ナツモルデッキ考察 第3/3回
前回でコンセプト達成における必須カードと、それらを使った基本戦術、およびその課題について整理しました。第3回ではそれらを踏まえ、選定を保留にしていたアタッカー、ドロソ等の汎用カード、選択枠のカードといったデッキの残り枠について考察していきます。
デッキの枠が決まったら、最後にレギュレーション毎の立ち位置と調整案についても触れようと思います。
(カード効果を説明するに辺り、一部ポケモンwiki様のページにリンクを飛ばしている箇所があります)
10. デッキ作成編:アタッカーの選定
基本戦術へ組み込むことを前提に、以下の条件をできるだけ多く満たすポケモンとします。
・HP70以上
70の理由は第1回で書いた通りです。回復効果を享受した際の固さが断然違ってくるので、場持ちのためにも安定打点確2の体力は持っていてほしいです。
・逃げるコスト1以下
ナツモルと交代時、リサエネかドリオ込みで逃げるコストを支払わずにすみます。コンセプト達成上、リソースを節約できるのはとても大事です。
・エネ1枚でわざが使える
序盤に1体立てる際、リソース消費を抑えて即座に攻撃開始できた方が強いです。また中盤以降ナツモルが動き始めてから立てる場合も、準備が速ければ速いほど相手に混乱後の試行回数を稼がせずにすみます。
・1進化以内
第2回・ヤドランの項でも書いた通り、できるだけナツモルとは展開の歩幅を合わせられた方がいいです。理想は序盤にすぐ立てられるたねポケモンですが、それのみだとここまで挙げた条件を全て満たすカードがかなり限られてしまうため、ナツモルと同じ1進化までを許容範囲とします。
・ベンチ干渉手段持ち
混乱した相手と対面することが多いので、可能なら素直に倒してしまうよりロック継続しつつベンチを叩きたいです。ムチュールで代用可能なものの、選択肢が多いに越したことはありません。
以上の条件を前提に、基本戦術の課題となるカードに対抗できるポケモンを探していきます。
課題すべてを克服するのは(このデッキに限らず、どのデッキでも)不可能ですが、このデッキの場合、ここまでに採用したナツモル・バリヤード・ラプラス・ムチュールを同じく採用した虹エネ4枚・鋼2枚・リサエネ1枚だけでほぼ完結して運用することができるので、(虹エネの汎用性の高さも含め)アタッカーは全ての色の中から自由に選択することが可能です。この辺はエネ拘束の緩いグドラや鋼ラッキーに通じるものがあり、課題となる相手のうち、強く見たい仮想敵に合わせてカスタマイズできるのは大きな長所となります。
以上を踏まえ、各色ごとに採用した場合のメリットと、その色のエネで起動可能なポケモンのうち、上記条件を多く満たすもの、条件は満たさないものの面白い性能を持っているものをリストアップし、環境に合わせて必要なカードをそのつど選んでいくこととします。
個人的に採用優先度の高い順で解説していきます。
(1)超
採用するメリット:
ナツモル・バリヤード・ヤドランラインが夜廃可能な基本エネでわざを撃てるようになるため、安定性が上がります。ベトンやフーディンなど『相手のビートプランをメタる』カードをさらにメタれるという独特な役割を持っていて、抵抗力が辛いものの多色要求ポケモンを使うことで、虹エネと併せて無理なく対策と弱点分散ができます。他の色を採用する場合もエネ1~2枚はタッチしておきたいぐらい基本となる色なので、まずはここから考え、その後環境に合わせて色を変えていくのがいいと思います。
採用候補ポケモン:
・ゴースト(ポルターガイスト)
最有力候補です。
1進化HP70逃げ1、1エネでポルターガイストを使うことができます。自身にベンチ攻撃わざはありませんが、ゲンガー(化石)に進化すれば相手の混乱自傷をのろいでベンチに移すことができ、3エネ貼れればわざでベンチを叩くこともできます。
これで先述の条件を全て満たす他、ポルターガイストで相手が入れ換え札を抱えているか事前チェック可能、ナツモルを待たずともナイトメアで混乱付与可能、混乱効果の薄いベイビィもゲンガー進化→のろいでローリスクに駆除可能、進化前のゴース(化石)が1エネコイン麻痺わざ持ちで先発性能が高い上、いざとなればエナジーへんかんで特殊エネ回収まで狙うことが可能と、コンセプト上相性のいい効果がこれでもかというほど揃っています。弱点がないため役割破壊されづらいのもポイントです。
総じて非常に強力ですが抵抗力持ちに弱いので、無色や悪が強い環境では他のポケモンの方がいい場合もあります。
・ナツメのユンゲラー
