朝ドラ「おかえりモネ」の気象解説/気象予報士試験の話
※写真は最近撮ったアガパンサスの花です。
先週(6/21〜6/25)、第6週の放映でモネちゃんが気象予報士試験(1月と8月の年に2回試験がある)を初めて受けました。ドラマでは情報不足と思いますので、その内容を少し紹介します。
合格率が5%程度なので試験は難しいと言われていますが、試験内容が非常に難しいというわけではありません。但し、しっかり勉強しないと合格できません。合格者の平均受験回数は3回〜5回が多い(合格までの受験回数分布の中央部)と言われていますが、6回以上受験して合格した強者も結構います。あきらめず長期間の勉強を継続して目標突破する精神力は凄いと思います。ちなみに私は3回目の受験で合格しました。工学部卒の理系人としては2回目までには合格したかったのですが、歳のせいということにしておきます。
菅波先生の気象予報士試験突破計画は、2回目の受験(15年8月)までに学科試験2科目を合格して、3回目の受験(16年1月)で実技試験を合格というものでした。学科試験は合格すると1年間は試験免除になるため、これを利用して2回目の受験後は実技試験の勉強に専念できるようにしようという作戦です。実際に実技試験のみの受験者の合格率は20%近くと高くなっています。尚、学科試験に2科目合格していないと実技試験は採点してもらえません。
朝ドラの試験会場のシーンでは若い人、若い女性が多くいました。しかし、実際の受験者は、年配の男性が多く、女性は少なめです。調べてみたら女性の割合は15%程度です(若い人はそのうちの半分くらい)。また、合格者数は20代が最も多く、30代、40代、50代と減っていき60代は1番少数(受験者数は多い)です。そういう意味では60代で合格した私はなかなかのものかな?ちなみに10代の合格者数は60代と同じくらいで、中学生で合格する人もいます。
一般的に、試験を受ける人は通信教育や気象予報士受験塾に入って勉強します。私も実技試験は通信教育を受けました。モネちゃんのように身近に教えてくれる先生はなかなかいませんから。菅波先生はモネちゃんに教えるために自分も勉強しているので、一緒に受験すれば合格するかもしれませんね。
今のモネちゃんの実力からすると、少なくとも6回以上の受験が必要と思いますが、ドラマの都合で早めに合格するようです(受験生のドラマではないので)。
(付)一人前の気象予報士になるには、気象予報業務を10年間くらい継続担当する必要があるそうです。
【補足】
試験科目やその内容等を以下に記しておきます。興味のある方はご覧ください。
1.試験科目
学科試験2科目(一般、専門)と実技試験(1,2)があります。学科試験は5択のマークシート(15問)、実技試験は筆記試験です。学科試験は1度合格すると1年間は免除となります。従って、受験者はまず学科試験2科目の合格を目指し、それから実技試験合格を目指します。
また、合格基準は学科試験が11問正解、実技試験が1と2の合計で70%ですが、試験毎の難易度により基準が変わります(学科試験が10問、実技試験が65%程度になることもある)。
2.学科試験(一般)
学科一般は、大気の構造、運動、熱力学、放射、降水現象、気象現象(対流、風、大雨、台風等)、気候変動等の大学理学部で勉強するような内容と気象業務法という法令です。理科系の人は独学で理解できますが、文科系の人には先生が必要と思います(私は「一般気象学」という本で独学しました)。計算問題は1〜2問しか出ませんので計算問題が苦手な人でも合格可能です。法令は覚えるだけで簡単です。15問中4問は法令ですからここでしっかり得点することが大事です。菅波先生も法令でしっかり得点することを狙っていましたね。
3.学科試験(専門)
学科専門は、観測、数値予報、各種天気予報、予報精度の評価、台風、各種気象現象、各種注意報・警報等です。気象業務に関する実務的に必要な専門知識ですね。この科目は暗記力が重要なのですが、「らくらく合格〜」のような市販本は内容が不足気味(内容が古く間違いも散見される)なので気象庁のHPや過去問もしっかりチェックしないといけません。
4.実技試験
実技試験は、実技1と実技2の試験があります。試験時間はそれぞれ75分なのですが、試験時間内に問題を終えるのが結構難しい試験です。それぞれの試験とも図とグラフが十数枚もあり、その図やグラフから色々なことを読み取って答える試験です。ドラマの中で試験開始と同時に受験生が試験の問題用紙を切取っていたのは、問題用紙から図やグラフの用紙を切り離していたということです。
図◯において、◯◯が◯◯となる理由を30字程度で述べよ、というような問題は問題文を読みながら答えの文章がイメージできるくらいでないと間に合いません(考えている時間はありません)。図から低気圧の速度を定規を使って読み取るような問題もあります。
また、試験問題は温帯低気圧、台風、梅雨、冬型、寒冷低気圧等の日本の各種気象に関したものです。
実技試験は慣れが必要なので、過去問を10年間分×3回以上やらないと合格出来ないと一般には言われています。
興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか?質問等あれば気軽にどうぞ。