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学会参加とカラーユニバーサルデザイン(CUD)・メディアユニバーサルデザイン(MUD)

5/22(水)〜5/25(土)と広島での第97回日本産業衛生学会へ参加してきました。なのでただいま絶賛お疲れちゃんです。

今回は聞き専ではなく、ちゃんとお話もしてきました。ありがたい事にどちらも盛況で満員御礼でした。スライドはそのうちウェブサイトにて公開するつもりですが、6/17(月)〜7/8(月)にオンデマンド配信されますので、まずはそちらにてお願いいたします。


さてさて、私は学会に参加する際にこんな光学装備を持参いたします。

学会参加に不可欠な光学装備、色覚補助レンズと単眼鏡

左はおなじみ色覚補助レンズ、右はふるさと納税で購入した単眼鏡です。単眼鏡はですね、スライドの文字が小さいのじゃよ…読めないのじゃよ…読めない大きさで投影したって仕方ないじゃろ…と思いながら単眼鏡を覗くわけです。MUDの意識付けが必要ですね…。

CUDについても同様。スライドを見ていて、赤が普通の赤(RGBで#FF0000)なので色が褪せて黒文字との区別が付きづらく、目立たせたくて色を付けているのに目立たない、というか色が付いている事に気付かない。というわけで色覚補助レンズを使ってスライドをチェックするわけですが、着けっぱなしだと目と頭が疲れて痛くなってくるのですよ。なので顔に対してほぼ直角に立てる様な感じにして、赤い文字があるかも?なスライドな場合だけ上目遣いにして色覚補助レンズを通してチェックするわけです。

そもそも「なぜ色を付けるのか」という事を考えてみると、「そこに注目してもらいたいから」のハズですよね。自分が伝えたい事をより多くの人に伝わる様にするために、CUDやMUDをもっと知ってもらわないといけないなぁと学会に参加する度に毎度毎度痛感するわけです。

そして今回、これまでと行動をちょっと変えたのは、色覚補助レンズを積極的に付けたままにしました(使用状態なのか未使用状態[おでこに上げる]なのかの違いはありますが)。そうすると、すれ違う人達からは怪訝な顔はされますし、知り合いからは「それなあに?」と聞かれますので、「色覚補助レンズだよ」「普通の赤だとスライドの黒い文字と見分けが付きづらいんだよ」という話をするわけです。

それに対する反応は様々。色覚多様性やCUDの事を知っている人は「なるほど、そういう事なのね」という感じですし、知らない人はそれこそ「そりゃ大変だ」とか「いつからなの?」とか「しっかり治療しないと」とか言われるわけです。こんなところからも、もっと周知普及に頑張らないといけないなぁと思う次第なわけです。

シンポジウムで登壇する際も着けたまま登壇しました。私が話す内容の絡みもありましたので、さすがに座長の先生から「ビデオカメラが仕込まれているとか思われると問題なので、話し始める前にそれが何なのか説明して下さいね」と言われてしまいましたが、逆に周知広報の良い機会と思ってサクっと説明しました。


ちなみに、スライド資料にCUDを適用するとどんな感じになるのか。手前味噌で恐縮ですが、私が今回の発表で使用したスライドでお見せしますとこんな感じです。

文字に関するCUD

文章で特に注目させたい箇所について、赤色にするだけではなくて太字・下線を付けています(色以外の情報を付与する「冗長性」)。赤色は#FF0000だと色覚特性によっては黒い文字との区別が付きづらいため、少し明るく朱色にしています。具体的にはCUD推奨配色セットにある赤色を使うべく、CUDOが配付しているMS Office用カラーパレットにある赤色を使用しました。

グラフに関するCUD(1)

グラフについては、凡例に色だけでなく位置も記載(これも「冗長性」の付与)。またグラフの色彩はCUD色覚特性に関係なく判別しやすいよう、CUD推奨配色セットから選択しました。

グラフに関するCUD(2)

グラフの各要素のそばに「思う」「やや思う」を付記(これも「冗長性」の付与)。色の選択についてはややトリッキー。「肯定的な意見」には青系、「否定的な意見」には黄系を設定(ちなみに青と黄は反対色)。その上でなぜこの色のチョイスかというと、グレースケールにすると分かりやすいのですが、肯定が強いほど明度を低く、否定が強いほど明度を高くしているのです。

