ポケカGBから始めるモータウンビート品評会

旧裏成分をちょっとだけ補充しつつ、リンクで内容をかさ増してラクさせてもらう記事。


現実から逃避するためクソ忙しいですが書いていきます。


まずは導入。



旧裏界隈の実家。自分はGB2しかやったことないですが、アクアクラブのマリの泣き顔とセットで脳裏に焼き付いている神BGMです。


作業用に丁度いいため子供時代ぶりに垂れ流してるんですが、大人耳でちゃんと聴き込んだところ、この曲サビのベースラインがモータウンビートじゃん!というアハ体験をしたので(1:25~)、今回記事にしていきます。



ちなみにこれ以降旧裏の話は一切しないので、タイトルからその辺を期待されてる方はブラウザバック推奨。





そもそもモータウンってなに?という方に向けて5秒で説明すると、デトロイトの通称名(Motor Town)を冠した、米国発祥のレコードレーベルのことです。それ以上はめんどくさいのでWikipedia先生に丸投げ。




というか自分も歴史的背景は昔それ系の本を流し読みしたぐらいなので、リンク先以上の知識はないです。日本だとどのレーベルが近いんだろ、90年代のビーイング系とか?多分違う気がするな…。


で、そのモータウンにはファンク・ブラザースというお抱えバックバンドがいて、そこに在籍していたジェームス・ジェマーソンという最強ベーシストの弾いていたフレーズが、今回取り上げるモータウンビートになります。



(実はもう1つドラムパターン主体のやつをモータウンビートと呼んだりもするんですが、今回は割愛)


このフレーズ、ポップスやロックの文脈においてはスカ/レゲエビートと並んで頻出イディオムとなっており、性急で楽しいカンジをインスタントに曲へ付与できる一方、用法用量を間違えた瞬間一気に没個性化して全部同じに聴こえてしまうという、アレンジャーの力量が問われる上級者向けビートとなっています。旧裏で例えるならパソコン大暴走。


そんな林家夫妻のペアルックさながらの強い記名性の中からピンクパンサーのクールさを見出だすべく、古今東西あらゆるミュージシャンがこのフレーズと格闘し続けてきました。本記事ではそんな曲たちを鑑賞しつつ、それぞれの創意工夫に想いを馳せていこうと思います。



独断と偏見で3パターンに分類しています。例によって公式じゃないのも結構あるので、消えたらお察し下さい。





1.確信犯型


前座。明らかにこのビートを聴かせる前提でアレンジが組まれてる曲たち。クリエイターのエゴより聴き手の快楽を重視してるタイプ。


基本的にパクリスペクトで発展してきたJポップ(死語)に多め。



・嵐 / Happiness



説明不要。身内が好きな曲なので忖度して最初に選出。

個人的に嵐はこの頃よりも初期の謎ラップ路線の方が好き。



・プリンセス プリンセス / Diamonds



モータウンビートを説明する際、邦楽版の例示として必ずリンクが貼られる曲。

世代からは外れてるんで思い入れとかないんだけど、『夕凪の街 桜の国』の映画において田中麗奈がラブホで歌ってたシーンはなんだかずっと印象に残っている。



・広末涼子 / MajiでKoiする5秒前



同上。


祇園精舎の鐘の声が聞こえてきたので次にいきます。



・ポケットビスケッツ / POWER



小学生時代にポケビ派とブラビ派の宗教戦争がクラスであって、ポケビ派が偶像として崇めていた曲。自分はブラビ派に属しつつ(ちなみにこっちの宗派の偶像はTiming)、この曲も嫌いになれずにこっそり聴いてる異端者だった。


直近の紅白に両方出てたらしい。見ればよかった…。



・Whiteberry / 愛落人形



曲名に思うところがあった方、心が汚れてますね。僕もそうです。



・大森靖子 / 子供じゃないもん17



メジャー1stアルバムの収録曲。


大森靖子は基本的に自分の立ち位置をちゃんと理解した上でやってる頭の良い人なので、メジャーになっても心までは売らないよう、アレンジの方を露骨にすることで表現のパスティーシュ化を図っている。他の曲でcreepの例のカッティングとかも引用してるし。


最近忙しくてライヴ観れてないけど、妻との数少ない共通項だからまた行きたいな…。



・Jet / Are You Gonna Be My Girl



オアシスのバカキャラの部分を継承したバンド。直球アレンジ。


しまむらで買ったオシャレ服着て、修学旅行のTDLではしゃぐ中学生みたいな無邪気さが眩しすぎて、大人になるにつれなんか切なくなってくる曲。



2.知能犯型


本記事の主役。冒頭のポケカGBもこのタイプ。ビートの良いとこどりはしつつ、他との差別化をちゃんと諦めずに工夫してる曲たち。ロックバンドに多め。


ロックバンドにとって頻出イディオムをそのまま使う=お里が知れる行為はセンスを疑われてしまいディスアドなので、みんなシッポを掴まれないよう死にもの狂いでアレンジを考えていて、そのやり方にアーティスト毎の個性が出ている。その辺を意識しながら聴くと音楽がもっと面白くなるはず。



