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だるまさんがころんボ! 18

FILE.18 毒のある花

 ビューティーマーク化粧品の社長ヴィヴェカは、開発中の新製品を横流ししようと企んでいたかつての恋人を衝動的に殺してしまう。黒のアイブロウペンシルで記されたメモが現場に残っていたことから、コロンボは犯人が女性であることを指摘。しかしヴィヴェカは「あたしは赤毛だから、黒のペンシルなど使わない」と答える……。

「立ち入った質問なんですが」
 壁に貼られたヴィヴェカの写真を見て、口を開くコロンボ。
「なんですの?」
「その……あなたの写真なんですがね、いつもほくろがありますね。だが、今朝はついてないんで」
 小さく笑うヴィヴェカ。
「お酒と同じで、午前中にはやらないというだけのこと」
「いや、お聞きしたかったのはですね、どうやってつけるかなんです。貼りつけるのか、塗るのか、それとも……」
 言葉に詰まるヴィヴェカ。
「お忙しいのにつまらない質問をしました。誰かに訊きますから」
 立ち去ろうとするコロンボを、ヴィヴェカは慌てて呼び止める。
「いえ、コロンボさん。あたしがお答えしますわ」
 振り返るコロンボ。
 黒のアイブロウペンシルで書いているのだが、正直に答えれば、自分の立場がますます危うくなってしまう。そう考えたヴィヴェカは嘘をつくことにする。
「これは……このほくろは……」
「そのほくろは?」
「じ、実は……鼻クソなんです」
「ええええええ? なんですって?」
 頓狂な声をあげるコロンボ。
「シールやペンシルを使ったら、肌が傷んでしまうでしょう? ですから、あたしは自分の鼻クソを丸めてくっつけているんです。自分の身体から出たものですから、肌を傷めることもありませんし」
「本当に鼻クソなんですか? 疑うわけじゃありませんが、ほくろをじっくり見せてもらってもかまいません?」
「いえ、それはちょっと……」
 ためらうヴィヴェカ。
「なぜ? なにかあたしに見せられない理由でもあるんですか?」
「……ほくろが嫌がってるんです」
「だって、それ鼻クソなんでしょう?」
「実は、鼻クソという名前のペットなんですよ」
 ヴィヴェカは苦しまぎれに、口からでまかせを吐く。
「日本に生息するまっくろくろすけという生き物です。とっても可愛いので、ペットにしてるんですの。いつも一緒にいたいので、こうやって顔にくっつけて歩いてるんですけど……。うーん、可愛いわねえ、鼻クソちゃん」
 猫撫で声を出し、ほくろを撫でるヴィヴェカ。
「あたしにも撫でさせてもらえませんかね?」
「いいえ、お断りします。鼻クソちゃんが怖がってますから」
「それ、本当に生き物なんですか?」
「疑っておられるの? あなたがほくろだと思っているものの大半は、まっくろくろすけなんですよ。あなたのほくろだって、夜中になると動き出すんですから」
「まさか」
「いえ、本当ですよ。歌にもあるでしょう? ♪ほくろはみんな、生きている~

▼いきなり登場するのは──怪しげな医者(じゃないけど)と、手術台(じゃないけど)に寝かされた美女たち。美女の皮膚を剥ぐ医者。……これはホラー映画? とてもコロンボとは思えないオープニングでした。
▼犯人、先走りすぎ。まずはクリームを使ってしわを落としたおばあちゃんのところへ確認に出かけるべきでしょう。もし化粧品にかぶれる原因があったなら、おばあちゃんの顔は月影先生(by『ガラスの仮面』)状態だったはずだもん。

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