ゴーストに次いで相性のいいポケモンです。スタッツは条件を満たしており、ライフダウンはコイン次第ですが1エネで特大ダメージを与えることができます。確1をとることこそできませんが、トドメはムチュールかバリヤードに任せればいいのと、混乱付与後に成功すれば自傷ダメージがそのまま気絶につながるので、次ターン相手の攻撃を躊躇わせることができます。
ゴーストと違って弱点があるのはマイナスポイントですが、代わりに相手の抵抗力を無視することができ、ESP・鋼をナツモルと共有可能、進化前がエネループでズバット確1なのでわるクロに比較的強い、ナツメのフーディンになればコンボによるベンチ狙撃やハメ行為も可能等、こちらはこちらで別軸の強みを備えています。
・やさしいゴルダック
1エネわざこそおもちゃですが、HP80逃げ1とステータスは十分なものを持ち、受けの難しい特殊エネ速攻や、バリヤードの通らない鋼・悪タイプに対してコアブラストで圧力をかけることができます。ニコタマの安い環境ではより強力で、自身はエネ加速しつつ相手のニコタマを咎められます。水タイプなのでナツモルが出せない炎相手の弱点をつけ、進化前のコダック(neo4)が混乱付与わざを持っているのも評価点です。
またミラーマッチした時、虹と鋼を貼ったナツモルが確1になるのも地味ながら重要です。
・カスミのゴルダック
1エネわざを持っていないもののスーパーデストロイが強く、混乱で試行回数を稼ぎつつ、バトル場の逃げエネと相手ベンチの育成枠にまとめて圧力をかけることができます。かいふくりんぷんと併せることで、ボードアドバンテージがより強固になります。ハナダシティジムがあれば逃げ0になれるのも便利です。
水タイプなので炎相手にエクストラビームで大打撃を与えることもできますが、虹エネ含むリソース消費が激しいため、こちらはあまりコンセプトと合っていないです。
・ナツメのゴルダック
第1回・かいふくりんぷんの項を参照。鋼とヤドランを共有でき、全体回復役の色が増えることで炎相手にもコンセプトを達成しやすくなります。加えて進化前のナツメのコダックも通常コダック同様混乱わざを備えています。
逃げ2なので小回りが聞かず、状態異常に弱いのには注意です。
・わるいゴルダック
HP60逃げ2なのでメインにはできないですが、超エネだけで水50打点を出せるため、やさしいゴルダックのお供にピン差ししておくと炎相手のビートプランが多少太くなります。
・ネイティオ(neo2)
エナジーサイクルでバトル場エネをベンチの不要なポケモンに移し、相手を縛ることができます。
エネを攻めるだけならカスミのゴルダックの方が優秀なため、ちょうねんりきの安定50打点、進化前のネイティ(neo1)のベンチ攻撃わざ、ネイティ(neo2)の混乱わざあたりで差別化を図りたいです。
・ミュウツー(コロコロプロモ)
序盤は逃げ2なのでお荷物ですが、中盤以降は自身の逃げエネをエネルギーきゅうしゅうで賄えます。また超の40打点はフーディン・ベトン・わるクロ・スリープを一撃で倒せるため、それらを強く見たい時にはたねという軽さもあって頼りになります。
(2)闘
採用するメリット:
超とは殴る時の相性補完が取れているため、バリヤードの事を強くアシストできます。また超と同様メインを張るよりは環境をメタる側に回った方が輝く色なので、相手によって構築を変えるこのデッキにはマッチしています。色相性的に展開の早い相手に強く、ニコタマ速攻してくる無色や、エネエネ速攻してくるスライ、2エネ全方位攻撃のわるクロランターンを迎撃できるのが優秀です。
採用候補ポケモン:
・エビワラー(第一弾)
HP70と1エネ20打点を両立している数少ないたねポケモンです。準備の簡単さを活かし、最序盤から技を振っているだけで相手のたねに圧力をかけることができます。特にバリヤードが手も足も出ない低打点無色に強いのは大きな長所です。
中終盤まで守りきれればそのままフィニッシャーを務めることもできますが、逃げ2なのは闘抵抗持ちの多さも相まってかなりのマイナスポイントなので、運用する際はリサエネ・ドリオ・抵抗力低下ジム等でしっかりフォローする必要があります。
・タケシのサンドパン(とげボール)
省エネかつ効率のいいわざを備えています。ベイビィの確1を取りつつ鋼や抵抗力も無視できるため、長持ちさせれば闘の役割破壊性能込みで見た目以上に圧力をかけられるポケモンです。
タケシのサンドに1エネ攻撃わざがなく、1エネ防御技持ちの方はHP40と低めなので、最序盤には若干の隙を見せてしまいます。
