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【随筆/まくらのそうし】 かんたろう

 かんたろう、という大きく、青いミミズがいる。

 正式には、シーボルトミミズというのだが、この正式というのが曲者で、西洋人がアメリカ大陸原住民を、インディアンと言ったのに変わりがないのだから嫌になる。

 かんたろう、こちとらこれが正式だと、主張できないのはとても空しい。

 閑話休題、このかんたろう、他のミミズと同じよう、雨が降ると道へ出る。

 カニもミミズも、カエルもイモリも、道に出るのは危ないと、覚えてくれればいいのだが、それも人の身勝手というもの、見つけ次第に草へ放る。

 しかし、かんたろうに限っては、いつでも放ればいいというわけではない。

 秋になると、かんたろう、どういう訳か谷に集まり、そこで冬を越すとい
う。

 大きくあっても、たかがミミズ、遠い谷へ這っていき、春に戻るは難儀だろうと思っても、それが習性というならば、仕方のないことだろう。

 そういうわけで、秋は谷、春は山へ行くものの、邪魔はできないかんたろう、それにつけても、このかんたろうという名前、親しみあって呼びやすく、何度でも繰り返したくなるではないか。

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