たぶん分かり易い!気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書の超要約版(4)観測事実(海洋の状況)
【海洋の状況に関する報告書の要点】
1971年から2010年の40年間において、気候システムにおける正味のエネルギー増加量の60%以上は海洋の表層(0〜700m)に蓄積されており、約30%は海洋の700m以深に蓄積されている。
1971年から2010年において、海洋表層(0〜700m)で水温が上昇したことはほぼ確実。
海洋は排出された人為起源の二酸化炭素の約30%を吸収し、海洋酸性化を引き起こしている。
海面付近の海水のpHは工業化時代の始まり以降、0.1低下している(高い確信度)。
【解説】
地球温暖化によるエネルギー蓄積量のうち90%以上は海洋に蓄積されています。これは、海洋への熱の蓄積が無ければ大気の気温がもっと上がっていたということです。空気に比べて水は熱容量が大きいので、温度は変化し難いですが、それでも90%以上が海に蓄積されているとなると海が心配です。
海洋表層で水温が上昇したことはほぼ確実、の「ほぼ確実」とは10段階の可能性表現の一番上で99〜100%の確率です。
海洋表層の水温上昇に関しては、1971年から2010年の期間において海面から水深75mまでの層で平均0.11℃/10年[0.09〜0.13℃/10年]昇温したという報告があります(水深700mまでの層で平均0.015℃/10年)。[ ]内の数値は90%信頼区間
また、水深3000mより深い深海については、南極海で最も顕著な水温上昇が確認されています(1991年〜2005年の期間の昇温割合が0.03℃/10年、世界の海の平均昇温割合は0.01℃/10年をやや下回るレベル)。
大気中へ放出される二酸化炭素のうち約30%は海洋に吸収され、その結果、海洋のpHは0.1下がって(現在のpH≒8.1)酸性が進行しているようです。
【補足】
海洋表層の水温上昇は確かなようですが、大気と同様に海洋の水温測定についても、観測頻度・範囲の時代による差、観測方法の歴史的変遷、観測機器の管理問題等の誤差要因があるようです(日本気象学会編「地球温暖化」より)。
海洋の水温上昇や酸性化によりサンゴ礁をはじめ生態系への影響が懸念されています。水深の浅い海域は水温上昇しやすくなりますので特に注意が必要と思います。また、海面上昇の影響もありますが、それは将来予測の中で扱います。
次回は降水の状況と雪氷圏の状況です。
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