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MAD LIFE 234

16.姉弟と兄妹(7)

4(承前)

「やっぱり、なにか隠してるんだな?」
 瞳は黙って下を向いた。
「なにをためらってるんだ? ちゃんと話してくれよ」
 晃の手が肩に触れる。
「俺のいない間になにがあった?」
「あのね……」
 瞳は囁くように答えた。
「……死んじゃった」
「え?」
 肩から手が離れる。
「死んだ? 誰が?」
「あなたのお父さん」
 ようやくそのひとことを口にする。
 風鈴を鳴らした風がふたりの間をすり抜けていった。
 わずかな間を置いて、晃が口を開く。
「親父が……死んだ?」
 瞳は無言で頷いた。
「どうして? 事故か?」
「ううん。殺されたの。〈フェザータッチオペレーション〉に」
「フェザータッチオペレーション? 犯人は外国人なのか?」
「違う。そうじゃなくて――」
 瞳は顔を上げ、晃の顔を見た。
 彼の視線は頼りなく宙をさまよっている。
 瞳は事件が起こった夜の出来事を、晃にすべて包み隠さず語った。
 ノックの音。
 ドアを開けると、そこには血まみれになった長崎が立っていた。
 ――おまえの兄さん……浩次……伝えてくれ……フェザータッチオペレーション……。
 そういい残して、彼は息絶えたのだった。

 (1986年4月3日執筆)

つづく

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