「ショートストーリー」:空の森①
無数が何やら安堵した様な顔で自分の部屋に戻っていったので、私は、テーブルの上に置いてあるiPhoneを取ろうと左手を伸ばした。
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その拍子に、右手にあった猫じゃらしがひばりに奪われた。美空ひばりに似たこの猫は8歳という、そろそろシニア猫に差し掛かったはずだが、非常ににすばしっこい。数週間前にアダプトした時は、”あたしゃ、人生に何の期待もしてませんよ。”といった風に、ケージの中で口をへの字にして身動きひとつせず、どっしりと構えていたとい