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MAD LIFE 371

25.最後の嵐(6)

2(承前)

 かつての部下の残虐極まる行動が、浩次には我慢できなかったらしい。
「きさまぁっ!」
 浩次が郷田に向かって突進する。
「やめろ、間瀬!」
 中部はそう叫んだが、彼は聞く耳をまるで持っていなかった。
「きさまのような奴は俺がぶっ殺してやる!」
「黙れ!」
 郷田の手にした拳銃の先が浩次に向けられる。
 やむを得ない。
 中部は腰の拳銃に手を回した。
 銃声が鳴り響く。

 俊は背中の後ろで縛られた両手を懸命に動かした。
 あと少し……あと少しだ。
 右手に隠し持ったナイフで、手首に巻きついたロープを切っていく。
 両手を縛られているため、額から流れ落ちる汗さえ拭うことができなかった。
 作業を続けながら、さりげなく八神の顔を見る。
 大丈夫。
 こいつはまだ俺の行動に気づいていない。
 俊がこのナイフを手に入れたことは幸運以外のなにものでもなかった。
 今からニ十分ほど前のことだ。
 ――きさまら、騒ぐな!
 あのとき、八神は俊の前でナイフをちらつかせた。
 ――それ以上騒いだら、ふたりともあの世行きだ。
 ――やめておけ、八神。
 郷田は八神からナイフを取り上げると、それを倉庫の隅へと放り投げた。

(1986年8月18日執筆)

つづく

1行日記
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