MAD LIFE 293
20.思いがけない再会(5)
2(承前)
瞳は今も鳴り続けている電話を見つめた。
「あなたは私を待っているの?」
そう呟き、ゆっくりと受話器を手に取る。
「もしもし……間瀬ですけど……」
『瞳!』
けたたましい声が耳に飛び込んでくる。
「……晃君?」
『よかった。まだ家にいたんだな』
その声は震えていた。
泣いているようにも聞こえる。
『お願いだ……どこにもいかないでくれ』
晃のその言葉に、胸が詰まる。
瞳はそれ以上、なにもしゃべることができなくなってしまった。
3
俊は机の上に、色あせた手紙を広げた。
天井裏で見つけた茶封筒には、三枚に渡る手紙と、何枚かの写真が入っていた。
緊張しながら、手紙に目をやる。
左上がりの読みにくい文字だったが、中学生の俊にもなんとか読み解くことができそうだ。
一枚目には詩のようなものが記されていた。
愛しい少女へ
(1986年6月1日執筆)
つづく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?