタワーレコードのビルは、黄色と赤のロゴと今勢いのあるアーティストが大きく強調されてエネルギッシュなオーラがギンギンに放たれていた。


目指した渋谷のハローワークは坂の中腹にあった。

まさに人生の坂道ってことか。

スロープを上がると、張り紙が貼ってあった。

★失業給付の相談、手続き
★再就職手当の手続き
★教育訓練給付の相談、手続き
★職業訓練関係の相談、手続き
★事業主の求人の申し込み、相談
★事業主の雇用保険関係の届出
★事業主の助成金の相談、手続き
★障害者関係の職業相談、紹介 等
平日(月~金) 8時30分~17時15分
土・日・祝は休み


その日は土曜日だった。

普通調べてから行かないか。向かいながら土曜日にやっていない可能性が少しでも頭をぎらないのか。公的なところだぞ。

でも今の自分を執拗に責めたら危ないなと思った。

しかし、「まっ」の後に続く言い訳を考えたが驚くほどに見つからなかった。調べたらスマホで5秒だ。

その日はカフェでYouTubeを観て帰った。



月曜日に再び、渋谷に来た。

先日見た坂を上るとハローワークは開いていた。


階段を上がると、2階に受付があった。受付の人に向かって外国の人がなにかブチギレていた。よく聞こえなかったけど、サッカーの監督がなだめに来た第4審判に怒るように身振り手振り激しく制度のことに怒っていた。

番号札を取って、待っているとすぐ呼ばれた。

なんて言っていいか分からず「あの…えっと…失業しました」とすごくかわいそうな言い方になってしまった。

察した男性職員の方が慣れたように「失業手当給付の手続きですね」と言ってくれて安心した。でもなぜか「…うす」と答えてしまい、(なにがうすだバカ)と自分に思った。

いろいろ早口でバーッと説明され、何枚かの紙とクリアファイルをもらって、3階に上がった。

3階は開けたフロアでたくさんの椅子が等間隔に5×6ぐらいに並んであった。多くの人が待っていた。

その椅子の前に3枚ほどホワイトボードがあり、失業手当ビギナーのための教えを書いていた。3分くらい眺めていたがよくわからなかったので、受付でもらった用紙に個人情報を書けるだけ書いて会社から郵送してもらった離職票と一緒にファイルにしまって提出ボックスに投函した。たくさんのファイルが積み重なっていた。椅子に座り待った。

1分ぐらいで呼ばれた。

フルネームを大きな声で呼ばれて恥ずかしかった。失業者にプライバシーなし!と最初に主従関係を叩き込まれた気分だった。(そんなことは絶対ない)

窓口に向かいながら(上のファイルから処理してんのかな、だったら最初の人めっちゃ待つな。)と思った。

「対応させていただく職員の〇〇です」と挨拶して立っていた人は、50代ぐらいの髪の長い目つきの鋭い女性だった。なんとなく友達の母親にいた気がしたが思い出せない。

「まず、、証明写真お持ちですか?」と言われクラッと来た。普通調べるだろ。ホワイトボードに書いてた(はず)だろ。

「あ…すみません。忙しくて」という今一番通用しない言い訳をした。

お前無職だろ。


「そうなんですね、近くで証明写真撮れますので今日いけますか?」

優しいその人はあくまでも超忙しい人用の対応をしてくれた。こち亀の中川の父親みたいだ。


その人に渡された紙は、証明写真機までたどり着ける紙だった。

地図を見ながらハローワークを出て坂を下りて、少し行った線路沿いに証明写真機はあった。

それは世界最小の証明写真機かと思うぐらい小さい機械だった。

カーテンを開けて入ると、ちょうど自分の肩幅と同じ広さだった。料金は800円だった。ハローワーク最寄りなのに高すぎるだろ。財布を開くとなぜか一万円札しかなかった。普通財布確認してから向かうやろ。

こんな自分とこの先も何十年か一緒なのか、と思うと嫌になったが、しょうがないので近くのファミマまで5分ほど歩いて缶コーヒーを買った。電子マネー化へ驀進している首都で一万円札で缶コーヒーを買うのは申し訳ないと思ったが外国人の店員の感情は読み取れなかった。