・グライガー(neo1)
HP60なのでメインを張るには不安がありますが、サブとして見ると逃げ0、1エネでナツモルが忘れてしまう毒わざ持ち、ニコタマ対応20打点と非常に優秀なポケモンです。余った虹エネを1枚回すだけで闘エネなしでも運用可能なため、枠が空いていればバリヤードのお供にピン差しするのもありです。
(3)炎
採用するメリット:
色相性での補完はさほど強くなく、代名詞であるエネトラッシュわざもコンセプト上あまり採用できませんが、少数精鋭なだけあって優秀なステータスのポケモンを多く有しています。また殴る際には抵抗力を持たれず鋼でも止まりにくい最強の色なので、攻撃が補助なしで自己完結するのもポイントです。加えて一部のポケモンは混乱と相性のいいエネ破壊わざを持っています。
採用候補ポケモン:
・ブーバー(化石)
HP70・逃げ1・1エネ攻撃わざ持ちの条件を全て満たす唯一のたねポケモンです。加えてわざは2つとも混乱とシナジーする効果を持っており、えんまくで被弾率を25%にして殴り切ったり、毒を入れて相手ターンきぜつによるロック継続を狙ったりできます。
わざのエネ拘束が重い、一部のレギュレーションで殿堂ランク付き等の欠点はありますが、炎にタッチするなら極力採用しておきたいです。
・ファイヤー(拡張)
たねでHP80逃げ1、弱点なし抵抗力ありの最強ステータスです。メインわざは炎3枚含む4エネ要求と激重ですが、それでもこの色の安定50打点は強く、回復を絡めつつ相手を選ばないフィニッシャーになれます。
万が一最序盤にバトル場へ出てしまっても、高いHPを活かし壁役での運用が可能なため、腐りにくいです。
・カツラのヒトカゲ(メラメラ)
混乱と1エネ確定リムーブを組み合わせ、バトル場に相手を縛ることができます。こちらの要求コストはリサエネで踏み倒せます。特殊エネ速攻にそこそこ強いのも評価点です。
進化先のカツラのリザード・カツラのリザードンが強力なベンチ攻撃わざを持っているものの、不安定かつリソース消費が激しく、逃げるコストも重いためそこまで採用するかは要検討です。
・マグマラシ(neo1)
1進化になってエネコストが増した分わざが強力になったブーバー(化石)です。同じ進化ラインにえんまく持ちのヒノアラシ(neo4)、ベンチにダメカンをばらまけるマグマラシ(pf1)、フィニッシャー性能に優れたバクフーン(pf1)、無限リソースのバクフーン(neo1)等のカードが揃っていますが、デッキ枠を考えると全て採用するのは難しいです。
(4)水
採用するメリット:
ナツモルが受けられない炎相手に弱点をつけます。ただし超タッチしたゴルダック系統でも近いことができるため、わざわざ2色にするなら打点等の面で差別化を図りたいです。
採用候補ポケモン:
・やさしいシャワーズ
第1回・かいふくりんぷんの項を参照。ナツモルとのシナジーではなく、炎相手の代行枠としての役割を期待して採用します。眠りと30打点で圧力をかけつつ、ヤドランと併せてコンセプトを遂行できます。
ファンクラブイーブイを下敷きにすれば簡単に立てることができ、その割にHP80逃げ1とステータスが高めなのもいいですが、わざのエネ拘束が強めなところだけは注意です。
・カスミのジュゴン
4エネ要求とはいえ、水1無色3の緩さで炎ワンパンの60打点は替えのきかない個性です。自傷ケアの鋼をナツモルと共有でき、リサエネ+ハナダシティジムで逃げるコストを実質0にできます。
・シードラ(neo1)
逃げ1の状態でナツモルと交代しながらだくりゅうをばらまくことができ、リソースが怪しくなったらキングドラ(neo3)に進化すればリサエネを共有できます。安定重視にするとデッキ枠を食うのが難点です。
(5)草
採用するメリット:
かいふくりんぷんのエネを夜廃で回収できるようになります。とはいえ受けの観点からは弱点を分散することの方が大事なので、採用するならナツモルと同じ炎弱点ではなく超弱点の方を優先したいです。
採用候補ポケモン:
・わるいゴルバット
わるいクロバットともどもベンチ狙撃の鬼です。特殊能力によるダメージはバリヤードの火種としても優秀で、フジろうじんを厚く積めば再利用もできますが、さすがに退化スプレーhyperも入れると汎用性が下がるため、ここぞの場面以外は混乱を盾にわざでダメージを蓄積させていく運用になります。
ズバット(neo3)が確定毒を持っているのも便利です。
・タケシのゴルバット
