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MAD LIFE 359

24.それぞれの行動(10)

5(承前)

「喉が渇いたな」
 背の高い男が腰を伸ばしていう。
「そのへんでビールでも買ってくるか」
「あ、俺も行く」
 もうひとりも立ち上がった。
「馬鹿野郎。おまえはここにいろ。大事な人質が逃げたらどうするつもりだ?」
 背の高い男は隣にいる女性の顔を横目でちらりと見たあと、
「俺がおまえの分も買ってきてやるからさ」
 そういって、俊の目の前から姿を消した。
 敵はひとりだけ。
 そいつがどこかへ消えてくれれば……。
 俊は必死で願った。
 少し力が入りすぎてしまったのかもしれない。
 右手が積み上げられた段ボール箱に当たった。
 段ボール箱が音を立てて崩れ落ちる。
 ヤバいっ!
 縮めた身体の上に、段ボールが落下する。
 あたりには砂煙がもうもうと立ち込めた。
「なんだ!?」
 男の声。
「誰かそこにいるのか?」
 俊は段ボールの下敷きになりながらも気配を消して平静を保ち続けた。
 男の足音が近づいてくる。
 見つかる――!
 俊は目を閉じた。
 いまだかつて経験したことのない恐怖が全身を駆け巡る。
 助けて……誰か……!
 身体が震えたことにより、俊の上に積み重なっていた段ボール箱がさらに崩れた。
 ……しまった!

 (1986年8月6日執筆)

つづく

1行日記
とうとう……とうとうやりました! 背200 2分29秒30! やった! やった! 万歳! 

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