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最後の猫

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階段の上り下りなんてしたことがなさそうな
覚束ない足取りと冷えた体

ふらふらしながらもなんとか水入れの前に座り
あの子はゆっくりと水を飲んでいた
水を飲むのも鼻が詰まっていると大変で
鼻詰まりがひどくなったばかりの頃は
水を飲むことも嫌がっているようだったが
そのうちあまり苦しくならない飲み方のコツをつかんだのか
食べることは拒否していたけれど
水はちゃんと自分で飲んでいた

仕事中に急変したらどうしよう?
心配でおかしくなりそうだったが
相棒猫にあの子を見てやってねと頼んで家を出た

この日も何度も仕事の合間に見守りカメラを見る
見て何かあったからと言って家に帰れるわけでもないけれど
やっぱり大丈夫なのか気になって仕方ないから
場所を変えつつ寝転がる様子が見えて
生きていてくれることに少し安心する
何度目かのカメラチェックの時に
それまでは1階にいたはずなのに
2階のカメラに写っていて思わず「何してんの!」と
口に出してしまった
朝、そんな元気はもう全く残ってない感じだったのに
階段から落ちたらどうするのか
不安で心配で仕事を放りだしたくなったが
そんなことも出来ずに何とか終業時間まで耐える間に
あの子は無事に1階に降りてきているのが分かった

慌てて帰宅すると留守の間に2階へ行ったことなんて
まるでなかったことみたいに椅子の下で横になっていた
トイレの外とお尻の毛にうんちが一つずつ
あまり食べれていないのにちゃんと出たね、えらいねとほめる
吐き気止めを飲んでいるからか嘔吐はほとんどないし
下痢もしていない
内臓は頑張って動いてくれているのに
そのことがかえって悲しい

夜の給餌はますます嫌がって
あまりあせらずゆっくりやるようにしたつもりだったけど
のみ込めた量はかなり少なかった
吐かなければ給餌はした方がいいとか
どうしても嫌な時は舌でシリンジを押し戻してくるとか
強制給餌に関する経験談などで見た言葉が
浮かんでは消えていく
いつまで続ければいいのか
続けてもいいのか
自分ではわからなくなりつつあった


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