1進化HP70逃げ1、1エネわざありベンチ攻撃可能と欲しい条件を全て満たしているポケモンです。似た性能のポケモンにカツラのギャロップがいますが、無色エネで起動可・進化前が1エネわざ持ち・ベンチ攻撃にコイン判定不要・バトル場への打点の低さ(=倒さずにロック継続可能)等の理由からこちらの方が優秀です。
全体攻撃は強力なものの、単騎で相手を殲滅するには大分時間がかかるので、適度にダメカンをばらまいた後はバリヤードと協力した方がいいです。
・R団のストライク
炎弱点かつHP60は少し物足りないですが、1エネわざのかげぶんしんが強く、混乱と重ねがけすることで数字以上の固さになります。攻撃わざのエネ拘束の緩さを活かし、鋼を貼って擬似的にHPを上げることもできます。
(6)雷
採用するメリット:
逃げ0速攻最強候補であるわるいオニドリルと、逃げるコストを少なくしてくるドードリオの弱点をつけます。一応雷の闘弱点をナツモルの抵抗力でカバーすることもできますが、サンダー系統でも同じことができるため、色相性上の補完はイマイチです。
採用候補ポケモン:
・レアコイル(拡張)
3エネで強めのベンチ攻撃と、コイン付きとはいえリムーブ効果を同時に飛ばすことで、相手が育てている後続を牽制することができます。進化前のコイルは層が厚いのでどれを採用するかは迷うところですが、瞬間的な火力とベンチばらまき、1エネコイン麻痺を狙える第一弾辺りが面白そうです。
・ライチュウ(化石)/わるいライチュウ
ピカチュウ(WHFプロモ)でエネ加速しつつ、強力なベンチ攻撃を行うことができます。性能はどちらも一長一短で、序盤は3エネで起動できコインの試行回数を稼ぎやすいわるいライチュウ、中終盤は高いHPと確実に打点を刻めるライチュウ(化石)が優秀です。ライチュウは火力に優れたneo3のものもいるため、折角ならそれぞれ採用して場面毎に使い分けるのもアリだと思います。
1エネ攻撃わざがないので、序盤事故った時や息切れした時用の壁役は考えておいた方がいいです。
・R団のサンダー
ほとんどのレギュレーションで殿堂ランクがついていますが、エビワラー(第一弾)のステータスとミュウツー(コロコロ)のエネ回収を両立しているのはさすがに強力です。逃げ2ですがミュウツー同様自力でコストを賄うことができ、鋼をナツモルと共有可能です。
追記。R団のサンダーを使う際、同時に採用すると足りない搦め手や2エネ中打点を補ってくれます。自身もHP70なので回復享受すると強いですが、逃げ2で小回りがきかないため、基本は再利用を想定せずギリギリまで暴れて相手の場を荒らし、逃げるかきぜつでトラッシュにエネを落としてそのままR団のサンダーへつなぐ運用となります。
(7)悪
採用するメリット:
弱点なし抵抗力あり、ほとんどのポケモンが逃げ1以下等、ステータス上はコンセプトとの相性がいいです。ただし専用の悪エネはサーチが厳しい上に汎用性も低いため、構築難度が高いです。
採用候補ポケモン:
・ブラッキー(neo2)
HP80逃げ1、弱点なし抵抗力あり、ベンチ攻撃としては最強クラスの30打点持ちと、長所だけ見れば極めて強力なポケモンです。但し特殊エネ2枚要求という点が重く、準備も立て直しも難しいことからなかなかスペック通りに動けないことが多いです。
・ヤミカラス(neo1)
軽量版ブラッキーです。メインにはなれませんが虹エネ1枚+αで起動可能なため、サブとして採用しておくと勝ち筋を少し増やすことができます。鋼が余っていれば低打点の相手をくろいまなざしでロックして、そのまま打点をシャットアウトしつつLOを狙うこともできます。
殿堂ランクのついているレギュレーションでは優先度が下がります。
(8)鋼
採用するメリット:
鋼エネをナツモルと共有できます。ただし鋼タイプ自体はナツモルと炎弱点が重複している、殿堂ランクが重め、カードプール内に逃げ1以下のポケモンがほとんどいない等の理由から、コンセプト上の相性があまりよくありません。
採用候補ポケモン:
・ハッサム(neo2)
みねうちとバリヤードのヨガのポーズにより、相手を確2で倒せるようになります。進化前のストライクは逃げるエネが軽いため、普段はそちらで運用しつついざという時に進化させると面白そうです。
・ラッキー(第一弾)
いわゆる鋼ラッキーです。退化スプレーhyperの代わりにナツモルヤドランギミックを回復ソースとして運用します。ハピナスに殿堂ランクがついているレギュレーションでは選択肢の一つとしてアリだと思います。
これらの候補の中から適宜必要なカードを選んでいく事とします。
続けて汎用カードについて考察します。
11. デッキ作成編:汎用カードの選定
