MAD LIFE 049
4.殺しのリズムに合わせて(4)
2(承前)
晃にはなんの罪もない。
晃は私のことを助けてくれた。
晃は仲の良いクラスメイトだ。
でも……。
瞳の心は重くなる。
でも、晃は長崎の息子。
私たちを苦しめる悪魔の息子なのだ。
『実は俺、家出したんだ』
晃の嬉しそうな声が聞こえてくる。
「家出? どうして?」
そう口にしたものの、もちろん見当はついていた。
『あの夜、親父と大喧嘩をしちまってさ』
あの日の出来事を思い返す。
「おまえ、男を狂わせる顔をしているな」
長崎は瞳のあごを持ち上げ、強引に唇を重ね合わせようとした。
「やめろ!」
洋樹――おじさんが叫ぶ。
私だってイヤだ。
キスをされるくらいなら下を噛んで死んでやろうとも思った。
そのときに響いた銃声。
右肩を撃たれた小池がその場に倒れる。
「誰だ?」
長崎がどすのきいた声を出した。
みんなの視線が一点に集中する。
そこには銃をかまえた晃の姿があった。
「……どうして、銃なんて持っていたの?」
瞳はきいた。
『親父のだよ。家にいくつも置いてあるんだ』
「それって犯罪なんじゃないの?」
声が震えている。
『ああ、そうだ。だけど、俺の口出しできることじゃないから』
そんなふうに平然と語る晃に腹が立った。
どす黒いものが心に沈殿していく。
「ごめんなさい。あなたにはなんの罪もないけれど……」
瞳は溜まっていたものを吐き出さずにはいられなかった。
「私、以前のようにはあなたとつき合えないと思う」
それだけ告げて受話器を置く。
晃の声が聞こえたような気がしたが無視した。
呼吸がひどく乱れている。
私……。
胸が痛い。
私……晃君を傷つけてしまった……。
瞳はその場に泣き崩れた。
(1985年9月30日執筆)
つづく
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