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MAD LIFE 235

16.姉弟と兄妹(8)

4(承前)

 瞳は晃を真正面から見据えた。
「私……あなたのお父さんに頼まれたの。お兄さんに〈フェザータッチオペレーション〉と伝えてくれって。でも、お兄さんの行方はわからないままだし……」
「瞳」
 晃も瞳を見つめ返す。
「どうして俺は東京に戻ってきたんだと思う?」
 瞳はその問いかけに、黙ってかぶりを振った。
「おまえに会うためだよ。どうしても話したいことがあったからさ」
「話したいことって?」
「俺、今朝、偶然出会ったんだよ。バイト先のドーナツ屋で」
「会ったって……誰に?」
「ああ、じれったいなあ」
 晃は身を乗り出し、大声で叫んだ。
「おまえの兄貴さ」
 意外な言葉に息を呑む。
「お兄さんが……大阪に?」
「ああ」
「人違いじゃないの?」
「そんなことは絶対にない。あれはおまえの兄貴だ。声だって同じだったし」
「大阪のどこで会ったの?」
 とめどなく涙がこぼれ落ちる。
 胸が苦しい。
「ねえ、どこで会ったの? 早く教えてよ」
 瞳は晃のシャツをつかみ、彼を急かした。

 (1986年4月4日執筆)

つづく

この日の1行日記はナシ


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