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KUROKEN's Short Story 14

国語の教科書に載っていた星新一の「おーい でてこーい」にいたく感動した中学生のころ。ちょうど〈ショートショートランド〉という雑誌が発刊されたことも重なって、当時の僕はショートショートばかり読みあさっていました。ついには自分でも書きたくなり、高校時代から大学時代にかけて、ノートに書き殴った物語は100編以上。しょせん子供の落書きなので、とても人様に見せられるようなシロモノではないのですが、このまま埋もれさせるのももったいなく思い、なんとかギリギリ小説として成り立っている作品を不定期で(毎日読むのはさすがにつらいと思うので)ご紹介させていただきます。

面接

「はい、次のかた」
「…………」
「君、名前は?」
「19歳」
「いや、年齢ではなく、名前は?」
「19歳」
「19歳という名前なのかい?」
「修一」
「……? 修一なんだね?」
「19歳」
「19歳は君の年齢だろう!」
「四人家族」
「誰も家族のことなんか訊いていない! いいか? もう一度訊くぞ。君の名前は?」
「おじいちゃん」
「……は?」
「おじいちゃんは71歳」
「君の祖父の話などどうでもいい」
「お父さんは42歳。仕事してるよ」
「君は私をからかっているのか? 不合格にするぞ。それでもいいのか?」
「…………」
「いやなんだろう? だったら、真面目に――」
「……忘れた」
「忘れた? なにを忘れたんだ?」
「お母さんの年齢」
「いい加減にしろ!」
「あ、40歳だった。ははははは」
「おい、しっかりしてくれ。君はどこかおかしいんじゃないのか?」
「19歳」
「…………」
「19歳」
「…………」
「19歳」
「ありがとう。面接は終わりだ。もう君は退出していい」
「19歳」
「早く出ていけ!」
「19歳」
「お願いだ……」
「19歳」
「……すみません。私にはやはり無理です」
「では次のかた」
「はい、失礼します」
「ではこれより、面接官になるための試験を行います。最近はひねくれた学生が多いですからね。私が学生役になって反抗的な態度をとります。あなたはどこまで落ち着いて面接を進められるか……ではどうぞ」

(1984年6月執筆)


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