ナツモルデッキ考察 第1/3回
はじめに
くろまいです。
自分が旧裏で一番好きなカード、『ナツメのモルフォン』を使ったデッキについて、先行する類似記事が少なかったので備忘録を兼ねつつ書いていこうと思います。長い名前なので本稿ではこれ以降、タイトルの通り短く縮めてナツモルと呼びます。文章自体もかなり長いので(全3回+資料編をいくつか)、お手すきの際にでもお目汚し下されば幸いです。
個人的には何か特定のカードを主軸にしてデッキを作る場合、
スペックの確認→類似効果を持つカードとの差別化点の洗い出し→主軸を活かせるコンセプトの設定→コンセプトに沿った採用カードの検討→環境での立ち位置の確認→環境に沿ったデッキの肉付け
という手順を踏む事が重要だと考えているので、本稿も概ねこの流れに沿って進めていきたいと思います。
第1回ではナツモルのスペック確認から、主軸に据えるにあたってのコンセプト設定、それに付随したナツモルの欠点=デッキ作成上の課題までを考察していきます。
(カード効果を説明するに辺り、一部ポケモンwiki様のページにリンクを飛ばしている箇所があります)
1. ナツモルの初出
ジム拡張第2弾『闇からの挑戦』に収録されていた、ノンキラのレアカードです。モルフォンは初代赤緑でもナツメの手持ちに入っていたはずなので、原作再現ですね。
進化前のカードから考察していきます。
2. ナツモルの進化前
ナツモルと同じパックに収録されていたコモンカード、ナツメのコンパンです。
『超タイプじゃないけど超のわざが使える』特徴を再現した、2色要求ポケモンです。コダック/ゴルダックの系譜ですね。
わざはどちらも攻撃的で、確定どくは逃げるコストが1以上の相手に対して1エネとは思えない圧力をかけることができ、上手く使えば鋼耐久などを突破するための手段にもなります。
下のわざは2エネ要求なので狙って使うのは難しいですが、
・20ダメージ出るため、どくのしょっかくと合わせることで2ターン目に標準的なたねポケモンのHPラインである50に届く
・草タイプのたねポケモンなので、プテラ(化石)の弱点をついて40ダメージ与えられる
・コイン次第だがテンポロスを狙えるリムーブ効果つき
等、状況次第で痒いところに手が届く可能性を秘めています。
ただしHP40・逃げるコスト1はたねとしては平凡、ともすれば貧弱なので、攻撃的なわざを持つ反面バトル場で育てるには向かない性能をしていると言えます。
それが進化したのがナツモルです。
3. ナツモルのスペック
ナツメのコンパンから一転して、防御的な搦め手を主軸に据えたポケモンになります。進化前にエネ2枚要求わざがあるにも関わらず進化後はどちらのわざもエネ1枚で使えるようになっていますが、これはおそらくライン全体が『草・超』を1枚ずつ貼って初めてフルスペックを発揮できるようにデザインされているためで、多色要求の代償なのかどちらのわざも1エネにしては効果が強めに設定されています。
どちらも旧裏においてはこのカードだけが持つ独自性能なので(e以降には同効果あり)、少し丁寧に解説をします。
4. 下のわざ『げんかくおんぱ』
75%で相手に混乱を付与する追加効果のあるわざです。旧裏における混乱は現行の効果(わざの成否にコイン判定がつき、裏ならわざ失敗+自傷)に加え、『逃げる時にもコインを投げ、裏なら失敗、そのターンはもう逃げられない(失敗の場合も逃げるコストは払う必要あり)』という効果がついています。これにより逃げるコストが1以上のポケモンは全て
①甘んじて命中率50%=わざのダメージ期待値半減を受け入れ攻撃する
②貼ったエネを無駄にして、逃げるためにリスキーなギャンブルをする
③進化カードや入れ換え札など、有限のリソースを切る(なければ山を掘って探す)
④わざを使わずにターンをパスする
という、理不尽な4択を迫られることになります。テンポロスとリソース破壊を継続して担える、強力な効果です。
