見出し画像

「眠り」:アンソロジー

はじめに

Twitter(X)でお世話になっているエヌエヌさん(@enuenu_game)が出店しているときいて、初めて行ってきました! そしてサークル「かざぐるま」(https://c.bunfree.net/c/tokyo36/h2f/%E3%81%84/15)さんの本を3冊購入。
買ってその日に読んだのですが、しっかりと感想書きたいなと云うところで、しばらく経ってしまいました。
文学フリマ東京36で購入したものです。
また、★ネタバレ注意★です。


新刊「眠り」:アンソロジー

眠ねむとラジオを(長月琴羽さま):エッセイ

眠れない夜にはラジオを聞くようになった、と云うエッセイ短編。
原因は「眠ることは死を連想する」と云うことには非常に共感を覚えて、ああ、同じ感覚を持っている人もいるんだ…となんだか安心に似た感覚を覚えました。最終的に行き着く先が、ラジオと云うところで、それも自分と重なるところが。実際、テレビをつけっぱなしだったり、今ならYoutubeを再生したまま寝ている…。
きっとそれは不安と云う「アウトプット」が怖いからラジオという「インプット」でアウトプットを塞いでいるんじゃないかなと自己分析してなんとなく納得しちゃいました。そう云う風に、自分の「眠り」を改めて考えてみたり。

夢の所有者(n.n.さま):エッセイ

自分も夢をテーマにシナリオを書いたことがあるので、非常に興味深く読めました。
「起きた時に夢を覚えていなくとも、幾つかの夢は必ず見ていて、それはただ忘れているだけ」と云う話は有名で、そして非常にロマンがある。
この「忘れた夢」は自分のもののはずなのに、自分のものではないと思う感覚はきっとあるだろう。実際に、覚えている夢でも「何でこんな夢見るんだろう」と思うことすらあるし。
その「忘れられた夢」は「自分の夢」なのか。でも覚えていないのだから、「あなたの夢だよ」と云われたら納得するしかない。
この物語は、さらにその夢に夢を見る男の人の話。「夢」に「夢」を見るなんて私の好きな言葉遊び過ぎて…。言葉運びも相変わらず大好きです。
短い文章だからこその魅力がありました。

眠り姫について(結城梗さま):エッセイ

「眠り姫」と題された歌の歌詞に対する考察。
自分は歌には非常に疎くて存じ上げないものだったのでひとまずググりました(笑)https://www.uta-net.com/song/221498/
歌に表れる「眠り姫」は眠らない。欲しいのはまどろみ。
絵本でよく語られる眠り姫とは違う。なぜ違うのか?
この歌は知らないですが、作者さまの考察もまた美しかったです。

眠りの国(菅江真弓さま):テーマ作品

あとがきより、ベースになった神話があるとのことですが、こちらも存じ上げず、だからこそ楽しめたのかもしれません。
神様のお告げを聞きに行った漁師町の王とその帰りを待つお妃さまのお話。
黄泉の国、夢の国。そしてお妃さまへお伝えすること。
まるで絵本のように描かれる物語は、まさに王道で、安心して読めるストーリーでした。王道も邪道も大好き!

白き夢への目覚め(n.n.さま):テーマ作品

眠れる少女が居るとされる館へ、友人ルミールとその少女を探しに向かうお話。一言で云えばそれだけなのだけれど、友人たるルミールの描写、禁忌へ向かう後ろめたさ、その中で出会う眠れる少女、そしてその少女はーー。
少女とルミールの描写は、まるで絵画が連想されるほど美しく、まさに「小説を読んでいる」と云う気持ちになりました。
(余談ですが、自分は普段ノベルゲームを作っているのですが、その場合は「視覚」が強制的に確定させられるのが良くも悪くもあると思っていて、「小説」は読み手が好きなように想像できるのがいいのかなって思ってます)
あとがきに記された、本編のテーマになったとされる「トランジ」のお話も、作者さまの知識の多さに感服しました…。

夢見の城で会いましょう(夕凪塔子さま):テーマ作品

絵本や児童書のようなふんわりとした作品。主人公ソニアは、祖母の遺した「夢見の城」にある書物と宝物を探しに行く。
城には、漆黒の主が居てソニアを案内する。書物に書いてあるものは何か。宝物とは何か。宝物を手に入れたソニアは一体何を思うのか。
短いながらも物語の王道を捉えた一作でした。

街(結城梗さま):テーマ作品

多分、ジャンルとしては「詩」だと理解しています。
昔々詩集とかも出していたなと懐かしくなり。
詩は言葉使いや短い文字列で物事を表現するので、私はどちらかと云うと感覚的に味わいます。
短いながら、ストーリーが窺える素敵な作品でした。言葉のチョイスも素敵。

インソムニア・ピューパ(五三一〇さま):テーマ作品

眠れない男の話。眠れない男が大学の警備員となり、それぞれ「虫の記憶」や「植物の覚醒」について研究している教授や学生と語り合うお話。
個人的には、自分も理学部だったので興味深い話でした。こう云う語り、好き。眠れない男の最後も、結局はーー。

四方さんは起きている(木村縦雄さま):テーマ作品

眠れない男子生徒の隣の席の四方さん。常に寝ている姿しか確認できない彼女(と思っている!)は主人公の彼を通してしか語られないけれど、なんだか可愛い。
授業中に、起きている四方さんの夢を見てから眠れるようになったなんて、彼はもしかしたら睡眠を四方さんに吸い取られていたのかも…などと思ったり。

最後に

ちょっと今回はテーマ外作品は難しかったので感想書けず…。
全体の感想ですが、アンソロジーを読むのは久しぶりで、改めて、さまざまな別の思想を持つ人たちが、同じテーマに向かって物語を作るこの「一冊の本」ってとても刺激になるなと思います。
一つのテーマであっても、複数の考え方や捉え方、表現の仕方がありますものね。すごく良い刺激になります。

また、この「眠り」は作者さまたちへの眠りのアンケートが要所要所に挿入されていて、作者さまが身近に感じられるのが良かったです。こう云う、垣間見える人間性ってすごく素敵。

いやぁ、やっぱり活字っていいですよね!
ではまた。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?