MAD LIFE 168
12.危険な侵入(1)
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「フェザータッチオペレーション? そういえば、あの娘がそんなことをいっていたなあ」
満員電車の中、中西は洋樹の質問に首をかしげながら答えた。
「知っているのか? フェザータッチオペレーションを」
洋樹が中西の肩をつかむ。
「真知のいうことだから、あまり信用はできませんけど」
「真知?」
「あ」
自分の失言に気がついた中西は慌てて口を押さえたが、もはやあとの祭りだ。
「誰だ? 真知っていうのは」
洋樹は冷たい視線を中西に向けた。
「まずったなあ……仕方ありません。全部、話しますよ。実は――」
中西は昨夜の出来事を洋樹に語った。
「つくづく暴力団に縁のある男だな、おまえは」
洋樹が笑う。
「笑いごとじゃありませんって」
「もしかしたら、長崎の一件と関わっていたりするのかな?」
「長崎の一件?」
「今朝のニュースを見てないのか?」
「なんのことです?」
「長崎が殺された」
「え?」
中西は車内の乗客全員に聞こえるような大声をあげた。
「あの長崎が……ですか?」
中西のその言葉と同時に、電車は目的地に到着した。
(1986年1月27日執筆)
つづく
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