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死を意識する生き方:「日日是好日」を読んで。

読了後の格別な清涼感。
目を閉じて、お抹茶を飲み干し、ほっと一息ついた時、頬に軽い風を感じ、せせらぎの音が遠くに聞こえる。あのカサカサとした音はなんだろう?虫が葉の間を歩いている?いや、風が木の葉を揺らしている?
外の世界に想像を巡らせる。内に居るが、外の世界と繋がっている。
なんという安心感。
ああ、私はここにいて、ここに生きている。世界と共に生きている。それだけで満たされる。なんという素晴らしい日だろう。

そんな気持ちにさせられた一冊。

乳がん告知を受けた時、死というものが皮膚にひたっと張り付く恐怖を感じた。その後、フルコース治療を受け、様々な心の葛藤を経て、なんとか手に入れたキャンサーギフト。それが、まさに、”私は今、ここに生きている。”という感動だった。
”今、ここ”というのは、この肉体が存在しているこの瞬間のこの世界。
それを実感できる人はどれだけいるだろう?

”死なないのが当たり前”みたいになった現代。
生きている実感も薄まってしまったようにも感じる。

もっと、もっと、と、人は何を求めて、急いでいるのだろう。

そんなことを考えながら、コーヒー豆を挽き、ゆっくりとお湯を注ぐ。
お湯が滴り落ちる姿をじっくり観察し、その先のコーヒー粉がふっくらと盛り上がるのを眺める。芳ばしいアロマにうっとりとし、間を置いてから、再度、お湯を「の」の字に注いだ。





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