KUROKEN's Short Story 29
国語の教科書に載っていた星新一の「おーい でてこーい」にいたく感動した中学生のころ。ちょうど〈ショートショートランド〉という雑誌が発刊されたことも重なって、当時の僕はショートショートばかり読みあさっていました。ついには自分でも書きたくなり、高校時代から大学時代にかけて、ノートに書き殴った物語は100編以上。しょせん子供の落書きなので、とても人様に見せられるようなシロモノではないのですが、このまま埋もれさせるのももったいなく思い、なんとかギリギリ小説として成り立っている作品を不定期で(毎日読むのはさすがにつらいと思うので)ご紹介させていただきます。
※中学生のときに書いた作品をいくつか発見しましたので、本日はそちらをご紹介。そのままではまともに読めないシロモノなので、文章にちょっとだけ手を加えております。
約束の手紙
パパへ
ぼく、字がたくさんかけるようになったよ。
かん字もすこしならかけるよ。
パパとママのおかげだよ。ありがとう。
あのね、パパ。
きのうね、ぼく、アキちゃんといっしょにどうぶつえんへ行ったんだ。
はじめてキリンさんを見たよ。
こんど、パパもいっしょに行こうね。
ね、パパ。
やくそくだよ。
はやしだこういち
お父さんへ
お父さん、ぼくからお父さんへお願いがあります。
あまりタバコをすわないでほしいです。
タバコは体にわるいって、学校の先生もいってたよ。
お父さん、一日にニ十本も三十本もすってるでしょ。
やめてほしいな。
以上、ぼくからのお願いでした。
約束してほしいな、お父さん。
林田孝一
父さんへ
ごめん。
隠れて煙草なんか吸っちゃって。
ひさしぶりに父さんにどなられて、目が覚めたよ。
本当に悪かったと思ってる。
友達もやってるから、ついいっしょになてカッコつけちゃったんだ。
もうこれからは吸いません。
約束するよ、父さん。
孝一
親父へ
もう俺のことは放っといてくれ。
煙草を吸って、肺ガンになるのは俺だ。
シンナー吸って、バカになるのは俺だ。
親父にはなんの迷惑もかけないよ。
だから、俺に関わるな。
お願いだ。
約束してくれ、親父。
孝一
金、なくなった。
早くよこせ。
ないとはいわせねえからな。
今日中に渡せ。
俺のいうことはなんでもきくって約束しただろ?
俺との約束を破ったらタダじゃおかねえぞ。
孝一
孝一君へ
すみません。今、本当にお金がないんです。
いえ、お金を渡さないとはいっていません。
必ず近いうちにお渡しします。
だからお願いです。
暴力だけはやめてください。
約束してください。
お願いします。
お願いします。
林田芳夫
(1984年7月執筆)
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