・The Smiths / This Charming Man



躁状態の陰キャ。完徹した朝の脳内風景みたいなPV。


ベースとドラムはオーソドックスなモータウンビートだけど、その上で弾き散らかされるジョニー・マーのクリーントーンギターのせいで、ビートの本来持っている性急さが危うさに、楽しさが空元気に置き換わって聴こえる不思議な曲。



・相対性理論 / 三千万年



そんなスミスの陰キャ成分を全部サブカルに置換した上で、ギターフレーズのオシャレ度数を2割ぐらい増やしたカンジの曲。そんなんいいに決まってるじゃん。ズルい。


・L'Arc~en~Ciel / C'est La Vie

 


最初は律儀にモータウンビートしてるんだけど、段々tetsuya(当時はtetsu)のエゴがフレーズを侵食し始めて、最終的には完全に暴走するコントみたいな構成の曲。


・The Strokes / Last Night



ゼロ年代ロックンロール・リバイバルの旗手。『その古着カッコいいから崩して着るわ』的に、エッセンスだけ盗んで自分達の手口へすり替えてるカンジ。


ただしこの曲の真の肝はモータウンビートじゃなくて、結成したての初心者バンドでも全員が楽しく演奏できるイントロの方だと思う。


・Pixies / Lovely Day



サビ前に同音連打してスネアロールに失敗したEDMみたくしてるのめっちゃ面白い。音のニュアンスに露悪的で乱暴なカンジが多大に含まれてるのも好きだし、めくるめくアレンジの数々を2分ちょっとでまとめてるのも凄い。


曲とは関係ないけど、このジャケ写モントゥトゥユピーの元ネタじゃね?とずっと思ってる。



・スピッツ / HOLIDAY



シンプルで陽性なギターカッティングと沈み込むようなベースラインを組み合わせることにより、ストーカー男子の心の高揚と粘着質な闇の部分を完璧に表現した超名曲。メジャーデビューからさざなみCDぐらいまでのスピッツは、当時の邦楽で五本指に入るぐらいアレンジが上手いバンドだったと勝手に思ってるんだけど、その根底にはある種の屈折やひねくれ者としての矜持があったんだろうな、と感慨しきり。


この曲から15年後に『醒めない』って曲でもう一度モータウンビートが使われるんだけど、その時は割とオーソドックスなアレンジになってて、そこに至るまでの心情の変化とかが色々想像できて楽しい。



・くるり / さっきの女の子



屈折ひねくれ者枠その2。HOLIDAYと同じ手法で気持ちのアンビバレントさを表現しつつ、モータウンビートを担うギターの音色を尖らせることで、性急さに神経質な苛立ちを加えているのが特徴。


・クリープハイプ / マルコ


屈折ひねくれ者枠その3。聴き手に決してモータウンビートだと悟らせないよう、定型から外したフレージングを駆使して最後まで意地を張り続ける姿勢がとてもかわいい。


・Mr.Children / I'm talking about Lovin'



この曲もシッポを掴ませないよう上手いことフレーズをずらしてるカンジ。


ミスチルはスピッツと対照的に、ブレイクする前の初期は割とシンプルなモータウンビートで(グッバイ・マイ・グルーミーデイズ)、その後色々な苦悩を引き受けてビートが複雑化、という流れを経ているのが面白い。



・桑田佳祐 / 悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)



父親が無限にカーステで流してた思い出。この曲もシッポを(略)。


サザンとソロは表向きほぼ同じに見えて、前者はサービス全振り、後者はちょっとだけエゴをまぶすという一応の住み分けが本人の中でされてるっぽい。サザン名義の『太陽は罪な奴』だとシンプルなモータウンビートだし。



・Ben Folds Five / Sports & Wine



モータウンビートって基本は縦ノリなんだけど、可能な範囲で横ノリとの両立も図ろうとしている強欲な曲。



・andymori / ビューティフルセレブリティー



縦ノリと横ノリの融合その2。


このアレンジは歌詞とリンクしていて、内容がセレブの描写に終始している間は横ノリで、主人公側の描写に移った途端モータウンビートに切り替わって縦ノリで高揚感を出し、最終的には2つのビートの折衷案になってハッピーエンドを表現、という構成になっている。めっちゃオシャレ。


・The Stone Roses / Elephant Stone



縦ノリと横ノリの融合その3。踊らせる目的なら多分この曲が最強。


つーかこのアレンジ、アルバム版と比べて100倍カッコよくなってない?これできるなら他の曲もやってよ…。


・チャットモンチー / demo、恋はサーカス



曲のうち盛り上げたいところにだけモータウンビートをつまみ入れる、というポケカGBと同じ手法。ちなみにこの曲の該当箇所はアウトロなので、ラスト30秒まで登場してきません。


3ピース時代のチャットモンチーは1曲の中に複数曲分のアレンジを入れ込んでいて、モータウンビートもそのレパートリーのひとつ。この曲以外だと『桜前線』とか『草原に立つ二本の木のように』とかで聴ける。


