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広瀬大志「詩の教室」未提出な宿題たち

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2022年4月の記事一覧

宿題テーマ「〇〇川」

【思川】
           黒崎 水華

かなしみの色は眼にみえず
今も水面にきらめいて
「あ、」と言葉を飲み込んで
鱗に花びらが乗ると
だれかの代弁として魚影の舟になっているのでしょう

重く冷たい雨が降り注いで
この水はこんなにも荒々しく濁る
面影が浮かんでは消えてほどけます

だれかの悲しみを溶かして
海へと流れ込むので水はいつしか
涙の味になるのでしょうか

【利根川】
       

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宿題テーマ「肉体の悪魔」

【肉体の悪魔1】
        黒崎水華

眩暈は悪夢による耽溺
死へとくちづける夜更け
肉体は左右に開かれて綻びる
薔薇色に紅潮した悪魔
「愛さなければ原罪を犯していないの?」
「否、存在が既に罪の始まりだ」
顔のない皮膚が擦れて幻覚を呼ぶと
境界が触れられる度に熱を持つ
息を殺した理性が獣性に食われ
美しい悪意が緑色に燃える

【肉体の悪魔2】
            黒崎 水華

(愛に擬

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宿題テーマ「睡眠」

睡眠1
              黒崎 水華

Minervaの羽音が訪う窓辺
寝室の部屋には死神が棲む
(眠っているのは誰?)
顔のない怪物はわたしたち
そして羽根のない梟は貴女

白い睡蓮が花咲く庭で佇む
夜半、秘密めいた悪意の中
しずかに蠢いていた下腹部
胸部を左右に開いては覚醒
(眠らないのは 誰?)

寒い冬の朝、羊が皿の上で待つ
あなたに瓜二つの顔を解凍した

睡眠2
       

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教室の宿題(埋没編)

  黒い血液    黒崎 水華

食材に手を伸ばして真っ二つ
柔らかな肉から流れ出る黒い液体
手を染める黒
夥しい黒
現実を侵食する黒

贖罪に手を伸ばして真っ二つ
皮を剥いた果物から滴る黒い液体
手に触れる黒
瑞々しい黒
現實を侵蝕する黒

異形のめ            黒崎 水華

墨汁 したたる 半紙の上 夜の血液 混入する
長い髪が邪魔をする」 古書の森を游ぐ紙魚
いつも黒い血が滴って邪

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