MAD LIFE 198
14.コインロッカーのひと騒動(2)
1(承前)
沈黙の中、腕時計のアラームが午前零時を告げる。
……おじさん、どうなったのかな?
瞳は洋樹のことを考えた。
彼が〈フェザータッチオペレーション〉の怪しい部屋へ侵入したのは午後五時半頃。
あれから六時間以上が経過している。
何事もなかったと思いたいが、不安な心はむくむくと膨れ上がっていく。
別のことを考えて気を紛らわそうとしても、やはりうまくいかない。
ずっと連絡のないことも気になった。
洋樹は瞳の住むアパートまでやってくると、部屋のドアをノックした。
返事はない。
もう寝てしまったのだろうか?
もう一度ドアを叩く。
「どちら様ですか?」
澄んだ声が洋樹の耳に届いた。
「俺だ」
「おじさん!」
ドアが勢いよく開く。
「今までなにしてたの?」
瞳はいきなり洋樹にしがみついてきた。
「ずっと〈フェザータッチオペレーション〉にいた」
「連絡くらいしてよね。ものすごく心配したんだから」
語尾は涙声に変わっていた。
「んもう……とっても不安だったんだから」
2
「湯加減はどう?」
真知の声がした。
(1986年2月26日執筆)
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?