旧裏カードプールの中で、どのデッキにもほぼ必ず入る汎用カードとしては展開用のドロソ/サーチ、リソース回復用の夜廃があげられます。これらの内訳と枚数について考えていきます。
まずはデッキを回す際に避けては通れないドロソ/サーチからです。
基本戦術を前提とする都合上、初動における盤面形成の速度(効率的に速く引きたい)と中盤以降のリソース差優位の維持(相手より手札・盤面・山札の枚数を強く保ちたい)を両立する必要があるため、ドロソやサーチの選択もその辺のバランスを重要視します。
具体的には速度が出せるもののオーキドでのトラッシュリスクが上がり、相手とのリソース差をつけることもできないエリカや、リソースを守れるものの序盤の速度が犠牲になり、エリカ以上に相手とのリソース差が拮抗してしまう大暴走等のドロソは使わず、オーソドックスでバランスのよいオーキドウツギマサキクルミ構成を基準に、リソース保護の視点を加えて極力無駄が出にくいような配分(マサキをやや少な目にして手札交換カードを増やす等)を目指すこととします。
またこれまで採用した中にはサーチの困難な特殊エネが多く含まれているので、ここへスムーズにタッチするためのカードを検討します。
殿堂ランク付きのパソコン通信を除いた場合、種類を選ばず多めの枚数を探せるカードとしては大規模手札交換のナツメの眼かデッキトップ操作の新/旧ポケモン図鑑が現実的な選択肢となるので、それぞれのメリットデメリットを確認ののち、どちらがより採用に足るかの判断をしていきます。
・ナツメの眼のメリット
=手札が多いときに使えばデメリットのない擬似ウツギはかせとして運用可能、相手の手札に干渉可、クルミの役割を限定的にだが代行できる
・ナツメの眼のデメリット
=このカードを除く手札が4枚以下だと探せる枚数が新ポケモン図鑑を下回る、事故っていた相手をアシストしてしまうリスクあり
・新/旧ポケモン図鑑のメリット
=タイミングを選ばず5枚探せる、他にシャッフル効果があれば事故を確認した場合も回避可能、コラッタと組み合わせてロケ参に近い動きがとれる
・新/旧ポケモン図鑑のデメリット
=縦引きドロソと組み合わせないと欲しいカードがすぐ手元に来ない、相手からの干渉に弱い
どちらにも違った強みと弱みがありますが、マサキを減らす今回の構成では新/旧ポケモン図鑑は十分なパワーを発揮できない可能性がある一方、ナツメの眼はクルミのかさまし枠として使え、ベイビィや状態異常で手札を貯める動きもこのデッキでは比較的とりやすいことから、コンセプトや採用カードと相性のいいナツメの眼の方をここでは優先することとします。
次にサーチ枠ですが、これについては盤面の完成に複数のポケモンが必要な上、メインで起用するバリヤードがピン指し前提かつ使いどころを選ぶカードであるため、サイド落ち確認・必要な場面での迅速なサーチ・夜廃からの復帰等を踏まえて多めに採用する必要があります。
汎用サーチとしてはポケモン交換おじさんと礼儀作法、次点でポケモンマーチが候補になりますが、礼儀作法はたねをかさましている上ナツメの眼の前に手札を貯め込む動きとの相性もよくない、ポケモンマーチは相手にも展開を許してしまいリソース差をつけられない等の理由から、まずはオーキド前のリソース保護の役割も期待しつつ、ポケモン交換おじさんをフル投入することで何とかしようと思います。
それでも足りない場合は序盤に相手が先に展開したのを追う形となった時、もしくは相手のベンチが埋まっていることが多い終盤に使う(主にバリヤードの夜廃後復帰ケア)前提のもと、ポケモンマーチを1~2枚足して様子を見ていくこととします。
上記を全て踏まえ、ひとまず以下のような構成にしてみます。
オーキドはかせ 4
ウツギはかせ 4
マサキ 2
クルミ 3
ナツメの眼 2
ポケモン交換おじさん 4
全19枚
交換おじさんをフル投入した分、ドロソ枚数を標準的な16枚から1枚削っています。
これをひとつの基準に、事故が目立つようであれば他の枠も見ながらマサキ・クルミ・ナツメの眼・ポケモンマーチのいずれかを1~2枚足しつつ、微調整していくこととします。
ここへリソース回復役としての夜廃を足していく訳ですが、これについてはオーソドックスな2枚でいいと思います。
理由としては今回のデッキには特殊エネが多く、ポケモンについても盤面完成後は極力きぜつを避ける前提で動くため、対象となるカードがそもそもあまりトラッシュに落ちないからです。山札回復役としてもエイパムを採用しているので、3枚目からは持て余しぎみになってしまいます。
