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たぶん分かり易い!気候変動に関する政府間パネルIPCC第5次評価報告書の超要約版(6)観測事実(温室効果ガスの状況)

【報告書の要点】は報告書記載内容から重要な文章をそのまま引用。【解説】は報告書に記載されている内容を用いて要点を解説。【補足】は報告書以外の情報も含めて私が必要と思う情報を記載。


【報告書の要点】

二酸化炭素濃度は、第一に化石燃料からの排出、第二に正味の土地利用変化による排出により、工業化以前より40%増加した。

温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)の大気中濃度は、人間活動により1750年以降全て増加している。

合計放射強制力に最大の寄与をしているのは、1750年以降の二酸化炭素濃度の増加である。

【解説】

1750年〜2012年の間に放出された二酸化炭素のうち、2/3は化石燃料の燃焼及びセメント生産、1/3は森林伐採及び土地利用の変化と見積もられています。

温室効果ガスの2011年の濃度は、二酸化炭素=391ppm、メタン=1803ppb、一酸化二窒素=324ppbであり、工業化以前の水準よりそれぞれ40%、150%、20%高くなっています。

1750年以降に増加した温室効果ガスのうち、放射強制力(下記補足参照)に最も寄与度の大きいガスは二酸化炭素(寄与度=64.3%)で、以下、メタン=17.6%、ハロカーボン(フロン)類=12.7%、一酸化二窒素=6.0%となっています。また、ハロカーボン類は排出規制により、減少傾向になっています。

【補足】

セメントは主原料である石灰石(CaCO3)を製造工程の焼成過程で酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO2)に分解するため、二酸化炭素が発生します(燃料の燃焼で発生する二酸化炭素=40%、酸化カルシウムの分解で発生する二酸化炭素=60%)。

温室効果ガスは、人為起源の増加ガスとして二酸化炭素、メタン等の影響が述べられていますが、実は最も主要な温室効果ガスは水蒸気です。大気成分における温室効果の寄与度は、①水蒸気(含雲)=67%、②二酸化炭素=21%となっています。尚、水蒸気は人為起源ではないので、放射強制力に影響する温室効果ガスとして扱われていません。

(豆知識)温室効果ガスは悪者扱いされていますが、もし、温室効果ガスが無ければ世界の平均気温は-19℃程度になります。世界の気温がまあまあ快適な温度(15℃程度)であるのは、実は温室効果ガスのおかげでなのです。

放射強制力とは、何らかの要因(例えば二酸化炭素濃度の上昇)により地球気候系に変化が起こったときに、その要因が引き起こす放射エネルギー収支の変化量(W/m2)のことです。例えば、二酸化炭素濃度の増加により増える放射エネルギー量(正)、火山噴火の火山灰により減少する放射エネルギー量(負)等のことです。

1750年以前の二酸化炭素濃度は280ppmで、2012年の濃度が393ppmなので、393÷280=1.40で40%増となっています(2018年の濃度は408ppmです)。二酸化炭素は人為起源の温室効果ガスの中で最も主要な気体であり、かつ削減可能であることから削減計画、目標が議論されています。

ppmは百万分の一、ppbは十億分の一で、1%=10000ppm、1ppm=1000ppbです。

次回は、気候の極端現象についてです。

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