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特殊な初体験。

俺が童貞を捨てたのは19の頃である。
しかし、その初体験は特殊だった。

当時、俺は地元三重県の彼女と遠距離恋愛をしていた。

1、2ヶ月に一度、格安の夜行バスに揺られた。
一人暮らしをしている彼女の家に泊まるためだ。

はじめて家に泊まるとき、俺は一刻も早く童貞を卒業しようと彼女に襲いかかった。

しかし、初めての女性の裸やその状況に緊張した俺の凸はギンギンにならなかったのであった。

彼女の方も経験はなかったのでリードしてもらうこともなく、次回に持ち越そうということになった。

だがそれは次に会った時も変わらずしばらくの間、俺は童貞を留年していた。

4,5回目のお泊まりだろうか。
彼女の家に行く2日前、今度こそ卒業してやるぞと意気込んでいた矢先、俺の母方の祖父が亡くなった。

ちょうど彼女に会いに帰る予定の日であったが、葬式に出席することとなった。

祖父は口数が多いタイプではなかったが、小さい頃はよく将棋を教えてもらった。
祖父の家に行った時はよくお寿司を食べた。
俺が好きな赤身をたくさん食べさせてもらった。
大好きなおじいちゃんだった。

棺桶ごしに祖父の顔を見た。
昔見たときよりもやはりやつれていたが、苦しそうな顔はしていなかった。

人の死を、直に実感した。

葬式を終えた後、

俺の凸は、何故か熱を帯びていた。

動物は死を間近に感じた時、本能的に子孫を残そうとするらしい。

それは生物の本能なのだ。

それは生物の、本能なのである。

俺は親戚に挨拶をした後、バイクで彼女の家へ向かった。

俺の凸はかつてないほどに大きく、今にも爆発しそうになっていたからだ。

今日はマジでいける!と彼女に伝えると、彼女はドン引きしていた。

それでも俺はこの好機を逃すわけにはいかないと、獣のように襲いかかった。

恥ずかしいから、と電気を消した。

そして、いざ参らん、という時。

あまりの暗闇で、俺は凹を見失った。

漆黒の闇の中、手探りで凹を探すが童貞の自分には中々難しい。

まずい、このまま時間をロスしてしまうと俺の凸も流石に熱が冷めてしまう!
それが頭によぎったその時、何か声が聞こえた気がした。

「壱晟、そこやない、もう少し上や」

どこか懐かしい、聞き覚えのある声だった。

俺はその声に従い上を探すと、確かに凹を見つけた。

俺の凸はバッチリハマった。

「卒業おめでとう」

そう聞こえた気がした。

今思えば、あれは祖父の声だったのだろう。
祖父は未熟な俺について来てくれていたのだ。

俺と一緒に、いてくれたのだ。

だとすれば俺の初体験は、祖父との3Pということになる。

特殊な初体験ではあるが、俺は祖父に導いてもらったこの体験をこれからも大切にしていこうと思うのであった。

おしまい。

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