MAD LIFE 208
14.コインロッカーのひと騒動(12)
4(承前)
「フェザータッチオペレーション!?」
真知が大声をあげた。
「どういうこと? 〈フェザータッチオベレーニョン〉っていうのはパパが私を見張るように依頼した探偵かなにかなんでしょ?」
真知の父は政略結婚を嫌がる娘を〈フェザータッチオペレーション〉に監視させていた――真知は中西にそう話してくれたが、実際は少々違っていたたらしい。
「それは君の勝手な推測だろう?」
男は銃口をふたりに向けたまま笑った。
「〈フェザータッチオペレーション〉は君の属している組織を潰すために結成されたものだ」
「私の属している組織?」
真知がきょとんとした表情を見せる。
「どういうこと?」
「君は本当になにも知らないのか?」
「ええ」
「スポーツバッグの中身のことも?」
「それは知っているわ。須藤さんが教えてくれたもの。重要な研究資料なんでしょ?」
真知の返答を聞くと、男は大声で笑いだした。
「なにがおかしいの?」
真知が口をとがらせる。
銃口を向けられているのにたいした心臓だ、と中西は感心した。
「君はバッグの中身を見たのかい?」
男が冷ややかな口調で尋ねる。
「ううん。だって、鍵がかかっているんだもの」
真知のいうとおり、スポーツバッグのファスナー部分には頑丈そうな南京錠が取りつけてある。
「そのバッグの中身を教えてやろうか?」
そういって、男はふたりに近づいてきた。
「さあ、そのバッグをこちらに渡すんだ。君はどうやら、須藤仁にまんまと利用されていたみたいだな」
男はゆっくりと真知の足元に置かれたスポーツバッグに手を伸ばした。
(1986年3月8日執筆)
つづく
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