グラフに関するCUD(2):グレースケールに変換

どうでしょう?そんな難しい事をしているわけではないんですよね。「画面をグレースケール(白黒)にして見てみても、ちゃんと区別が付いて目立たせたいところが分かるかどうか」というのを目安にすると良いです。色覚特性のシミュレートなら「色のシミュレータ」をスマホにインストールしておくと便利です(ウェブ版もあり)。私は「Color Oracle」も常駐させています。

私のCUDセミナーでの配付資料をウェブサイトにて公開していますので、そちらもご覧頂けましたら幸いです。

CUDを適用するとC型(多数型)の方々にとってもさらに分かりやすい資料となるんですよ。だからCUDをやらない理由はないんだぜ!


そして、今回分かった悩ましい問題もありまして。

これは帰り際に見つけた会場案内図。片方はC型(多数型)、片方はD型(少数型・2型、私の見分けづらさのタイプ)のシミュレートです。どちらがどっちでしょう?

会場案内図:C型とD型を並べていますが、違い…あるの?

何となく写真に撮り、この画像を妻に送ったら「全然違う」とコメントがいっぱい送られてきて、SNSに投稿したら知り合いの皆さんからも「全然違う」とコメントが付いて、むしろこちらが驚きです。だって私にはこの2つは同じに見えるんですから。

答えとしては、左側がC型(多数型)、右がD型(少数型・2型)です。しかし私は別に違和感も不便も感じているわけでもないんですよねぇ。この場合は「多数の方が便利に感じている工夫(赤色で目を引く)に、私は気付けない」、つまり「多数の方が感じている便利さを私は享受できていない」という事にそもそも「気付けていない」わけです。多分そういう事がいっぱいあるんでしょうねぇ。気付けないから分からないのですが。

今回の学会の企画運営委員長の先生からはCUD等にも配慮する旨のお話を伺っていたのでどうしたんだろう?と思っていたのですが、その先生からは「運営会社と打ち合わせていたのだがそれが反映されておらず、デザインが上がってきたのが〆切直前で改善指摘できなかった」というお話を伺いました。そうなると企画運営委員会側でできる対策としては「インフォメーションはCUD推奨配色セットを使用せよ」と予め指示を出して徹底させるくらいしかできないかなぁと思ったりします。

しかし運営会社やこれをデザインしたデザイナー、あなた達は猛省しないといけませんよ。あなた達はプロなんだから、むしろクライアントに「CUDに配慮する」事を提案しなければいかない立場なのですよ。「とりあえず勉強して出直してこい!」と言ってやりたいところです。

幸か不幸か、学会の広報委員長という立場にいますので、今後に向けて何かしら考えないといけませんねぇ…。とりあえずは第34回全国協議会の企画運営委員会もCUD等に興味を持って頂けているようですので、第97回学会の企画運営委員会の情報を聞いてフィードバック、でしょうか。

それと今後も地道に長崎産保セのセミナーでCUDセミナーを実施してまいります(直近では2025年1月になるかもです)。オンラインセミナーでやる事もありますので、時々チェックしてみてください。

それ以外でもご依頼頂ければ喜んでお話に伺いますので、ウェブサイトよりお問い合わせ頂ければ幸甚に存じます。CUDについて、お話ししたいんじゃよ…じゃよ…。


オマケ

広電の路面電車の社内にて

こういう掲示、よく見かけるようになりました。今回の学会ではこの掲示の理由についての話題もあったそうです。一つは予想通り、乗客からの「サボってるんじゃない」というクレームがあるとの事。本当に恥ずかしい限りです。乗客であるあなた達だって水分取ったりするでしょうが…。

理由はそれだけでなく、「企業として『カスハラ対策に取り組む』という姿勢を従業員へ見せる」ためでもあると。それは大事ですね。

で、なぜこの写真を掲載したのか。この文字の色、私には写真だと緑色に見えるんですよねぇ。実物は赤色に見えたんですけどね。不思議不思議。

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