四季-移ろいゆく季節の中の変わらぬ狂愛-　第1.5話(表)

第1.5話(表) 季節の変わり目
　とあるワイドショウ
　　〈バラバラ殺人鬼に関する考察〉

　K県Y市で発見されたバラバラ死体についての続報です。
　先日頭部が発見され、本日2028年5月1日、遺体の身元が判明しました。
　同県同市在住の嘉川かがわ 夏野なつのさん、女性、21歳学生とのことです。

　この事件について振り返ってみましょう。
　2028年3月14日に右腕が発見され、その後一日置きに左腕、右足、左足が発見されました。
　右腕は指も切断されており、調査の結果、生きている間に指を切断、そして腕を切断した模様です。
　その後、最後に左足が発見されてから一週間後、胴体が発見されました。
　胴体は腹部を滅多刺しにされており、さらに心臓が抜かれていました。

　この猟奇殺人の犯人は、未だ捕まっておらず、犯人像に関する番組は多々ありますが、目撃証言すらない状況です。
　本日は、癲狂院てんきょういんに勤める希築きづき 千乍ちさ教授に来ていただきました。

　こんにちは。よろしくお願いします。

「はい、よろしくお願いいたします」

　猟奇殺人とでも云うべきこの事件を起こした人物ですが、教授としてはどのようにお考えでしょうか？

「そうですね。このように遺体をバラバラにする意味としては2種類あると考えます。一つは、遺体を処分しやすいように。一つは、対象の人物に苦痛を与えるために。今回の件に関しては、生きている間に指を切断していると云うことから、どちらかと云うと後者に当てはまるでしょう」

　詰まり、犯人はこの嘉川 夏野さんを憎んでいたーーと云うことでしょうか。もしくは反社会的団体に目をつけられたーーとか。

「実は、私はそう思わないのです。一見、生きている間に指を切断し、絶命した理由となる腹部の損傷も何度も切りつけている。けれどーー。ふふ、ここで私見を申しますと、癲狂院の悪い噂が立ってしまいますから余り云えませんが、少なくとも、この犯人は、夏野さんのみをターゲットにしたと思います。ですから、この犯人は野放しにしても、これ以上の殺人は犯さないーーと考えます」

　例えば、痴情のもつれーーのような感じでしょうか。

「えぇ、それに近いと思います。そして、私としては、この人物が捕まったら是非、我が癲狂院で預かりたいなと考えております」

　なるほど……あ、はい、頭部が発見された公園に、中継が繋がっているようです。

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