製作側も仕様の強力さは理解しており、基本的に混乱を付与する効果にはコイン判定がついていて、確率は50%が一般的です。
例:
スリープ(第一弾)
トゲピー(サザン)
中には確率が50%を超えるポケモンや、確定で混乱を付与するポケモン、特殊能力によりわざを使う隙を見せずにすむポケモンもいますが、相手依存だったり自分のバトルポケモンが混乱するリスクがあったりするため、使うタイミングが難しい、コンボ運用(カイリュー(化石)や退化スプレーhyperなど)が前提になる等の欠点があります。
例:
ひかるセレビィ
ハマちゃんのヤドキング
わるいクサイハナ
エリカのラフレシア
これらとナツモルを比較した場合、『お膳立てを必要とせずエネ1枚でローリスクに混乱を付与することができ、仕事をしたあとは逃げ0なので即座にアタッカーと交代できる汎用性の高さ』が評価点になります(エネ1枚混乱と逃げ0を両立できるのはナツモル・レディバ(neo1)・ポポッコ(neo3)・ドククラゲ(化石)のみで、ナツモルがこの中で一番混乱にできる確率が高い)。
個人的にナツモルは両方のわざを使って初めて真価を発揮するカードだと考えていますが、例えばタケシのキュウコン入りのデッキの場合、このわざだけを目当てに化け先としてピン差しするのも搦め手を増やす選択肢としてアリだと思います。
5. 上のわざ『かいふくりんぷん』
げんかくおんぱ以上に独自性が強く、
・旧裏では珍しい全体回復わざ
・1エネで使用可能
・ダメカンを2個以上取り除ける可能性あり
という特徴があります。
細かく解説すると、旧裏にて対象制限なしに全体回復ができるポケモンはナツモル以外に5種類しかおらず(タイプ・種族を限定するのであればメガニウム(pf1)とアンノーンRもいる)、いずれも性能が微妙に異なっています。
・やさしいハクリュー
無色2エネで使え、回復量はダメカン1個。下のわざは混乱との相性がよく、弱点なしHP80も優秀だが、自身に搦め手性能はなく逃げるコストも2と重い。
・ナツメのゴルダック
味方全体からダメカンを1個ずつ取り除き、それをそのまま相手のバトルポケモンに乗せ変える効果。攻防一体で非常に強力だが超エネ2枚要求は少し重く、逃げるコストも2なので搦め手に弱い。
・カイリュー(GBプロモ)
特殊能力なので隙を見せず、回復量もダメカン2個と十分。しかし2進化なので出すこと自体が難しく、肝心の効果も退化スプレーhyper等を併用しない限りは一回使いきり。わざもハクリュウと変わらないのが残念。
・やさしいシャワーズ
水2枚込みの3枚要求と重く、回復量もダメカン1個、相手ベンチを巻き込む上に自分自身は対象外。水の30打点+確定眠りは搦め手性能込みでまあまあ強く、上のわざも回復にまつわる効果という点では一貫性がある。
回復量はダメカン1個。たねで無色1エネという破格の効率だが、相手全体も巻き込むのが難点。下わざの壊れ具合により基本どのレギュレーションでも殿堂ランクがかなり高く設定されているため、回復要員としての採用は正直割に合わない。
総合的なスペックはそれぞれに長短があるものの、こと回復量で考えた場合、全体回復でダメカンを2個以上取り除くのはなかなかにハードルが高いことがわかります。旧裏は現行より最大HPと打点が低く、きのみのダメカン2個回復やディフェンダーの-20点だけでも確定数が変わることがままあり、ベンチ攻撃の火力も全体的に控えめに設定されているため、ある程度はバランス調整上仕方のない部分です。
そんな中でナツモルの『コインという不確定要素はあれど期待値ダメカン1.5個、上振れ時にはきのみを超える全体回復を【エネ1枚で】毎ターン可能』というのは上記カード群と比べてかなり抜けた性能をしており、わざの希少性から他のポケモンに対しても差別化を図れる優位点だと言えます。
6. ナツモルが目指すべきコンセプト
