見出し画像

可哀想って言うな。③

最初から読みたい方はこちらから↓

流石に、がん告知されたら、不幸の当事者ですよね?
それでも、私は、なんとかポジティブに考えようとしたんです。
早期発見されてラッキーじゃん。
乳がんの10年生存率平均は80%なんだから大丈夫。

でも、検査していったら、どんどん、悪い結果ばかりが出まくったんです。
まるで、必死にポジティブに考えようとする私を打ち砕くように。
3割弱しか当てはまらない方の進行性の高いがんと判明したり、95%以上は大丈夫と言われる検査結果で、残り5%の方に入ったり、そんなことが続くと、自分は絶対、生存率80%の残り20%に入るだろうって思えてきて、どんなに頑張って、辛く苦しい治療してもどうせ死ぬんだって思うと、治療自体したくなくなっていきました。
死がヒタヒタと近づく感覚、恐怖と絶望ですよ。
同時に、病院側からは、どの治療にするか決めて欲しいと差し迫られており、追い詰められるような気持ちもあり、気が狂いそうでした。

そんな状況の時、ニューヨークに母と兄が日本から見舞いに来ていて、側にいたんです。アパートの部屋で、最悪な検査結果を聞き、それを側にいる家族に早口で話し、その後、私は一瞬、茫然自失になりました。すると、ソファーに座っていた母が、私の下半身をすがりつくように抱きしめて、言ったんです。

「可哀想に。」と。

その言葉に、私は急に気分が悪くなり、直後、恐ろしい言葉が口から出そうになりました。
「そう思うなら、代わってよ。」と。

ホラー映画の幽霊が発する言葉そのものです。
私は自分で自分の頭に浮かんだ言葉に背筋が凍りつき、急いで、母の手を振りほどき、「ちょっと考えるから黙っていて。」と、突き放しました。
そうじゃないと、私は、母にどんな恐ろしい言葉を発するか分からなかったから。

ちなみに、私は、乳がん患者会のサポートミーティングに定期的に出席しているんですが、多くの患者さんが、言われて嫌だった言葉、腹が立った言葉が、「可哀想」です。

可哀想なんじゃない。今、大変なんだ。
あなただって、そうなるかもしれないんだよ。自分はならないと思い込んでない?災害だって、病気だって、誰にも起こりうることなんだよ。
今、大変だから、手を貸してよ。今度、あなたが大変な時には手を貸すからさ。なんでそれじゃダメなの?どうして、「可哀想」って言うの?
心の中で思っていてもいいよ。でもさ、言うなよ。
可哀想って言うな。言われたら、本当に、可哀想な人になっちゃうから。
私を可哀想の沼に沈ませないで。

私が被災者、がん患者(一部のだろうけど)気持ちを代弁すると、こんな感じかな。

最後に、私が一番、衝撃を受けた「可哀想」エピソードをシェアしましょう。

私が保護犬をアダプトした時、レスキュー団体から、保護犬取り扱いハンドブックみたいなものを渡されました。
そこにはこう書かれていました。

”アダプトした犬を可哀想だと思わないで下さい。あなたが、その子を可哀想だと思い続ける限り、その子は、可哀想な犬という檻から出られません。
その子はもう可哀想な犬ではありません。もう、あなたと一緒にいるのだから。その子は幸せな犬なのです。”









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?