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MAD LIFE 360

24.それぞれの行動(11)

5(承前)

 おしまいだ。
 男に見つかるのは時間の問題だろう。
 絶望感で目の前が真っ暗になる。
 ……ところが。
「うわあっ!」
 頭上から男の情けない悲鳴が聞こえてきた。
「そ、そ、そこに誰かいるのか?」
 その声はひどく震えている。
 もしかして、こいつ……とんでもない臆病者なんじゃないか?
 俊はにやりと笑った。
 だとしたら、形勢は逆転する。
 覚悟を決め、思いきり段ボール箱を蹴り上げた。
「ひゃあっ!」
 間抜けな叫び声と共に、慌てて逃げていく足音が耳に届く。
 チャンスは今しかない。
 俊は段ボール箱を押しのけて立ち上がると、柱に縛りつけられている女のそばへと駆け寄った。
 月明かりはあるものの、あたりは暗く、かなり近づかないと顔もよくわからない。
「君……誰?」
 女が口を開く。
「自己紹介は後回し。一刻も早く、ここから逃げなくっちゃ」
「……ええ」
 女は突然の展開に戸惑っているようだった。
 懸命に心を落ち着かせながら、彼女の腕に巻かれたロープをはずしにかかる。
 早くしないとあいつらが戻ってきてしまう。
 ロープはなかなかほどくことができなかった。
 汗で手がすべる。
 焦れば焦るほどうまくいかない。
「チクショー!」
 俊は力づくでロープを引っ張った。
「痛いっ!」
 女が悲鳴をあげる。
「あ……ごめん」
 反射的に謝った――そのときだ。

 (1986年8月7日執筆)

つづく

1行日記
背100もようやく10秒の壁を破りました! 1分9秒82! 万歳!

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