ここまで2つのわざをそれぞれ解説してきましたが、これらを重ねて使うことで、『混乱によって相手のわざの期待値が半分になり、回復による受けがしやすくなる』『回復に手番を消費し攻撃がおろそかになる分を、混乱自傷や相手の逃げるチャレンジによるエネトラッシュで多少補える』というシナジーが形成できます。
また先述の混乱後に迫られる①~④の択はいずれもLOと相性がよく、そこに全体回復を挟むことでボードアドバンテージの格差を広げ、相手にナツモルを処理するための対応を迫れるようになります。
これらの特徴と、1進化・エネ1枚でわざ使用可能・逃げ0という軽いステータス、自身の攻撃性能はほぼないといった点を踏まえると、ナツモルの個性が最も活かされる試合の流れは
『少ない消費で効率よく盤面を作り、混乱(=相手のリソース破壊)と全体回復(=自軍のリソース保護)の相乗効果で攻撃を受け流しつつ盤面のコントロールを行い、リソース差の優位を維持した状態で自軍アタッカーに勝ちきってもらうか、そのままLOを目指す』
という形になるはずで、これがそのままデッキ作成にあたってのコンセプトということになります。
個性を最大限に発揮し、他のアーキタイプとの差別化を図るためにも極力両方のわざを使う前提で運用していきたいところです。
7. ナツモルの欠点
全体回復という点では先述のとおり強力なわざを持っていますが、自分自身の回復のみに焦点を当てた場合、あくまで期待値はダメカン1.5個ときずぐすりやきのみの水準を下回っており、混乱で相手の期待値を下げられるとは言えバトル場に居座り続けるには若干の不安があります。
また混乱の仕様上、逃げ0の相手には負荷をかけられず、コンセプトが遂行できないという弱点もあります(先述の①~④の択のうち、②がノーリスクになってしまう)。環境にはわるクロ・わるオニ・ニューラ等逃げ0主体のデッキが一定数おり、ここに役割を持てないというのは大きなマイナスポイントです。あと油断しがちですがナツモル自身も逃げ0なので、ミラーマッチした場合は超不毛戦になります。
加えてどちらのわざも突き詰めていくと『性能の割に分のいい確率ゲーを仕掛ける』効果なため、究極に下振れてしまった場合、なにひとつ仕事をできないままあっけなくきぜつしてしまう可能性があるのも不安要素です。原作ゲームでいうと『いばみが』や『ムラっけ戦術』がイメージとしては近いでしょうか。その辺のポケモンを使うのに抵抗がある方にはおすすめできません。
わざの話ばかりしてしまいましたが、ステータス面でもいくつか不足があり、まず1エネとはいえわざが2色要求なのは現代旧裏において重く、このカードのためだけにデッキへ草超をタッチしても使いたいわざの方が都合よく手札に来なければ使えず、かといって要るのはそれぞれ1枚だけなのであまりたくさん入れても無駄になってしまいます。
そして何より、受けを前提にしたカードデザインにも関わらず、【肝心のHPが相手の安定打点を確2以上にできる70に達していない=単独ではコンセプト通りの動きが安定しない】という最大の欠点を抱えています※。
※旧裏では60ダメージが安定打点の最大値としてデザインされており、70ダメージ以上を無理なく安定して出せるのは2進化の割にHPが低くわざも4エネ要求のわるいカメックスのみ、それ以外は多色要求・エネトラッシュ・自傷・特殊能力による制限・コイン判定など何かしらの負担を抱えて使うことになるため、受けて相手を動かすタイプのポケモンにとって『安定打点最大の60ダメージで確1をとられない=確1をとるために相手のリソース消費を促せる』HP70以上かどうかは非常に重要
以上のような欠点を踏まえると、(確率ゲーについては逃げられない宿命なので日頃の善行でカバーするとして)ナツモルが自身のコンセプトを達成し、環境で戦っていくためには他のカードによるサポートが必須になるということが分かるかと思います。ここをいかにスマートにこなせるかがデッキ作成上の課題となります。
第2回に続きます。
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