そのため一番の役割はバリヤードが不意に突破された際のリカバリーになりますが、それについてもサーチ札とセットでないと十分な効果を発揮できないので、使えるのはゲーム中に1回か、多くても2回が限界です。以上の点からも3枚はやや過剰で、オーキドケアも見越した2枚採用が適正枚数と言えます。
なおバリヤードの復帰のみに焦点をあてた場合、サーチを介さず即ベンチへ呼び戻すことができる元気のかけらという選択肢もあります。このデッキにおいてはダメカンが乗るデメリットをヤドランやナツモルでごまかせるため、相性がよいです。さすがに夜廃すべてをこれと換装するのは汎用性の観点から非推奨ですが、どうしても夜廃の3枚目が欲しい場合には代わりに採用を検討してみてもいいと思います。
必須枠、アタッカー枠、それらを補佐する汎用カードについて確認ができたところで、残りを埋める選択枠について触れようと思います。
12. デッキ作成編:選択枠について
選択枠のうち、考察が必要なのはスタジアム、入れ換えカード、殿堂ランクのついたカードです。これらを順に扱ったのち、それ以外で採用の余地があるカードについても触れます。
まずスタジアムですが、これについては相手のエネルギースタジアムを割るという明確な役割があるため、種類を問わず最低1枚、できれば2枚以上の採用が望ましいです。優先されるのは必須枠としても取り扱った特訓ジムですが、他にも候補となるカードがあるので、まとめて考察していきます。
・抵抗力低下ジム
特訓ジムを採用しない場合の最有力候補です。バリヤードの攻撃が通りやすくなり、天敵のヤミカラスへもそれなりに対抗できます。自軍側で抵抗力を有効活用するのはコラッタぐらいなので、ほぼデメリットもありません。
・マダツボミのとう
ニコタマ速攻してくる無色(主にプクリン)
へのピンポイントメタカードです。有効範囲が狭いものの、こちらが苦手な相手を1枚で強く抑制できるので、採用の価値はあります。
ヤミカラスが多い環境だと負け筋が増えるのには注意です。
・ロケット団の爆発ジム
ナツモルが触れないベンチ打点を補佐し、バリヤードの火種をばらまくことができます。こちらに乗ったダメカンをかいふくりんぷんでごまかせるので相性はいいですが、サーチが厳しいくせに序盤に出さないと効果が薄く、コイン判定もついていて安定しないのが難点です。
・ラジオとう
コラッタと合わせてデッキトップ操作ができ、擬似的なロケ参になります。ここまでにあげたスタジアムの中では相手に与える恩恵が比較的大きいので、優先度は低めです。
次に入れ換えカードについてです。
逃げるコストを極力少なくしているこのデッキには一見不要に見えますが、超ポケモンを使うデッキは入れ換えカードを0にするとヤミカラスが来た途端詰んでしまうので、最低1枚(ヤミカラスが多い環境なら2枚)は採用する必要があります。
この枠は必須カードでも紹介したポケモン回収が汎用性の観点から最優先、殿堂ランクの関係で難しい場合のみポケモンいれかえかワープポイントを選択して採用します。ヤミカラスを重く見るならポケモンいれかえ、ベイビィを重く見つつ特訓ジムとのシナジーを考えるならワープポイントですが、自分は突風など相手ベンチへの干渉手段を他にとっているならいれかえを、何もない場合はワープポイントを採用することにしています。
続けて殿堂ランクのついたカードです。
このデッキにおける殿堂ランクはバリヤード(★★or★★★)・鋼×2(★★)・リサエネ(★★or★)の6点までがほぼ固定枠なので、残り2点をどのカードへ割り振るかを考えます。
以下のカードが候補となります。
・突風
最も無難な選択肢です。育成中のポケモンを倒して盤面を掌握する使い方が一般的ですが、このデッキはそれほど攻撃に意識を割いていないので、置物に好き放題されるのを防いだり、逃げエネの重い相手を呼び出してテンポを落とすなど、どちらかといえば防御的な使い方をすることが多いです。
・ポケモンぎゃくしめい
ムチュールに殿堂を割いて突風が採用できない場合のジェネリック枠です。入れ替え札を兼ねられるので悪くはないですが、自分の特訓ジムと喧嘩するため、扱いは難しいです。
・エネルギー・リムーブ
混乱と組み合わせて相手のリソースをさらに削れます。苦手な特殊エネ速攻や悪タイプにも強くなりますが、単発だと効果が薄いため、基本的にはエイパムやヤドン(化石)で使い回すことが前提です。
・ピチュー(neo1)
