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ランナーの話「ラブさん」後編

2012年秋、ラブさんのフェイスブックに、長女のウェディングの投稿が載った。

バージンロードを父親の代わりに長男がエスコートをしていた。最愛の人が旅立ち、4年が経っていた。私は、ラブさんの子供たちに会ったこともないのに、まるで親戚のおばちゃんみたいな気持ちになった。

ラブさんの人生に、良い事ばかりが続く事を願った。

だけど、ラブさんは故障で走れなくなってしまった。毎年欠かさず走っていたNYCマラソンも苦渋の決断でキャンセルした。

”神は乗り越えられる苦難しか与えない。”と言うけれど、あんまりじゃない?

と、文句が出た。ラブさんも相当、苦しんだと思う。だけど、彼女は大好きな走る事、NYCマラソンに、地元のエイドステーションのボランティアとして参加した。そこで、彼女は多くのランナーにあの太陽の様な笑顔を振りまき、元気づけただろう。彼女は、真から走る事を愛しているのだ。ランナーズワールドを愛しているのだ。

ラブさんは、諦めず、辛抱強く、リハビリ、筋肉トレーニングをし続けた。そこには、ラブさんの双子の息子さんの一人がよく登場していた。そして、彼は将来、ヨガインストラクターになる。

2年間という時間を経て、ラブさんは復活した。また、ラブさんのNYCのランニングレースの投稿が始まった。ラブさんは、毎年、同じレースに出る。それはまるでその毎年のイベントを誰かと共有しているかの様だ。そして、その写真にはその時期の自然の景色が写っている。ラブさんの写真を見て、ああ、サンクスギビングデーの季節だなぁ、なんて私は知る。

もう一人の双子の息子さんが、ドクターになった。父親の病気がきっかけで、医学の道を進もうと思ったと聞いた。

ラブさんの子供たちは、見事に成長し、羽ばたいている。

そして、ラブさんは、変わらず、NYCのレースに出ている。

(おわり)


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