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MAD LIFE 230

16.姉弟と兄妹(3)

2(承前)

「……ごめんなさい」
 晃に頭を下げる。
「いや、瞳が謝ることじゃない。昔から親父のことは大嫌いだったんだから」
 晃はそういうと、空になったティーカップにもう一度口をつけた。
「正直にいうとさ――」
 視線を窓の外に移し、ひとりごとでも呟くようにしゃべり始める。
「瞳があのとき、電話で告げた言葉……ショックだったよ」
 瞳には返す言葉がなかった。
 沈黙が続く。
「俺の親父……今もまだ恐喝をしているのか?」
 沈黙を破り、晃が尋ねた。
「…………」
 瞳は返答に戸惑う。
「う、ううん」
 動揺を隠して首を横に振った。
「私、なにもかも警察に話したの。兄が人を殺したこと……あなたのお父さんに脅されていたこと……」
「じゃあ、君の兄さんも俺の親父も今は檻の中か」
「ううん。お兄さんは立澤組と一緒に逃げちゃった」
「逃げたって……おまえ、兄さんに会ったのか?」
「うん。あなたが家出をした翌日にね。……あれからいろんなことがあった
んだ」
 瞳は丁寧に説明を始めた。
 長崎が瞳と洋樹の妻、由利子を誘拐したこと。
 彼女たちを救出するために長崎のアジトへ向かった洋樹と中西はあっけなく捕まってしまい、瞳と由利子の命と引き換えに西龍組の末木力を殺せと命じられたこと。
 瞳たちは自力で長崎のアジトから逃げ出し、警察にすべてを打ち明けた。
 警察はただちに長崎の逮捕に向かったが、しかしすでにアジトはもぬけの空。
 長崎は行方をくらましてしまった。

 (1986年3月30日執筆)

つづく

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