混乱とシナジーするベイビィのうち、最もパワーのあるカードです。バリヤードとは両立できないものの火種となるダメカンを一度にばらまけるので、ベイビィパニックしながら尖兵をつとめると強力です。このカードを使う場合、自軍のヤドランが被弾しないようポケモン回収かフジろうじんは少し多目に採用しておいた方がいいです。
・ブビィ(neo1)
抵抗力を持たれない打点と詰み防止を両立できるカードです。
ナツモルミラーに多少強く、相手のヤドランを封じながら弱点をついて殴ることができます。
・ピクシー
追記。鋼を諦めることになりますが、1エネで捲れる爆発力が魅力。相手にエネ加速手段があるとバリューが下がるので、どちらかと言えば新殿堂向けのカードです。
これで考察が必要な選択枠については概ね終わったので、それ以外に採用の余地があるカードをここでまとめて紹介していきます。
・ピッピ(拡張)/タケシのマンキー(からかう)
殿堂ランクなしで1エネ突風効果を使えるたねポケモンです。部分的にですがププリン(neo2)やブビィ(neo1)の役割を担うことができ、特訓ジムとのシナジーもあります。
バリヤードとの相性補完や、仮想敵であるわるラフポルターへの耐性、自身も2エネ貼れば遅延技を使えるという観点からピッピの方を優先するべきですが、タケシのマンキーの方は逃げ0なので、トレーナーロック系のカードを他に採用したい、特訓ジム下でエネをトラッシュするのが気になるといった場合に候補となります。
・プテラ(neo3)/思い出させる
ナツモルラインはたねと1進化でわざの方向性が180°違っており、かつすべてのわざが混乱を起点にシナジーするようになっているため、進化前のわざを参照できる効果と相性がいいです。混乱と毒を同時に撒ければ単騎でサイドを取っていくこともできます。
実戦ではどうしてもの時だけナツモルとナツメのコンパンを両方立てれば概ね同じことができるので、リソース消費の観点からも必須枠にはならないですが、これらとシナジーする進化ラインを他にも使う予定だったり、相手の意表をつきたい時などには採用の余地があります。
・ナツメのESP
ナツメのポケモン専用カードです。ナツモルラインはコインわざを主軸に戦うので相性がいいですが(特にはかいビームと合わせると効果が高い)、ピン指しだと重要な場面で引けず、かといって大量採用しても確実にコインを表にできるわけではないので、扱いが難しいです。ナツメのポケモンがデッキにいっぱい入るようなら検討の余地はあります。
・ディフェンダー
コインが裏目に出たときのきぜつリスクを減らすことができるので、使いどころを選べば擬似的なESPとして機能します。ナツモルのためだけにわざわざ入れるほどではないですが、受けというコンセプトには噛み合っており、一応他のポケモンにも使えて汎用性が高いのは評価点です。
・メタモン(拡張)
ナツモルに変身すると何かエネを1枚貼るだけで両方のわざが使え、逃げ0を生かしてベンチにいる本物のナツモルと交互に入れ替わりながらりんぷんをばらまくことで、1体だけの時より回復効率を上げることができます。
ベンチへ戻る度に変身が解除される上、コイン裏の時が弱すぎるのでネタ寄りですが、一応デッキには他にもバリヤードやヤドン(化石)など変身する価値のあるポケモンが揃っているので、ドリオやリサエネを厚めに積む場合は入れてみると面白いかもしれません。
13. デッキ作成編:レギュレーション毎の調整
これでデッキの大枠は決まったので、最後にナツモルのコンセプトが各レギュレーション毎にどれくらい通用しそうかを確認します。
執筆時点(2023年6月)で安定稼働しているのは新殿堂・高槻殿堂・ハレツー殿堂・うずまき殿堂の4つなので、それぞれの殿堂ランクから見た所感と、それに応じた調整案をまとめていきます(新殿堂以外の3つは随時改定の可能性があるため、あくまで執筆時点の内容に絞ります)。
・新殿堂
所感:
かなりの逆風環境です。ぎゃくしめい1点が非常にきつく、ほとんどのデッキが当たり前のように状態異常回復をしてきますし、逃げ0が多い都合上そもそも混乱の通りが悪いです。1キル・ロック・ハンデス・わるクロ等、コントロールの難しい速攻デッキが多いのも辛いところです。加えてステータスが強めのたねポケモンに対しては軒並み殿堂ランクが設定されているため、選べるアタッカーの幅もかなり狭いです。ヤミカラスが0点のため、不意に飛んでくるロックにも警戒する必要があります。
バリヤードや一部強力なトレーナーの殿堂が軽いのは数少ない追い風要素です。
調整案:
