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だるまさんがころんボ! 12

FILE.12 アリバイのダイヤル

 大企業ワーグナー社の乗っ取りを企むゼネラル・マネージャーのハンロンは、氷を使って二代目社長のエリックを撲殺する。一方、ハンロンの野望に気づいたワーグナー家の弁護士キャネルは、ワーグナー家とハンロンのオフィスの電話を盗聴。その録音テープを皆の前で披露するが……。

 エリックの声が再生される。
『それがさ、ゆうべなんだが、あの、あんたが回してくれた子、あれに妹がいてさ』
 キャネルは神妙な面持ちで、エリックの妻シャーリーを見やる。
「やはり私が疑っていたとおりだった。ハンロンって男はエリックを堕落させ、夫婦仲を裂こうとしていんだ」
 しかし、シャーリーは釈然としない表情を浮かべるだけだ。
「もうこれで三時間近くテープを聞いたけど、少しでもそれらしいことが出てきたのは、これが初めてよ」
「しかし、エリックは『あんたが回してくれた子』といってる。あんたも聞いたろう? 私はこれを心配してたんだ。ハンロンが、いかにあんたがた二人を利用しているか、その証拠がほしかったんだ」
「待ってくれ。今のその話だが……どうやらわかったよ。エリックが、誰を『あの子』などといったかね」
 ハンロンは弁明を始める。
「エリックから新しいメイドを頼まれて、君が帰るまでにぜひ探しておきたいと──」
「あら? おかしいわね。あたしはメイドなんていらないと、あの人に伝えたばかりだったんだけど」
「え……あ、そ、そうだったか」
 うろたえるハンロン。
「さあ、どういうことか説明してもらおうか?」
 禿頭を撫でながら、真っ赤な顔で詰め寄るキャネル。その姿は、まるでゆでダコのようだ。
「そ、そうだ。思い出した。もう一度テープをよく聞いてみてくれ。エリックは『あんたが回してくれた子』といったんじゃない。『あんたがマワシを締めてくれたタコ』といったんだ」
「マワシを締めてくれたタコ?」
「いや、その……フットボールやホッケーなんてもう古い。これから人気の出るスポーツは、タコ同士が力士となって闘う相撲だと思ってさ」
「なんだ、そりゃ? 苦しまぎれの言い訳はやめろ」
「いや、ホントなんだ。日本ではタコ相撲が盛んなんだよ。絶対、アメリカでもウケると思う。だけど、タコは足が八本もあるから、マワシをつけさせるのが難しくってさ。だから先週、そのやり方をエリックに教えてやったんだ」
「百歩譲って、それが真実だったとしよう。では、『あれに妹がいてさ』という台詞はなんだったんだ?」
「実はエリックは、タコの妹に恋をしちまったんだ。そうか、わかったぞ。エリックを殺したのは、タコ子ちゃんだ! きっとまだプールの中に隠れているに違いない 刑事さん、すぐに逮捕してくれ!」
「いや、でもね、ハンロンさん。果たして、タコに殺人罪が適用されるかどうか。タコ子さんをブタ箱にぶち込むことは、難しいと思いますよ」
 それまで黙っていたコロンボが口を開く。
「だったら、どこかに押し込んで、強制労働でもさせておけ!」
 ハンロンの言葉に、にっこりと微笑むコロンボ。
「なるほど。ものがタコだけに、ブタ箱ではなくタコ部屋へぶちこむわけですな

▼台詞による説明ナシに、視聴者へ真相を提示するその手法は見事。「インパクトのある幕切れ部門」の最優秀作品候補に挙げてもよいくらい。
▼アイスクリームを買い損ねた子供が、気の毒で仕方がありません。あのアイスクリーム販売車は、スタジアムに停めてあったものを勝手に拝借した、という解釈で合ってるんでしょうか? それとも、自分で手配したの?

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