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【エッセイ】 夜盗虫(ヨトウムシ)

 夜な夜な畑の土から顔を出し、野菜を囓るので、夜盗虫の名を付けられたイモムシのこと。

 このヨトウムシがとにかく可愛らしさの欠片もない、でっぷりと肥え、ふてぶてしく、色もくすんだ嫌な色で、どうにも好きになれないものだ。

 とはいえ、野菜を食うは他のイモムシも同じだし、ヨトウムシは大食漢、そうは言っても大差も感じず、となれば、やはり見た目が嫌いだと、そう言うしかなさそうだ。

 トマトに大量発生すれば、実まで潜って食べるため、仕方なしに集めては、ニワトリ小屋へと持って行き、盆と正月が一緒に来たような大騒ぎ、次々啄まれるものを、胸がすくような思いで見たり、食われたトマトも一緒にやれば、卵の黄身も色濃く染まる、何やらニワトリだけが大勝利という初夏である。

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