・内田順子 / ボディーだけレディー



部分的つまみ入れその2。キテレツ大百科の初期主題歌のベース好き。『マジカルBoy マジカルHeart』とか。


キテレツとドラえもんはシェアが競合しないよう、ヒロインのキャラ付けをしずちゃんは清楚(アニメのみ。漫画だとおてんば)、みよちゃんは大人寄りにして差別化を図りたかったのかな、と久々に見返して思った。


・The Pop Group / Forces Of Oppression


ニューウェーブ最強のバンド。好き勝手弾きまくるウワモノとアジテーション10割のヴォーカルでモータウンビートを換骨奪胎し、その結果聴き手に伝わるのは楽しさじゃなくて苛立ち。


当時このバンドは音楽行為そのものを目的として捉えておらず、世界の理不尽に目を向けてもらうための手段として用いる現代アートみたいな理念で活動していたので、聴いててイライラするのは本人達にとって想定どおりの出来。ポップ・グループというバンド名にもその辺の皮肉が多大に含まれているので、この曲におけるモータウンビートもその文脈で使われたんじゃないかな、と思っている。


・LÄ-PPISCH / 美代ちゃんのxxx



 大学時代のバイト先に音楽めっちゃ詳しい先輩がいて、その人の影響で聴くようになったバンド。超カッコいいけどアルバム単位だと結構ひねくれた曲も多いので、興味がある方はベストから入るのを推奨。自分はアルバムだと無難にmakeか、もしくは上田現のソロ派。


モータウンの説明のときにスカビートの名前を出したけど、両方とも黒寄りで縦ノリのビート、という点で親和性が高くて、この曲でもそれぞれ効果的なタイミングで使われている。


動画なかったから今回は紹介できないけど、スカよりのモータウンビートだとJITTERIN'JINNの『あまのじゃく』とかも好き。



・BOØWY / ホンキー・トンキー・クレイジー



そんなモータウンビートとスカをいいカンジにお見合いさせた曲。これも上記の先輩に貸してもらって聴くようになったやつ。


ヒムロックはヒムロックというジャンルなので一旦置いとくとして、個人的にはダウンピッキングしかしないで粒立ちに命を懸けてるベースと、マジかギャグか判断に困るお馬さんパカポコな音作りのドラムが、お行儀のいい現代では到底起こり得ないオールドウェーブ化したニューウェーブってカンジで好き。


・ASPARAGUS / FRUSTRATION

 


モータウンビートとスカのお見合いをさらに推し進めて結婚させ、効果を倍増させたのちに同じ縦ノリであるメロコアの文脈に落とし込んで違和感を消し、ダメ押しに美メロとオシャレフレーズをまぶして爽やかさまでプラス、というセンスの塊のような曲。


良いところは伸ばしてベタなところは消す、というのがちゃんと実践できてると思われるので、知能犯型の中では一番好き。



3.模倣犯型


やってることは確信犯型と同じだけど、態度の深い部分に元ネタへのリスペクトが感じられるタイプ。とはいえ実際はそんなのやってる本人達にしかわからないため、あくまでこっちの主観。


・Iggy Pop / Lust For Life



シュープリームスに一番質感を似せてると思ったので選出。タンバリンとか。ちなみに次点は広末。


個人的にトレインスポッティングはボーンスリッピーじゃなくてこっち派。公式のPVも今回貼ったやつとは別にちゃんとあるけど、なんか絵面が全体的に汚かったので自重。



・THE COLLECTORS / 恋のカレイドスコープ



モッズがアイデンティティのバンドなので、メジャー1stなことも踏まえてほぼ間違いなく所信表明としてこのビート使ってる。なんなら同じアルバム中にもう1曲モータウンビートのやつあるし。



・斉藤和義 / 歩いて帰ろう



この曲があまりにも有名になりすぎたから、普通は二番煎じにならないようにモータウンビート封印しそうだけど、特に気にすることなく定期的に使って、それでちゃんといい曲を書いている。『ベリー ベリー ストロング』とか『Always』とか。


自分のルーツに嘘つかないのは素直にカッコいいと思う。あとギターだけじゃなくてドラム上手なのも凄い。


・ザ・クロマニヨンズ / スピードとナイフ



演奏してみて初めてわかる凄さ。ベースの音が明らかに鋭い。曲名が示すとおりまさにナイフ。1曲通してこの精度維持すんのかなり大変なはずで、それでもやるのはそれがこのビートの肝だってちゃんとわかってるから。


ちなみにPVが尻切れトンボなのは『ライヴに来い』というバンド側からのメッセージなんだけど、この曲は難しいからか他のシングル曲に比べると演奏確率が低め。悲しい。







気の赴くままリンクを貼り続けた結果、思えば遠いところまで来てしまいました。同じような曲と文字ばっか浴び続けて人によってはそろそろゲシュタルト崩壊が始まっていてもおかしくないので、最後に日本人へモータウンビートをサブリミナルで刻み込んだこの曲を紹介し、本記事の結びとさせて頂きます。









みんな大好きヨドバシカメラのCMソングです。個人的なおすすめは横浜。





仕事しよ。








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