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つまらないと言う感想が一番恐い

 TRPGのゲームマスター(キーパーとも言う)をやることが多くなってきた。
 TRPGとはテーブルロールプレイングゲームのことで本とサイコロを使ってロールプレイゲームをすることで。ゲームマスターはシーンの描写、情報の提示、ゲーム内の行動処理など電子ゲームの方のRPGのコンピュータが処理をしている大部分を行う。今回はアナログをTRPG、電子ゲームの方をRPGと呼ばせてもらう。

 RPGと何が違うのか?という問いをよく貰う。もちろんアナログか電子かで違いはあるのだがそれだけではもちろんない。
 アナログでプレイする以上は当然人と人とで行うため融通が利きやすい。
 例えば、の話をする前にTRPGのルールというか、システムを軽く説明をしよう。今回は知名度の高い『クトゥルフ神話』と呼ばれるジャンルを例に出して話しをさせてもらう。
 TRPGはまず自分でキャラクターを作らなければならない。

 キャラクターシートと言うものに、名前や年齢等と言った情報を書き込み、ステータスを割り振る。
 作り方は人それぞれで、既存のゲームやアニメのキャラクターを持ってきたり。過去から現在までの設定や裏設定など事細かく作ったオリジナルのキャラクター、逆に概要だけフワッと決めておいて後はこれから行うシナリオによって変わっていくキャラクター等々。
 そしてキャラクターに『技能値』と呼ばれる一種のステータスの様な数値を決められた数割り振る。この割り振った数値以下の数の出目がダイスから出れば成功となり数値以上の数が出れば失敗となる。
 細かい話しは抜きにすると大体こんな感じだ。
 それで最初の例えに戻ると、本来ならばこの技能で成功すればいいですよ、と言うところを代わりにこの技能で振ってもいいですか?という提案をゲームマスターが受け、納得できる提案であれば、それを受け入れ代わりに振ることができる。
 と、言った具合に融通が利きやすい。あとシナリオとプレイヤーの設定が噛み合っていると判定無しで成功扱いにできたり、判定の成功率を上げてもらえたりもできる。

 この様に融通が利きやすい、ということはシナリオに振れ幅が出ると言うことでもあり。同じシナリオでもプレイする人、ゲームマスターで話しの細かい部分は大きく変わるため、同じシナリオでも全く同じルートというのはほぼ存在しない。
 唯一無二の自分たちだけの物語が作れる、というのもTRPGの良いところ、醍醐味といってもいいかもしれない。

 しかし、唯一無二であると同時に同じシナリオは二度と遊べない。なぜならシナリオそのものは同じなので基本的な展開は同じになってしまうのだ。例外的に周回できるシナリオも存在するが、それは周回を前提にしていたり周回できる様に作者側が作っているものなので基本的には遊べない。つまり一度遊んでしまうと、展開が全てわかっているためどこでどうすればいいかわかってしまうのだ。
 なので一度のプレイで全てが決まってしまうためゲームマスターは責任重大なのだ。
 ゲームの処理のと言う役割の中にはシーンの描写というのも当然入ってくる。
 基本的にはシナリオ本にシーン毎に描写の一例が記載されていることが多く、それをそのまま読めば事足りることが多いのだが、当然キャラクターによっては一例描写では描写し切れなかったり矛盾が生じる。

 ではそういう場合どうするのか?ゲームマスターがアドリブで頑張るのだ。
 無茶振りだかそれしかない。ゲーム処理はルールブック(TRPGの分厚い公式説明書)やシナリオ本に記載されていることをなぞれば良いが、シーンの描写ばっかりはそれができない。
 キャラクターの動きはプレイヤーに委ねられ、その動きに対して早めに対応してしまい描写を返す。物語を作るとかアドリブ力とはまた少し違った対応力となるので少なくとも私はまだできない。
 しかしキャラクターたちが動き、それに対してまた世界が動くのもRPGではできないことだ。
 キャラクターやプレイヤーの数だけ物語が存在する。それがTRPG最大の魅力だと思っている。

 だからこそ、私がゲームマスターをしてシナリオを最後まで走り切った末に出てくる感想が『つまらなかった』となるのが一番怖い。
 当たり前のことでは?と思うだろう。でもゲームがつまらなかった原因は全て私の実力不足に起因し、しかもそのシナリオは二度とメンバーではできない。
 私はシナリオを知って、面白かったから他の人にもシナリオを知ってほしい、プレイしてほしいという思いのもとTRPGのゲームマスターをしていることが多い。
 シナリオを知った理由は大体がニコニコ動画やYouTubeで動画投稿されているプレイ動画を観て面白かったものを購入、ダウンロードしている。
 そこにきてつまらないという感想は、ゲームマスターである私のキーパリング不足が原因だし、こんな面白いシナリオなのにつまらない、という感想にさせてしまうことがシナリオにも作者にも申し訳なくなってしまう。
 もちろんそうさせないために可能な限りの準備はするが、正直いくら準備してもまだ足りないんじゃないかと思ってしまい永久に準備が終わらない。
 でもそこで恐れてゲームマスターをずっとしないでいると、仲間内で私しか知らないシナリオは永遠にその仲間内では日の目を出ることはない。表に出せないくらいなら、少しでも私は準備をして、面白い、楽しかったと言ってもらえる様に今日も私はゲームマスターを頑張る。

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