見出し画像

私の推し本 「フラジャイル 病理医岸京一郎の所見」

原作が草水敏さん、作画が恵三朗さんで、月刊アフタヌーン(講談社刊)にて、2014年8月号より連載中の漫画です。
病理医というなじみのない医者が主人公です。だからこそ生まれた、いままでにない物語が、この漫画の一番の魅力だと思います。

どこに惹かれたのか

メインの舞台は病理科ですが、様々な科の医師、多くの患者・患者の家族、介助士・調理師まで、あらゆる人々が登場します。
一度しか登場しない医師や患者であっても、医療従事者を志した理由、仕事に対する考え方、病気との向き合い方、どう生きたいのか、大切にしているもの、家族への思い等、丁寧に描写されています。
キャラクターに緻密な設定がなされているため、漫画のキャラクターとは思えないほど、ひとりひとりが生き生きとしています。

2016年にフジテレビ系にて長瀬智也の主演でテレビドラマ化されていて、これを観たのがきっかけで漫画を読み始めました。
実は、ドラマを観てすぐには漫画を読みませんでした。というのは、岸先生のイメージが、ドラマと漫画であまりにも違っていたからです。
ですが、読み始めると、そんなことはどうでもよくなっていて、漫画の岸先生にすっかり惚れ込んでいました。
不器用な優しさが良いなと思います。私は岸先生のような人が実際に居たら、一緒に仕事をしてみたいです。

『フラジャイル』を通じて病理医という仕事にスポットがあたり、理解が広がるのは、その世界を覗かせてもらった僕にとってもうれしいことです。ですが、『フラジャイル』は病理医紹介漫画ではありません。僕がこの作品で書いているのは「誇り」であり、信念やプライドを持ち、自分に正しくあろうとする人たちです。

出典は、原作者・草水敏さんのインタビュー記事より。下にリンクを貼っています。

自分を曲げてしまうことってありますよね。そのほうが都合がよかったり楽だったりするから。
でも、それを後悔する人も多いのではないでしょうか。
わがままとは違う意味で自分を通すことは、とても難しく大変なことだけど、素敵な生き方ですね。

病理医が主人公の漫画ですから、いろいろながん患者さんが登場します。ほとんどが私が経験したがんより重い症状の患者さんです。
がん経験者であることも、この漫画に惹かれる理由の一つなのかもしれません。
がんを経験したから、読みたくない、辛くて読めない方も、いらっしゃるとは思います。


病理医とは

私は乳がんの治療経験があるので、それを例にとって書いてみますね。

視診や触診、レントゲン(マンモグラフィ)や超音波(エコー)検査で乳房や脇のリンパ節に何かあると分かりました。
それが何なのか分からなければ、どんな治療をするか決められません。

乳房は、局所麻酔を行い超音波検査で確認しながら、病変の一部組織を注射針より少し太い針を使って採取しました。
脇のリンパ節は、病変に細い針を刺して注射器で細胞を吸い出しました。
この組織と細胞を顕微鏡で観察して、良性か悪性(がん)か診断を下すのが病理医です。

病理医は、患者の体の細胞を顕微鏡で観察することで、がんだけでなく、あらゆる病気の診断を行っています。
病理医の診断によって、手術をするのか、どの薬を使うのか、など、治療方針が決まります。
もし病理医が間違った診断をすれば、適切な治療ができないだけでなく、がんや重い病気の場合は生死に関わります。

間違うことが許されない大変重要な役割を担っていながら、その存在を知らない人もいます。
患者に会うこともなければ、病理医の診断のおかげで病気が治ったと感謝されることもありません。

重い責任を背負う病理医ですが、その仕事や、臨床医との関係を描いた漫画はこれまで存在しませんでした。加えて、病理医は顕微鏡とプレパラートを扱う仕事なので、汚染対策着である白衣を日常的に着る必要がありません。白衣を着ない医者が出てくる医療漫画は、それだけでも新鮮だな、とも思いました。

出典は、原作者・草水敏さんのインタビュー記事より。下にリンクを貼っています。


病理科メンバー紹介


岸 京一郎(きし けいいちろう)

壮望会第一総合病院・病理科長。
もとは臨床医であったが思うところあって病理医に。
仕事中に白衣を着ない理由は?着なくても差し支えないだけではないようです。漫画を読み進めていくと見えてきます。
コミックスの帯に「極めて優秀、ただし変人。」と書いてあって、岸先生を端的に表現していると思いました。

病理医としての腕は認められていて、病院内で岸先生を頼る医師も大勢いるのですが、近づきたくないと思っている医師も多いようで。
岸先生が変人と言われるのは、仕事にしても何をするにしても、確固たる信念を持ち続けていて、ぶれないからだと思います。
これは、なかなか、できることではないですよね。それができる岸先生は、他人から見れば変わった人なのかもしれません。

岸先生の魅力は、「10割の診断」と公言できる誇りを持って仕事をしているところ、自分に課せられた責任を果たすために前に向かって進み続けるところ、時おり見える人間味あふれる一面、でしょうか。

・・・何もわからず
何もできずに 人が死ぬ
それを 少しでも 減らしたい だけです

コミックス第20巻116ページ

岸先生の思いは、医療を担う人たちの、患者さんたちの、そのご家族や関係者たちの、そして、すべての人たちの、願いだと思います。



宮崎 智尋(みやざき ちひろ)

人が良く頑張り屋の新人医師。
ある患者の診断に疑念を抱いたことがきっかけで岸先生と出会い、彼の仕事ぶりに手応えを感じ病理医を目指すことに。
容赦ない岸先生の指導にべそをかくこともあるが、病理医として日々成長し続けている。

彼女の魅力は、厳しい状況にあっても簡単には病理医の道をあきらめずに立ち向かっていくところでしょうか。
彼女の印象からすると、ちょっと意外な仕事の合間のリフレッシュ方法の設定が、気に入っていたりもします。


森井 久志(もりい ひさし)

臨床検査技師。
何人分もの仕事をこなす(岸先生についていけず技師が補充されてもすぐにやめてしまうので彼ひとり)凄腕の技師で、岸先生からの信頼も厚い。
ある事情から臨床検査技師の範ちゅうを超えた医学の知識を持っている。

森井さんの魅力は、岸先生や宮崎先生のことをよく観ていて気遣い・心遣いができたり、言わなくてはならないことを上司に対しても速やかに進言できたりするところでしょうか。


愛を込めたファンアート

ファンアートは私の感想のようなものなので、過去に描いた絵の中からお気に入りを載せておきます。

岸先生の休日

仕事は全力投球だから休日はボーとしていそう

うたた寝

いつも頑張っている宮崎先生にお疲れ様と言ってあげたい

病理科メンバーで桜を観に行ったら

舞う花びらにはしゃぐ宮崎先生とちょっと冷めた感じの男性陣

この記事が参加している募集

#マンガ感想文

20,159件

#推しの青年マンガ

148件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?