だるまさんがころんボ! 42
FILE.42 美食の報酬
料理評論家ポール・ジェラードは自らの保身のため、イタリア料理店のオーナーであるヴィットリオ・ロッシを毒殺する。完璧と思われた犯行だったが、執拗に捜査を続けるコロンボにすべてを見抜かれてしまい……。
「いつから私に目をつけたんだね?」
取り乱すことなく、静かに尋ねるポール。
「初対面の二分後からですよ」
あっけらかんとした表情で答えるコロンボ。
「そんなことはあり得ない」
「いやいや、あなたご自身ではっきりおっしゃったんですよ。あの最初の晩にね。ヴィットリオが毒で死んだと聞いて、あなたその足で家からまっすぐここへ駆けつけてきたとおっしゃった」
「そうだ。警察から来るように指示されたからね」
「で、あなたはいらした」
「ああ」
「でもね、一緒に食事をした相手が毒殺されたというのに、あなたは医者も呼ばず、警察の指示どおり、ここへ駆けつけられた。病院へも飛んで行かずに。我々に応急手当をしてくれとも頼まなかった」
ポールの表情をうかがいながら、コロンボはさらに言葉を紡ぐ。
「ポールさん。普通なら警察にどういわれようと、まず自分の命を心配するものでしょう?」
苦笑するポール。
「残念ながら、あなたの推理は間違っているよ」
「へ? どういうことです?」
「私はここへ来たらすぐに応急手当をしてもらうつもりだったんだ。しかし、その必要は途中でなくなってしまった。このレストランの前にあなたの車が停まっていたからね」
「……おっしゃる意味がよくわかりませんが」
首をひねるコロンボ。
「あの日、あなたは車内に愛犬を置きっ放しにしたまま、このレストランへやって来ただろう?」
「ええ」
「犬の名前はなんていったっけ?」
「ドッグです」
「そうそう――ドッグだ。たぶん、レストランから美味しそうなにおいが漂ってきたのだろうね。私がこの店に到着したちょうどそのとき、食い意地の張ったドッグは、器用に車のウィンドウを開けて、外へ飛び出してきたんだよ」
「おやまあ。ちっとも気がつきませんでした」
「私が捕まえて、車に戻してやらなければ、たぶん『飯を寄越せ』とうるさく吠え、レストラン内を駆け回っていただろうね」
「それは大変だ。そんなことにならなくて本当によかったです。すべて、あなたのおかげ。どうもありがとうございました」
コロンボは丁寧に頭を下げる。
「いや、礼には及ばないよ。あなたの飼い犬のおかげで、私は毒の心配をしなくてすんだのだからね」
「……どういうことでしょう?」
「あなたの愛犬をつかまえたことで、私の体内の毒はすべて浄化されてしまったんだ」
「……?」
「昔からよくいうだろう? 『ドッグを持って、毒を制す』って」
▼全エピソード中、観ていてもっともお腹が空くお話。コロンボさん、絶対にこの事件で太りましたよね。
▼日本人がどどどぉぉんとたくさん登場。真っ白なゲイシャ・ガールに大笑い。犯人秘書の浴衣姿に大笑い。しかも浴衣に書かれた文字は「松竹梅」(笑)。
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