まずは環境に蔓延る逃げ0とぎゃくしめいを何とかしないと話にならないため、対策札である特訓ジムはほぼ必須になります。またLOを強力にアシストしてくれるくすぐりマシーンを唯一殿堂消費なしで使えるので、上手く扱えば活路を見い出せるかもしれません。ヤミカラス0点も相手にすると面倒なものの、一方で自分自身にも相性がいいカードであり、手軽に使える相方が1枚増えたという見方もできます。
とはいえこれだけの逆風環境で主軸に据えるのはさすがに厳しいため、基本はピン指し採用で相手ぎゃくしめいからのヘイトを集め、メインギミックの負担を減らすサブ枠として運用した方がよさそうです。
・高槻殿堂2304
所感:
ぎゃくしめい2点、ヤミカラス1点、わるクロ1点とこちらにとって辛いカードに規制がかかり、採用できるアタッカーの幅も広がったため、新殿堂よりは大分風通しがよくなっています。ポケモン15枚ルールもこのデッキは元々たねをかさましがちなため、自然に条件をクリアできほぼ気になりません。制限時間も他のレギュレーションに比べると長く、長期戦前提のナツモルとは相性がいいです。
ただしメインギミックのカードに絞ると殿堂が変わっていないどころか、バリヤードが3点に変わってむしろ厳しくなっているため、欲しいカードを全て採用するのが難しく、どこかしらでの妥協が生じてしまいます。
調整案:
バリヤードを採用して殿堂トレーナーの採用を見送るか、バリヤード枠をミュウで妥協してその分の殿堂を他に回すかの択になります。おそらく後者の方が対応できる幅が広いと思います。特訓ジムは必須ではありませんが、ピン指しするぐらいの価値はあります。
・ハレツー殿堂2302
所感:
現状ナツモルのコンセプトと最も相性のいいレギュレーションです。高槻同様こちらが辛いカードへ規制がかかっているのに加え、リサエネ1点、ムチュール0点とメインギミックが軒並み規制緩和されているので、やりたいことをかなり自由に構築へ反映できます。ロック・ハンデス系への規制が厳しい分ビートダウンに偏重した環境のため、相手のやりたいこととこちらの搦め手が噛み合いやすく、妨害の少なさにより盤面の再現性もそこそこ高いです。
制限時間50分は普通ですが、このレギュレーション特有の『どちらかがサイドを4枚以上とれずに時間切れになった場合、両者とも負け』というルールが非常に追い風で、多少サイド差をつけただけでは勝ちにつながらず、相手側も山を掘って攻撃し続けなければならなくなります。これがナツモルの性能(攻撃力が低く序盤はサイドを先行されがちなものの、中盤以降は相手の決定打をのらりくらりかわし続けることが可能)と綺麗にシナジーし、特別なことをしなくてもLOが狙いやすくなっています。
調整案:
基本はここまで考察してきた流れに沿ってメタゲームを読みながらデッキ構築します。共通の傾向としてニコタマ0点、ニューラ2点なことから環境にバリヤードの苦手な超抵抗は一定程度いると考え、抵抗力低下ジムかマダツボミのとうのどちらかは優先的に採用しておきます。特訓ジムは殿堂ランクがついているため非採用です。
・うずまき殿堂
所感:
執筆時点で1回しか運用されたことのないレギュレーションのため、今後どのようになっていくのかは未知数です。リストを見る限りでは新殿堂を基準に、他の殿堂(特に一番試行回数の多い高槻殿堂からは多くの影響を受けているっぽい)の健全な調整と思しき部分を反映させ、最新型にブラッシュアップしたような印象を受けます。
結果として新殿堂と高槻殿堂から概ね中間値をとったような殿堂になっており、すなわちナツモルにとってはそのまま『新殿堂よりマシだが高槻殿堂よりキツイ環境』ということになります。
調整案:
基本的には高槻殿堂と同じですが、一部ワニカメ等デッキパワーの非常に高い相手がいるため、警戒する必要があります。
長くなりましたが、これでナツモルを主軸に据えたデッキ作成のための考察は終わりです。あとは採用したアタッカーに応じて採用するエネやスタジアムの種類と枚数を決め、実際に回してトライ&エラーを繰り返しながら細部を詰めていく作業となります。
おわりに
のちのち自分で読み返す際の思い出しやすさを最優先に、プロセスを端折らず順番に書き連ねていった結果、非常に長い記事となってしまいました。おまけに万人受けする内容でもないですが、部分的にでもどなたかのお役に立つようなことがあれば嬉しく思います。
本稿を元に組んだデッキの一覧についてはこちら、参考にさせて頂いた記事の一覧についてはこちらにそれぞれまとめています。
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