見出し画像

だるまさんがころんボ! 37

FILE.37 さらば提督

 造船会社の社長で「提督」と呼ばれているオーティス・スワンソンが遺体で発見される。彼は、文字の形に切り抜かれた型紙を残していた。コロンボは部下二人と共に、六枚の型紙を睨みつけ……。

「こいつが型紙ねえ」
 A、I、L、S、Sの形に切り抜かれた型紙を足もとに並べ、首をひねるコロンボ。
「これ、字を描くときに使うんだろう?」
「ええ」
「なんて言葉になる?」
「セイルスじゃないですか?」
 S、A、I、L、Sの順番に文字を並べる部下。丸い穴の開いた型紙が手もとに残る。
「こいつはただの白紙ですね」
「SAILSに白紙か。……これ、どこに描こうとしてたのかな?」
「セイルロッカーなんかに、みんなよく描くそうですよ」
「ロッカーねえ」
 コロンボはしかめっ面を浮かべ、型紙を見つめる。
「これ、ほかの組み合わせは考えられないか?」
「SAILS……SLIAS……」
「LASSIEは?」
「Eがなくっちゃダメだ」
 型紙を動かし、あれこれ意見を述べ合う二人の部下。
「警部。やっぱりSAILSか一番ぴったりきますね。これしかありませんよ」
「この穴がなあ」
 白紙に開いた穴を覗き込み、しばし考え込むコロンボ。
「あ、わかった!」
 突然、膝を叩く。
「ひらめいたぞ。三日前にこの界隈で殺人事件があっただろう?」
「……ありましたっけ?」
「あったんだよ! その現場を目撃した提督は、犯人を告発しようと考えて、この型紙を作ったんだ。セイルロッカーに描けば、みんなの注目を浴びるだろうからな。しかし、もたもたしているうちに、犯人に殺されちまったというわけだ」
「では、ここには犯人の名前が記されているんですか?」
「そういうことだ」
「でも、型紙を使って犯人を告発するなんて、ちょっと無理がありませんか? わざわざそんなことをしなくたって、口でみんなに伝えればよかったじゃないですか」
「提督は犯人の名前を知らなかった。だから、絵に描くしかなかったんだよ」
「……絵?」
「そう、これは文字じゃない。提督はこの型紙を使って、犯人の似顔絵を描いたんだ」
 そう口にしながら、型紙を並べ替えるコロンボ。

 ・ L
  I
S ∀ S

「すぐに、巻き髪で片目のつぶれた人物を捜し出せ!」

▼シリーズ随一の異色作。初めてこの作品を観たときは、「え? え? どーゆーこと?」とテレビの前で唖然としちゃいました。よくぞここまで上手に騙してくれたという感じ。犯人との対決シーンも斬新で、だからこそなおさら、もうちょっと説得力のある手がかりにはできなかったものかと悔やまれます。

画像1

《COLUMBO! COLUMBO!》ネット販売サイト

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?