最後の猫
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今日が何日で何曜日なのかわからなくなることがある
何月何日何曜日だろうとどうだっていい
あの子がいた時に戻りたい
でもどうしても戻ることが出来ないから
頭が、時間が過ぎることを拒否している
なんとなく生活が続いている
でも不意にあの子がもういないという現実に引き戻されて
頭の中に手を入れてかき回されたような
ぐちゃぐちゃな気分になる
あの子が自分で食べなくなってから
相棒猫はちょっと様子が変わってきていた
時々横取りされながらごはんやおやつを食べていたのに
どうして一緒に食べないんだろう?
いつもあまり自分が食べたことのない匂いのするごはんを
あの子だけもらっているみたいだね…
何故いつもズーズー音を立てているのかな?
くっついて寝たり寝る場所を奪い合ったりしていたのに
この頃はどうして一人で寝ようとするんだろう
相棒猫はビビりで繊細なところがあるから
今までとは違う状況にかなり戸惑っていたと思う
活発でわがままなあの子と違って
あまり自己主張をせず
それがストレスになって膀胱炎や
舐めすぎによる皮膚炎を起こすようなおとなしい子だったのが
少しだけ鳴いて訴えてくるようになった
あの子を見つけてうちの子にと名乗りを上げて
もう1匹一緒にと言われて2匹譲渡してもらうことを決めたが
どの子にするかは全く決めていなかった
多頭飼育崩壊からの保護でみんな「一族」
毛色や大きさに違いはあってもどの子もみんな可愛い
特にこの子を、と見た目で選ぶのではなく
「あの子と仲良くやっていけそうな子」
それだけを条件にあの子たちが保護されていた家に会いに行き
一緒のケージの中でくっついていた子を
あの子の相棒猫として譲渡してもらうことに決めた
性格は正反対だったが
最初の印象通り2匹は仲良く
いつも可愛い寝姿を見せてくれたり
ちょっと小競り合いをしてはべったり毛づくろいしあったり
見た目で選んだ子じゃなくても可愛いうちの子に変わりなくて
2匹でいるのがいいんだよと話しかけていたのに
あの子はまっすぐ立つことも出来ず
相棒猫にちょっかいを出すこともない
相棒猫は2階から降りようと階段の途中で立ち止まり
手すりの隙間から顔を出して何を言いたいのか
小さな声で鳴きながらこちらを見ている
あの子が食べなくなってから相棒猫も食欲が減退気味だ
この子は今の状況をどう思っているのか
どこまで理解しているのか
近いうちにあの子がいなくなって
自分一人ぼっちでお留守番をしなきゃいけないかもしれないこと
多頭飼いされていた時も保護された時も
うちに来てからだって長時間一人ぼっちになったことがないのに
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