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私と保護犬くるみの物語:わたし㉖”犬も赤ん坊も泣く(鳴く)のが仕事”

くるみが生まれて9ヶ月、うちの子になって7ヶ月が過ぎた。

あんな言う事聞かずのガウガウ仔犬が、今ではかなりのお利口ちゃん。食い意地レベルがすごいのは変わらずだし、その延長上にある拾い食いも、まだまだ目を光らせてないといけないレベル。だけど、ほとんどのコマンドを理解し、出来るようになっているから、ママちゃんは、日々、「Good girl!」を連発している。

だけど、ひと月ほど前から、アパートの廊下を誰かが通ったり、ドアの開け閉めの音がしたりすると吠える様になった。それ以前は、廊下で何が起こっていてもお構いなしだったのだが、これはきっと犬の成長の過程では自然な事なのだろう。つまり、警戒心が芽生え、且つ、家を守る本能がで始めたのかと推測する。

その”やる気”はありがたい。だが、賃貸アパートの住人的には、「ウォン!」と腹から出す響くホーンは、ちと、マズい気がして、「しーっ」と口に人差し指を立て、静かになったら撫でるなどをして、”静かにしていた方が良いことあるよ”って教えているのだが、中々、うまくいかない。廊下で物音がすると、反射的に警戒音を出すって感じなのだ。

「しんご先生んちのわんちゃんはどうしてる?吠えない様に躾られた?」

先日、獣医であり友人でもある、しんご先生が遊びに来たので、聞いてみた。

「んー、ダメだったね。犬の本能でもあるし、難しいよね。うちの子達は、ちょっと吠えさせて、満足して、おしまいって感じにしている。吠え足りなくって、ゴニョゴニョ言っていることあるけど。(笑)」

「それぞれの犬の能力の限界が違っていて、その子はその子なりに一生懸命、頑張ってるけど、それ以上やれっていっても無理なことってあるのかな。ゴニョゴニョ言っているのは、きっと、精一杯、我慢してるんだよね。」

そんな会話をして、ハッとしたことがある。

我が家では、吠えない犬にした方が良いと思って、ゴニョゴニョ言うのも、キュンキュン言うのも、「しーっ!」って黙るように躾をしていた。でも、私たち人間がコミュニケーション方法として言葉を使う様に、犬の「吠える」「鳴く」もコミュニケーション方法のひとつなんだよね。その方法を全て「ダメ」とするのは、どうなんだろう?

よくよく考えてみる。そして、想像してみる。

くるみのキュンキュン、クンクン、ゴニョゴニョは、私たち人間が会話している程度の音量でしかない。廊下に向かって、吠えるのも、ずっと吠え続けているわけではない。くるみなりに、私たちに「しーっ!」と言われるのは”よくない事をしているからダメ”とは理解はしているように思える。

でも、くるみからしたら、「あたち、一生懸命、家族の一員として、おうち守っているのに、なんでダメなの? ”廊下に何かいるよ。気をつけて”、って伝えているのに、なんで、そんな怖い顔するの?」って感じなんだろう。

そんなくるみに、「なんで分かんないの?うるさいとアパート追い出されちゃうかもしれないんだよ!そうするとくるみだって困るんだよ。」と、叱るのはいかがなもんだろうか? それこそ叱っている私の声の方がうるさかったりしてね。(>_<)

ふーっ。ため息が出る。クンクン、キュンキュン、グニュグニュまで止めさせようとしていたのは、明らかに、私たちのエゴかな・・。じゃぁ、甲高い「ウォン!」は? やっぱり、ご近所迷惑なレベルだろうか?

このアパートには犬を飼っている人がたくさんいるが、そんなにみんな吠えることのない良い子ちゃんばかりなのだろうか?

また、隣には赤ちゃんと子供がいる。子供は非常に大人しい子かもしれないが、赤ちゃんが全く泣かないなんてことは流石にないだろう。だけど、全然、泣き声は聞こえない。でも、子供が廊下ではしゃいでいるとその声はばっちり聞こえる。くるみの声も廊下にいたらかなり聞こえるのは間違いない。

そう言えば、真下の部屋も犬がいて、その子は私たちが廊下を通ると、吠える。でも、私たちが部屋にいて、下の犬の声が聞こえることは一度もない。つまり、部屋間同士では防音がちゃんとしているのかもしれない。

考えてみたら、マンハッタンに住む私たちの部屋は、いつも、パトカー、救急車のサイレンやら、犬の吠える音、イカれた人間の怒鳴り声が窓越しに聞こえる。きっと私たちの部屋の左右上下は同じ程度の騒音具合であろう。

うーむ、私たちが日本人特有の周りに気を使い過ぎなのかな?

考えているうちにくるみのお散歩の時間が来た。首輪をつけて、廊下に出る。エレベーターを待っていたら、お隣さんが、降りてきて、くるみに気づき、近寄って、ナデナデしてくれた。

「Hello, Kurumi, you are such a cute dog!!」(ハロー、くるみ、あなたはなんて可愛いの!」

くるみも短い尻尾をブンブン振って、甘えている。

「そう言えば、くるみが吠える音、聞こえるでしょ?ごめんなさいね。」

この機会に謝っておく。

すると、お隣さん、驚いた顔で、「全然、大丈夫よ。謝る必要なんてないわ。聞こえたとしても、わたしは全く気にしないもの。」と、言ってくれるではないか。

うう、優しいお隣さんで良かった。そして、そこでわたしも思う。

きっと、わたしも彼女側の立場だったら、同じセリフを言う。

だって、赤ちゃんも犬も鳴くのが当たり前。それにイライラしていても仕方ないじゃない。

彼女もそんな風に考えてくれているんだろう。ありがたいことです。

ご近所さんに感謝して、でも、甘え過ぎないように、これからも、くるみともっと上手にコミュニケーションとっていきます。



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