死にたい僕は生きたがり
夢も家族も友人も失った。
もう、いっそのこと死んでしまいたい…。
残った物といえば、もう要らない僕の残りの人生だけだ。
事の発端は些細な事だった。
僕の友達がクラスのいじめグループに目を付けられた。
気の弱い奴だった。
それを、いじめグループは気に入らなかったのだろう。
すぐにクラス全体でいじめが始まった。
僕はただあいつを助けたくて、いじめを止めてくれ無いか、いじめグループのリーダーに頼んだ。
そしたらそいつはこう言った。
「なにコイツ?まじウケるんだけどw 別に止めてあげてもいいけどさぁー。お前が勿論変わってくれるんだよなぁ?」
そして、次の日から、僕がいじめのターゲットとなった。
悪口を言われた
暴力を奮われた
靴を隠された
教材に落書きをされた
恥ずかしい写真も撮られた
それでも僕は毎日耐えて、耐えて、耐えた。
友達を守りたい一心でただ耐え続けた。
それなのに、僕はたった一人の親友だと思ってた、その友達に裏切っられた。
僕の事をいじめてる奴と一緒になって僕をいじめて、ごみでも見るかの様な目で笑っていた。
なんでこんな奴を僕が身代わりになってまで助けてしまったのだろうかと後悔と共に、抑えられないほどのとてつもない怒りが込み上げてきた。
心の中で何かがプツンという音と共に千切れた。
その後の事は良く思い出せない。
ただ、その日から僕は不登校になった。
始めは僕の事を心配し、励ましてくれた親も、途中から僕に構っていても生産性が無いことを悟ったのか、僕を空気の様に扱い、弟の方に期待をする様になった。
弟に対する家での口癖は決まって、
「お兄ちゃんの様になってはだめよ。貴方はお兄ちゃんと違って出来る子なんだから。」
弟とは元から仲が良いとは言えなかったが、僕が不登校になってからは完全に僕をごみ扱いしてくるようになった。
…昔から医者になりたいという夢があって、それなりに勉強も頑張ってきた。
でも不登校になった今、医者になりたいという夢もきっと叶うはずも無いだろう。
こうして僕は夢を無くし、家族に見放され、友人に裏切られた。
あぁ、早く死んでしまいたい…。
もしもこの世に、自分の余命と引き換えに何か願いを叶える事が出来るのならば、僕は喜んで残りの余命を引き換えにしただろう。
死にたいと思うのに、痛い死に方、苦しい死に方は嫌だと思ってしまう。
もしかしたらこの先まだ生きていたら、良い事があるかもしれない。
僕が死んだら悲しむ人がいるかもしれない。
…きっと良いことも悲しむ人もいるわけないのに、そんな事を理由にして、この無駄な命をダラダラと延長し続けている。
僕は死にたい。
でも僕には死ぬ勇気が無い。
だからといって生きる気力も無い。
あれからテレビを付けてみた。
くだらない番組が流れていたが、途中でCMが流れた。
ドナー登録についてのCMだった。
僕は死にたいと思いながらも、痛いのが嫌だとか、苦しいのが嫌だとかで結局“死”から逃げていたい。
多分、きっと誰かに止められたかったのだ。
「貴方はまだ死んではいけない。」
って、
「貴方は死んでもいい人なんかじゃない」
って。
ただそう言って貰って、自分がまだ生きていても良い理由を作ろうとしていた。
でも僕はもう辞める。
こんなゴミ屑みたいなちっぽけな僕の命でも、僕が居なくなることで助かる人が居るんだと思ったら、やっと死ぬ決心がついた。
僕は高校に入る時にはドナー登録をしたから、僕が死んだ後の僕の臓器なんかはきっと誰かに貰われて、誰かの中で行き続けるのだろう。
…ほんとは…本当は死にたくなんて無かった…。
矛盾しているのは分かる。
でも僕は…。
この世界で一番の死にたがりで生きたがりだった。
僕は自分の携帯で救急車を呼んだ後、自分の部屋の天井からぶら下がっているロープに手を掛けて
そのまま……