その日は風がやたらと強く、突発的に強風が吹いた。僕の手から地図の紙が飛んでいき振り返ると斜め上10mぐらいで紙は舞って行っていた。(グッバイ!)と即思った。


写真機に戻ると誰か入っていた。なので外で待っていた。外から人が入っているのを見て改めて世界最狭(せかいさいせま)だと思った。

さっき来た時も思ったがこの道、異様に若い女性が通る。しかもみんなオシャレだ。

しばらく経って、この道をまっすぐ行くと原宿駅に行き着くことに気づいた。

なるほど原宿で遊んだ人が次渋谷歩いて向かう時に通る道なのか。いいな友達と喋ったら一駅分なんてあっという間なんだろうな。

原宿のいろんな機能のあり、かつ広い写真機で遊んできたっぽい人たちがたくさん通るなか、小さい上にくそ高い、さらに異様に小さい写真機の前で待つの恥ずかしいな。

5分ほど待って、撮影が終わったぽかった。でも中のおじさんがスマホでなんかカシャカシャ写真を撮っていた。写真機の中で何を撮る必要があるんだと、少し苛立った。

ほどなくしておじさんが出てきた。少し驚いた風のリアクションをして受け取り口にストンと出てきた写真を受け取っていた。


入るとやはり狭かった。

おじさんのぬくもりのある硬い椅子は嫌だった。

1分もせずに撮影が終わり、写真も受け取った。

あまりにも覇気のない顔は笑えた。


再び3階へ戻って来ると、さっきよりも混雑していた。

さっきの外国人は今度は3階で怒っていた。

「遅いよ!このシステムだと生活もたない!」とその人はソーシャルディスタンスを守って訴えていた。この人の場合もう少し離れないと飛沫大変だなと思った。

さっきと同じように書類をクリアファイルに入れて、外国人男性の熱の入った訴えを聞きながら、立って待っていると、2、3分で名前を叫ばれた。(この待ち時間不平等システムクレーム来ないのかな)



たまたまさっきと同じ女性職員の方が対応してくれた。

印鑑や通帳など、写真以外の必要なものは揃っていた。(良かった)


「病気で会社を休職しそのまま辞めました。その間は傷病手当をもらっていて先日退職が決まったので失業手当に切り替えたくて来ました」

久しぶりに正しい文法の日本語を喋った気がする。


いろいろ書類の確認をしながら、前職の話をした。
※前職のひどい辞め方は前回書きました。↓
https://note.com/kurukururinne/n/nda645f3a86d6

その職員の方は眉毛を動かさずほとんどほとんど表情が変わらなかったがとても丁寧に話を聞いてくれた。

書類に書いた僕の前職の会社名をペンのお尻で指し「こういう会社だから大変だったんでしょうね」と労って?くれた。

それから理解の悪い自分のために何度も同じ説明を丁寧に繰り返してくれた。認定日というのがあって月に一回ハローワークに来なきゃいけないということ。何かしらの就職活動を月に一度はしなければならないこと。受給の期間は何か月なのか、教えてくれた。

「何かしらの就職活動をした証明はなにか必要ですか?メールとか書類とか」と聞くと「いえ、自己申告でいいですよ」と教えてくれた。(それなら何でもありだな)と思った。

一通り登録が終わって、少し座ってお待ちくださいと言われ[雇用保険給付資格者のしおり]という冊子を受け取った。ボーッと椅子に座って待っていたら、後方から若い職員さんが僕の名前を叫んだ。

[雇用保険受給資格者証]という紙を持って、ずっと僕の名前を叫いる職員さんに近づくとその紙を僕に見せながら「〇〇さんですねお間違いないですかご確認ください生年月日とお写真もお間違いないですか今回の給付金は〇〇です本日から一週間ほどでこちらの口座に振り込まれますのでよろしくお願いします次回の認定日は〇月〇日の〇時になります遅れないようにお願いします該当日に来館できない場合はわかった時点で早めにに来てください本日は以上になります何かご質問ございますか」と一息で言った。なにかクレーム耐性の限界な感じがして心配になった。「ありません。ありがとうございます」と言ってその紙を受け取って、ハローワークを出た。

入り口でさっきの外国人が誰かに爆笑しながら電話してて笑ってしまった。笑って電話できる相手がいるっていいなと思った。


それから一週間もせずに[シヨクギヨウアンテイキヨク]から振り込みがあった。16万円ぐらいだったと思う。こんなにもらえるのか。


それから、毎月決まった日にちの決まった時間にハローワークに向かった。

一度完全に忘れてて、認定日の3日後ぐらいに気が付いた時があった。震えた。しかし生活困窮しているくせにとても悠長だ。

(俺のおおよそ15.6万!!!)と焦ってすぐスマホで調べると、認定日に行けなかった人は翌月の認定日にいったら繰り越しで支給してもらえるとのことだった。キャリーオーバー繰り越し当選だ。が、今月どうすんだ。

その日にハローワークに向かった。のっぴきならないことが3日前に起きたひとの顔をしながら、窓口の人に相談した。

「なにか来れない事情がありましたか?例えばコロナ感染を懸念していたとか」と言われ光の道筋を感じ「懸念していました」と答えた。

すると、[のっぴきならないことがあった人用の紙]を渡されコロナの項目に強めに✔印を打った。

そして、5分ほどでまた若い職員さんが僕のフルネームを叫び「(もろもろご確認くださいの部分を終え)そして今回はコロナウイルスの影響で来館できなかったということで今回は認証されましたので一週間ごろに~」と説明を受けた。(文言は正確ではありませんがニュアンスはこんな感じでした)

コロナが魔法の呪文だった。

この場だけで使われている言葉じゃないなと思った。地域、時間を問わず全国で使われ【まかり通らないこと】が瞬時に開けゴマとまかり通る魔法の言葉だ。(言葉だ、なんてかっこつけて言えることでは僕の場合絶対ない!!ただの怠惰だ。)


お国の制度に感謝した。税金払ってて良かった。

次の環境が決まるまで、スネをかじりまくりたい。(給付対象の期間は人それぞれのようです)



※情報性が乏しく、正確性が怪しい文体なのでハローワークのホームページと、自分の給付金額がいくらか計算を即座にしてくれ助かったサイトだけでも載せたいと思います。


【ハローワークの場所を調べやすいページ】


【失業手当の給付額を即座に割り出せるサイト】


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